eぶらあぼ 2018.9月号
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62ペトル・アルトリヒテル(指揮) 新日本フィルハーモニー交響楽団歴代の巨匠たちから受け継いだチェコ音楽の真髄文:飯尾洋一第594回定期演奏会 ジェイド〈サントリーホール・シリーズ〉9/23(日・祝)14:00 サントリーホール問 新日本フィル・チケットボックス03-5610-3815 http://www.njp.or.jp/ スメタナが祖国チェコの伝説と自然を音に紡いだ連作交響詩「わが祖国」。有名な「モルダウ」をはじめとする6曲からなるこの連作交響詩は、単に土地の風物を巧みに描くだけではなく、民族復興の精神が標題音楽に結晶化しているからこそ、不朽の名作とされるのだろう。この作品は歴代のチェコの名指揮者たちにとっての欠かせないレパートリーとなっている。 この秋、新日本フィルで「わが祖国」を指揮するのは、ペトル・アルトリヒテル。チェコの名指揮者たちの系譜につながるマエストロである。実は2017年にアルトリヒテルは2度にわたって来日して、「わが祖国」を披露している。一度はプラハ交響楽団と、もう一度はチェコ・フィルとの共演だった。当初チェコ・フィルは首席指揮者であったビエロフラーヴェクとの来日が予定されていたが、ビエロフラーヴェクが急逝したため、アルトリヒテルが代役を任されることになった。アルトリヒテルは同年の「プラハの春音楽祭」でもやはりビエロフラーヴェクの代役を務めている。もともと若き日にチェコ・フィルで名匠ヴァーツラフ・ノイマンのアシスタントを務めていたというアルトリヒテルだけに、チェコ音楽の真髄を聴かせる指揮者としてこれほどふさわしい人もいない。 アルトリヒテルが新日本フィルとどんな化学反応を起こすのか。きっと日本のオーケストラにはない土の香りをもたらしてくれるにちがいない。ペトル・アルトリヒテル小山実稚恵の室内楽 ~ブラームス、熱く深い想いをつなげてブラームスの傑作を共感しあえる名手と共に文:笹田和人第1回 ピアノ五重奏 アルティ弦楽四重奏団とともに 9/30(日)14:00第2回 ヴィオラ&ピアノ・デュオⅠ 川本嘉子とともに 12/22(土)14:00第一生命ホール問 トリトンアーツ・チケットデスク03-3532-5702 http://www.triton-arts.net/ 日本を代表するピアニストの小山実稚恵が、第一生命ホールを舞台に新シリーズ「小山実稚恵の室内楽~ブラームス、熱く深い想いをつなげて」をスタートさせる。「最近は“弾く”ことよりも、“感じる”ことに喜びを見出している」と小山。彼女の静かな、しかし熱い気持ちが、客席へと広がってゆく。 「ブラームスは、深くじっくりと構えたやさしさが感じられて、胸に沁みます。聴き終わった後に、静かだけれど熱い感動がいつまでも残って…」。シリーズ開始のきっかけは2年前、アルティ弦楽四重奏団と共演し、ブラームス「ピアノ五重奏曲」ほかを弾いたステージ。「尊敬できる皆さんと、一瞬一瞬を共に感じられるのがうれしい」と言う。 シリーズでは毎回、ブラームスの作品を核に据え、編成や成立経緯などで関連性を有する、他の作曲家の佳品を組み合わせる。初回は、「音楽的にギリギリを攻めつつ、絶妙の均衡を保つ。本当に圧倒的」と小山が評する、アルティ弦楽四重奏団が登場。前半はブラームス「弦楽四重奏曲第3番」を。後半は小山が加わり、シューマン「ピアノ五重奏曲」を披露する。 また、第2回では「霊感に満ちた集中力がすばらしい。共演は20年来の悲願」(小山)という、アルティ弦楽四重奏団のメンバーで世界的ヴィオリスト、川本嘉子とのデュオで「3大B」。ブラームス「ヴィオラ・ソナタ第1番」を軸に、「F.A.E.ソナタ」から「スケルツォ」、バッハ「ヴィオラ・ダ・ガンバ・ソナタ第2番」、ベートーヴェン「チェロ・ソナタ第3番」(いずれもヴィオラ編曲版)を弾く。左より:小山実稚恵 ©Wataru Nishida/川本嘉子/アルティ弦楽四重奏団

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