eぶらあぼ 2018.9月号
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39取材・文:オヤマダアツシ 写真:中村風詩人名手たちに愛されるホールで繰り広げられる華麗なる祝宴 現在は屈指の室内楽ホールとして知られるようになったHakujuホール。2003年10月、渋谷や原宿の街からも近く、目の前には代々木公園の緑が広がるという東京都心の富ヶ谷で産声を上げた。しかも当時はまだ珍しかった300席というサイズの室内楽・リサイタルホールであり、近未来的な雰囲気も漂う個性的な空間でもあったのだ。 18年は開館15年という記念すべきシーズンを迎えているが、このホールで素晴らしい音楽を聴かせてくれた音楽家は多数。その中から選ばれた6名が集い、10月6日に15周年を記念したガラ・コンサートが行われる。 「ここ数年、Hakuju Hallでは年に一度リサイタルを行っており、日本歌曲やプーランクのオペラ《人間の声》などを歌ってきました。300席というのは歌手にとって、ほどよいサイズですので無理なく歌えますし、このホールならどのような曲や楽器でも心地よくお聴きいただけるだろうという安心感もありますね」 こう話すのは、長くイタリアを拠点に活動し、近年は多くの経験から「日本人が歌う美しいベルカント唱法」を提唱しているソプラノの松本美和子。その門下生が集まって発足した「ベルラルモニーア(Bell’Armonia)」のコンサートも14年以降はHakuju Hallで行われているため、松本にとってはホームグラウンドになりつつある。 そして、その松本とは実に30年ぶりの共演となるギタリストの福田進一も、今やこのホールになくてはならない音楽家の一人だ。 「開館して最初の年にリサイタルをさせていただき、3年目からは毎夏に開催する『ギター・フェスタ』を始めていますから、自分の活動には欠かせないホールになっています。ギターにとっては理想的な音響で、小さな音の細かなニュアンスまで客席へしっかり届くので、松本さんも仰っているように無理なく自然な演奏ができるので良いですね。今では『東京国際ギターコンクール』の審査もここで行いますので、世界中のギタリストにとってもメッカになっているほどです」 この2人に加え、ギタリストの荘村清志、メゾソプラノの郡愛子、カウンターテナーの米良美一、そしてホールの人気シリーズとなった『中嶋朋子が誘う 音楽劇紀行』の音楽監督を務める加藤昌則が出演。6人がソロ、デュオ、トリオなど曲によって共演者を替えるという、非常に贅沢な一夜が繰り広げられるという趣向だ。 「コンサートの前半は僕と荘村さんによるソロやデュオなので、まさに『ギター・フェスタ』のダイジェストみたいですし、米良さんには第1回の『ギター・フェスタ』にゲスト出演していただき、武満徹さんの『SONGS』から歌っていただきましたので、久しぶりに共演できるのも楽しみですね。郡愛子さんとは武満さんの追悼コンサートでご一緒していますし、加藤昌則さんには今年の『ギター・フェスタ』で初演する曲を委嘱しています」(福田) 「私も福田さんとは今回、ファリャとグラナドスをご一緒しますけれど、大好きなスペイン語の曲を歌えるのが楽しみ。でもコンサートまで、やっぱりこちらの曲がいいわね、なんていうことになるかもしれませんよ。今年はドビュッシーの没後100年ですから、本当に久しぶりに歌う《放蕩息子》のアリアもプログラムに加えてもらいました」(松本) 「そういえばドビュッシーの、こんな良い歌曲があるのですけれど…」(福田) 「あらこの曲、素敵ね。10月に間に合うかしら」(松本) と、インタビューの場は、当日にサプライズ的な曲があるのかもしれないと期待してしまうような楽しい雰囲気に。荘村が弾くマイヤース「カヴァティーナ」、米良が歌う「ヨイトマケの唄」「もののけ姫」、松本と郡の二重唱によるオッフェンバック「ホフマンの舟歌」など、誰もが知る名曲も加え、ホール全体が華麗な祝宴になることだろう。InformationHakuju Hall 開館15周年記念ガラ・コンサート出演:荘村清志(ギター)、福田進一(ギター)、松本美和子(ソプラノ)、郡愛子(メゾソプラノ)、米良美一(カウンターテナー)、加藤昌則(ピアノ)10/6(土)15:00 Hakuju Hall問 Hakuju Hall チケットセンター03-5478-8700http://www.hakujuhall.jp/

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