eぶらあぼ 2018.9月号
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49トン・コープマン・プロジェクト 2018名匠が2つのオーケストラと分け入るバッハ傑作の森文:寺西 肇コープマン&新日本フィルハーモニー交響楽団 9/6(木)19:00コープマン&アムステルダム・バロック管弦楽団&合唱団 9/8(土)17:00すみだトリフォニーホール問 トリフォニーホールチケットセンター03-5608-1212 http://www.triphony.com/ 卓越した指揮者・歴史的鍵盤楽器奏者として、古楽界を牽引してきたオランダの名匠、トン・コープマン。すみだトリフォニーホールで開く「トン・コープマン・プロジェクト 2018」では、手兵アムステルダム・バロック管弦楽団&合唱団との大作「ミサ曲ロ短調」、新日本フィルハーモニー交響楽団を指揮しての管弦楽作品と、大バッハの傑作の森に挑む。 4年前、ライプツィヒ・バッハ音楽祭の閉幕コンサートでの「ミサ曲ロ短調」演奏を前に、次のように語っていたコープマン。「この曲はバッハが遺した数多くの作品の中でも、最高峰に位置づけられます。キャリアの初期から最晩年まで、彼自身の音楽の集大成としただけでなく、古い教会音楽の様式をも集約して抽出し、化学反応を起こした上で、途方もなく、素晴らしい音楽を創り上げたからです」。そして、声楽と管弦楽が絶妙に調和した、名演を聴かせてくれた。今回は、テノールのティルマン・リヒディやバスのクラウス・メルテンスら、この時と同じソリスト陣に加え、気鋭のソプラノ、マルタ・ボスを起用。さらに練り込まれ、円熟度を増した“超演”が期待できる。 また、これに先立ち、新日本フィルを指揮し、管弦楽組曲第3番・第4番とブランデンブルク協奏曲第1番・第3番に対峙。モダン楽器オーケストラとの共演について、「“どう弾くか”を単にレクチャーするのではなく、共に音楽を創るのが私の目的。共に考え、コラボレートするのは楽しく、有意義な体験です」と話していた名匠だけに、新たなバッハ演奏の地平を拓く快演に触れられそう。トン・コープマン ©Foppe Schut高関 健(指揮) 東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団初秋に贈る喜劇オペラの愉悦と快活なるシンフォニー文:柴辻純子第318回定期演奏会9/15(土)14:00 東京オペラシティ コンサートホール問 東京シティ・フィル チケットサービス03-5624-4002 http://www.cityphil.jp/ 東京シティ・フィルは、2015年4月に高関健が第4代常任指揮者に就任以来、近現代作品やオペラを積極的に取り上げている。第318回定期演奏会は、フランスの作曲家ラヴェルが書いた歌劇《スペインの時》を演奏会形式で上演する。 18世紀のスペイン・トレドを舞台にしたおよそ50分ほどの全1幕の作品。登場人物は、真面目な時計屋トルケマダ、その妻で夫の留守中に逢引をしようとするコンセプシオン、愛の歌を披露して浮かれる若い恋人ゴンサルヴェ、コンセプシオンに言い寄る銀行家ドン・イニーゴ・ゴメス、そして騒動に巻き込まれるロバ曳きのラミーロの5人。男たちはコンセプシオンをめぐってあたふた。2人の男は鉢合わせしないようにそれぞれ時計に隠れるが、彼女の目にとまったのは、たまたま居合わせ、時計を黙々と運ぶラミーロ。そこに店主が戻ってきて…。トルケマダに村上公太、コンセプシオンに半田美和子、ゴンサルヴェに樋口達哉、ラミーロに桝貴志、ドン・イニーゴ・ゴメスに北川辰彦と、舞台経験豊富な歌手たちが配役され、最終場では5人がハバネラのリズムにのせて、物語の滑稽さを歌い上げる。ラヴェルのスペインへの憧れをのせた、ユーモア溢れる音楽喜劇だ。 前半は、モーツァルト「交響曲第39番」。オペラ・ブッファを得意としたモーツァルトの交響曲で始まるのも高関のこだわりだろう。若手の楽団員が増え、アンサンブルに磨きがかかってきたシティ・フィル。彼らの溌剌とした演奏が楽しみだ。村上公太半田美和子 ©Akira Muto樋口達哉桝 貴志北川辰彦高関 健 ©StasLevshin

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