eぶらあぼ 2018.9月号
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44大野和士(指揮) 東京都交響楽団フランス音楽の傑作を集めて〜巨匠フルネの追憶文:柴辻純子第862回 定期演奏会 Cシリーズ10/13(土)14:00 東京芸術劇場 コンサートホール問 都響ガイド0570-056-057 http://www.tmso.or.jp/ 東京都交響楽団の第862回定期演奏会は、音楽監督の大野和士が登場して、都響永久名誉指揮者ジャン・フルネ(1913~2008)の没後10年を記念したオール・フランス・プログラムを指揮する。フルネと都響は結び付きが深く、1978年の初登壇から、指揮活動に終止符を打った2005年のラストコンサート(引退演奏会)まで、30年近くにわたって指揮台に立った。ゆったりとした指揮姿で、そのタクトからは、香り高く、高貴な響きをもつ、繊細でニュアンス豊かな音楽が作られ、とりわけフランス音楽で持ち味を発揮した。10月の定期演奏会は、大野の指揮でそのエスプリが受け継がれる。 華やかなオーケストレーションのベルリオーズの序曲「ローマの謝肉祭」に続いて、20世紀のピアノ協奏曲の傑作、ラヴェル「ピアノ協奏曲ト長調」では、多彩な管弦楽と、フランスの若手リーズ・ドゥ・ラ・サールの瑞々しさと冴えた技巧も楽しみだ。 そして、今年没後100年のドビュッシーによる管弦楽のための「映像」より〈イベリア〉は、作曲家の心に浮かぶ異国情緒。スペインの昼・夜・朝の詩情が鮮やかに描かれる。ラヴェルのバレエ音楽「ダフニスとクロエ」第2組曲は、精妙さやリズムの躍動など、ラヴェルの緻密なオーケストレーションが生む洗練された響きに圧倒されるだろう。 さらに、大野の都響音楽監督就任にあたってフルネ夫人から寄贈されたマエストロ愛用の楽譜が、当日ロビーに展示される予定である。こちらも貴重な機会になりそうだ。大野和士 ©Herbie Yamaguchiシルヴァン・カンブルラン(指揮) 読売日本交響楽団熟成のコンビが放つチャイコフスキー傑作選文:江藤光紀第210回 土曜マチネーシリーズ 9/15(土)14:00第210回 日曜マチネーシリーズ 9/16(日)14:00東京芸術劇場 コンサートホール問 読響チケットセンター0570-00-4390 http://yomikyo.or.jp/ 2010年に始まったカンブルランの読響常任指揮者としての仕事も、残すところあと半期。今後も桂冠指揮者として共演は続くとしても、一つの区切りがつく。9月はチャイコフスキー・プロ。カンブルランと読響はこれまでにも均整の取れた作品像を披露しており、協業の精髄が現れる演目だ。 まずはシェイクスピアに基づく幻想序曲「テンペスト」。重苦しい雰囲気が嵐に始まる骨太の物語を予感させ、中間部では夢幻的でメランコリックな世界が現れる。チャイコフスキーの音のドラマを、カンブルランがオペラ仕込みの解析力で描き出してくれるだろう。 続いてチェロと管弦楽が協奏する「ロココ風の主題による変奏曲」。主題はチャイコフスキー自身の純然たる創作で、擬古典的な旋律が優美に歌い出された後、多彩に変奏される。独奏のアンドレイ・イオニーツァは15年チャイコフスキー国際コンクールの覇者で、世界の名門オーケストラとの共演が続いている。「ロココ風」は同コンクールの課題曲だから、まさに名刺代わりの一曲といえよう。カンブルランとは昨年9月にハンブルクでフランス現代曲を演奏しており準備万端だ。 「交響曲第4番」はあらゆるオケがレパートリーとしている名曲だから、名手の揃った読響の魅力が余すところなく味わえよう。運命のファンファーレから強力なブラスセクションが大活躍。第2楽章では木管が精妙なアンサンブルを織り、第3楽章は軽快なピッチカートが祭りのように華やかな行進曲を挟む。フィナーレでカンブルラン&読響がスコアをどう構成し立体化するかというあたりは、とりわけ見どころとなろう。アンドレイ・イオニーツァ ©Peter C. Theisシルヴァン・カンブルラン
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