eぶらあぼ 2018.9月号
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180CDSACDCDCDディヴィーナ/藤田美奈子テリュール/徳永真一郎戦没学生のメッセージ ~戦争に散った若き音楽学徒たちインテルメッツォ ―ピアノ名曲アルバム―/小林有沙ベッリーニ:おお、私がただ一度でも…/ヘンデル:懐かしい木陰よ、涙の流れるままに/プッチーニ:私が街を歩くと、私の愛しいお父さん/ヴェルディ:慕わしい人の名は、不思議だわ…ああ そは彼の人か…花から花へ/マスカーニ:アヴェ・マリア 他藤田美奈子(ソプラノ)瀧田亮子(ピアノ)R.S.デ・ラ・マーサ:サパテアード、ペテネーラ、ロンデーニャ/E.S.デ・ラ・マーサ:暁の鐘/F.ド・フォッサ:ファンタジー第1番/A.ホセ:ソナタ/R.ディアンス:サウダージ第2番/F.クープラン:神秘的なバリケード/T.ミュライユ:テリュール徳永真一郎(ギター)葛原守:歌曲「犬と雲」「かなしひものよ」/鬼頭恭一:「鎮魂歌」/草川宏:ピアノソナタ第1番/村野弘二:オペラ《白狐》より第二幕〈こるはの独唱〉 他澤和樹(ヴァイオリン) 迫昭嘉 秋場敬浩 小鍛冶邦隆(以上ピアノ) 中田恵子(オルガン) 河村玲於(オーボエ) 永井和子(メゾソプラノ)金持亜実(ソプラノ) 他バルバストル:ロマンス/リスト:ため息、コンソレーション第3番/ドビュッシー:月の光、亜麻色の髪の乙女、喜びの島/ブラームス:ワルツ第15番、間奏曲op.118-2/ショパン:ワルツ第7番、幻想即興曲、前奏曲「雨だれ」、別れの曲小林有沙(ピアノ)アールアンフィニ(ソニー・ミュージックダイレクト/ミューズエンターテインメント)MECO-1048 ¥3000+税マイスター・ミュージックMM-4038 ¥3000+税収録:2017年7月、東京藝術大学奏楽堂(ライヴ)ディスク クラシカDCJA-21039 ¥2500+税オクタヴィア・レコードOVCT-00152 ¥3000+税ミラノやヴェローナで研鑽を積み、在学中に数々のコンクールにて入賞。欧州オペラ・デビューの際には、存在感ある演技力に加えてテクニックと美声を絶賛されたソプラノのデビュー盤。高音に秀で「イタリアの色」とも云うべき爽やかさに溢れる声質を強みに、ベッリーニ《夢遊病の女》の華々しいカヴァレッタやヴェルディ《椿姫》〈花から花へ〉の難しい締めにも果敢に挑む姿勢が見事だ。情熱的なプッチーニやマスカーニ〈アヴェ・マリア〉の熱唱も素敵だが、やはり《リゴレット》〈慕わしい人の名は〉のラストで可憐な歌声がゆっくりと飛翔してゆくさまが圧巻! (東端哲也)ギター音楽愛好家の間では既にその逸材ぶりが轟いている徳永真一郎。福田進一プロデュースによる待望のデビューアルバムが登場。その凝ったプログラミングからしてありきたりなアルバムとは違った気概を感じさせるが、何より演奏が秀逸の極み。1曲目のR.S.デ・ラ・マーサの「サパテアード」での個々の音の粒立ちの見事さと歌い回しの絶妙なセンス、F.ド・フォッサにおける多彩な音色を駆使した弾き分け。淡いペーソスを漂わせたR.ディアンスも勿論素敵だが、アルバムタイトルのミュライユが凄い。ギター1本で演奏されているとは思えぬ複層的な音響世界。これは必聴だ。 (藤原 聡)東京藝大が創立130年記念事業として行った戦没学生の作品の蘇演・初演の記録。収録された4名は1921〜23年の生まれ、終戦直前後に病死・事故死・戦死・自決している。才能は未だ蕾で開花しきっているわけではないが、各人各様の個性がある。ピアニストでもあった葛原守は清々しい抒情を歌い、鬼頭恭一は古典的なセンスをわが物にしている。草川宏は歌曲やソナタで骨太の表現を模索し、村野弘二はフランス近代音楽の影響下で煌びやかな旋律を紡いだ。生きていたら後にどんな音楽を書いただろう。遺族の協力を仰ぎ各所から資料を集め、志半ばで散った学徒の譜を音にした関係者の努力に敬意を表したい。(江藤光紀)「手に取った方にホッとしていただきたい」という想いが込められた本盤には、ロマン派の作曲家を中心に、メロディの美しい、聴き手の心に寄り添うような小品が集められている。“小品”と一口にいっても、歌心に溢れた演奏、色彩に富んだ音色、自然な音楽運びを行う構築性、それらを支える確かな技術がなければその魅力は全く伝わらない。その点、小林はそれらをすべて持ち合わせたピアニストといえる。柔らかさに包まれ、和声と共に次々と表情を変える音色が魅力的で、スランプだった彼女を支えたというブラームスの間奏曲では特に彼女の持ち味が存分に味わえるはずだ。(長井進之介)

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