eぶらあぼ 2018.9月号
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174CDCDCDSACD王のためのコンセール~フルート・バロック名曲集Ⅱ~/工藤重典ショパンの愛弟子 若き天才作曲家 カール・フィルチュの世界 2/萩原千代ドヴォルザーク:チェロ協奏曲、アザラシヴィリ:無言歌/遠藤真理ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第2番 他/横山幸雄F.クープラン(R.シーゲル編):組曲「王のためのコンセール」/ラモー(R.シーゲル編):オペラ組曲/C.P.E.バッハ:ソナタ第1番Wq.125/テレマン:ソナタ ロ短調TWV41:h4/J.S.バッハ:アダージョ ソナタBWV1033より、アリオーソ 協奏曲BWV1056より 他工藤重典(フルート)リチャード・シーゲル(チェンバロ)フィルチュ:英雄的練習曲、無題(ノクターン)、言葉のないロマンス「さようなら!」、変奏曲、前奏曲とフーガ、アルブムブラット、ノクターン、劇的幻想曲、マズルカ、ヴェニスの別れ萩原千代(ピアノ)ドヴォルザーク:チェロ協奏曲アザラシヴィリ:無言歌遠藤真理(チェロ)小林研一郎(指揮)読売日本交響楽団ラフマニノフ:パガニーニの主題による狂詩曲、ピアノ協奏曲第2番/横山幸雄:オマージュ・ア・ラフマニノフ~ヴォカリーズ横山幸雄(ピアノ)下野竜也(指揮)新日本フィルハーモニー交響楽団収録:2017年9月、Hakuju Hall(ライヴ) 他マイスター・ミュージックMM-4037 ¥3000+税コジマ録音ALCD-9188 ¥2800+税収録:2017年7月、東京芸術劇場(ライヴ)エイベックス・クラシックスAVCL-25972 ¥3000+税収録:2018年1月、横浜みなとみらいホール(ライヴ)アールアンフィニ(ソニー・ミュージックダイレクト/ミューズエンターテインメント)MECO-1049 ¥3000+税日本を代表するフルートの名手、工藤重典の最新録音は、パリで活躍するアメリカ出身の鍵盤楽器奏者、シーゲルとの共演で、フレンチ・バロックを核に。ルイ14世への御前演奏に供された「コンセール」や、オペラ作品から抜粋された組曲での、しっかりした様式感に裏付けされた折り目正しい快演は、工藤ならでは。特に、舞曲のしなやかさには、惚れ惚れしてしまう。シーゲルも出しゃばらず、しかし、出るべき箇所では、きっちりと前へ出る、絶妙のサポート。併録されたエマヌエル・バッハのソナタで、次々に移り変わる多感様式特有の色彩感を、鮮やかに掬い取ってゆくのも、このデュオの真骨頂だ。(寺西 肇)ショパンの愛弟子であり、15歳を目前に夭逝したカール・フィルチュの作品を蘇演する萩原千代のアルバム第2弾。音楽学者ガエフスキーが発見し、2006年に発表された作品が中心。師のショパンやリストによる修正、そして発見者の補筆が加えられた作品も所収。ショパンの「革命のエチュード」のような激しい曲想の影響を受けた「英雄的練習曲」、サロン的で軽やかに明るい「変奏曲」、シューベルトの「魔王」を思わせる「劇的幻想曲」など10作品。萩原のどこか朴訥として、過度な味付けのない演奏が、若くして世を去った天才の面影を想像させてくれる。 (飯田有抄)NHK-FMのクラシック音楽番組で長くパーソナリティを務めている遠藤真理。昨年4月より読響ソロ・チェロ奏者に就任し、その3ヵ月後、小林研一郎の指揮で“同僚”と共演したドヴォルザークの協奏曲で、国内トップクラスのチェリストとしての実力を存分に示した。安定した高い技巧と丁寧な造形は遠藤ならではで、しなやかな歌心からパワフルな表現まで、すべてが美しく、魅力的だ。小林の作りあげる豊麗なオケの響きは東欧の空気すら感じさせ、熱気と郷愁を醸しながらソロを支える。心を打つアンコール曲はチェロパートの仲間たちとのアンサンブルで、名手たちの交歓が幸福感を誘う。(林 昌英)今年1月のライヴ録音。公演では前半にショパンの協奏曲2曲が演奏されており、その後という流れの効果もあってか、下野竜也指揮新日本フィルとのアンサンブルは、自由な勢いの中でぴたりと重なっている。横山らしい精密かつクリアな音で築き上げられた「パガニーニの主題による狂詩曲」と、濃厚な歌で存分に聴かせるピアノ協奏曲第2番。奇を衒わない正統派のアプローチ、あるべきところに音が収まっている心地よさの中、重く澄んだ音の力で耳をひきつける。アンコールで演奏された横山の編曲によるヴォカリーズでは、ダークカラーの美しいヴェールで飾られたかのような音楽が流れる。(高坂はる香)

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