eぶらあぼ 2018.9月号
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178CDCDCDCDラルゴ~サクソフォンとオルガンによるバロック音楽作品集~/長瀬正典&椎名雄一郎モーツァルト:交響曲第40番、ピアノ協奏曲第18番/沼尻竜典&トウキョウ・ミタカ・フィルR.シュトラウス:「ドン・ファン」「死と変容」他/準・メルクル&トーンキュンストラー管悲愴・月光・熱情~リサイタル・ピース第2集/反田恭平アルビノーニ:協奏曲 ニ短調op.9-2/コレッリ:ソナタ ヘ長調op.5-10/ヘンデル:ラルゴ(オンブラ・マイ・フ)、水上の音楽 第1組曲・第2組曲(長瀬&椎名編)長瀬正典(サクソフォン)椎名雄一郎(オルガン)モーツァルト:交響曲第40番、ピアノ協奏曲第18番沼尻竜典(指揮/ピアノ)トウキョウ・ミタカ・フィルハーモニアR.シュトラウス:交響詩「ドン・ファン」、組曲「町人貴族」、交響詩「死と変容」準・メルクル(指揮)トーンキュンストラー管弦楽団ベートーヴェン:創作主題による32の変奏曲、ピアノ・ソナタ第8番「悲愴」・第14番「月光」・第23番「熱情」反田恭平(ピアノ)コジマ録音ALCD-9189 ¥2800+税収録:2017年7月&2018年3月、三鷹市芸術文化センター(ライヴ)オクタヴィア・レコードOVCL-00670 ¥3000+税エイベックス・クラシックスAVCL-25971 ¥2000+税日本コロムビアCOCQ-85422 ¥3000+税19世紀に生まれたサクソフォンと、数千年に及ぶ長い歴史を持つオルガン。関係性は薄く思える2つの楽器を共に奏すると、これほどの滋味を生むとは! 長瀬正典は東京藝大や静岡大大学院に学び、国際的に活躍するサクソフォニスト。端正なバッハ演奏で注目を浴びるオルガニストの椎名雄一郎とは6年前から共演、バッハのアルバムも発表している。今回は、ヘンデルを中心に、バロックの名曲に対峙。金管の輝かしさと木管の柔らかさを併せ持つソプラノ、まるで人声のように歌うアルトと2種の楽器を持ち替え、普段よりも野心的なストップを選ぶ椎名と共に、新しい響きの世界への扉を開け放ってゆく。(笹田和人)沼尻&トウキョウ・ミタカ・フィルハーモニア(沼尻が1995年に結成したトウキョウ・モーツァルトプレーヤーズから改称)の初のモーツァルト録音。2曲ともノーマルなアプローチによる充実した演奏だ。交響曲第40番は、引き締まった構築で密度の濃い音楽が展開。統一された表現の中で各フレーズがしなやかに息づき、曲の魅力を衒いなく伝えてくれる。表情豊かな木管陣の秀演も光り、クラリネット入りの版の妙味を実感させるに十分。ピアノ協奏曲は、明確かつ深いタッチで丁寧に描かれ、単独演奏の機会が少ない第18番の豊かな内容を再認識させられる。 (柴田克彦)音楽監督・佐渡裕との共演、自主レーベルの設立を通じてトーンキュンストラー管の魅力は日本にもダイレクトに伝わるようになった。最新盤では準・メルクルがお得意のR.シュトラウスを披露。パワフルなオケを切れ味よくドライブしながら、透明感あふれる輝かしい音楽を導いている。交響詩「ドン・ファン」「死と変容」では大管弦楽が一体となりシャープな造形を繰り広げ、新古典主義的な「町人貴族」ではあでやかなアンサンブルが全編を芳醇な香りで満たす。合奏力のみならず各奏者の技量にも目を見張るべきものがあり、同団の好調ぶりに加え「オーストリアに我らあり」という気概がうかがえる。(江藤光紀)徒らに奇を衒うことはせず、ただし音楽的には果敢に大胆に。反田恭平の弾くベートーヴェンの“3大ソナタ”は、現代人の胸に熱く響く一枚だ。遠くの地鳴りのようなトレモロが印象的な1楽章から、抑制美の効いた2楽章への移行がホロリとさせる「悲愴」、モダン・ピアノの音の伸びの良さと残響を生かし切った「月光」、冒頭の三音のモティーフから強烈に惹きつけ、強弱表現のレンジが極めて豊かな「熱情」。歯切れの良いタッチと立体的な曲想の変化に富む「32の変奏曲」にも、反田の時代様式への真摯な眼差しと、現代に生きる者としての熱い息吹が感じられる。 (飯田有抄)
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