eぶらあぼ 2018.8月号
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46小泉和裕(指揮) 九州交響楽団記念イヤーに鳴り渡る史上最大の響き文:柴田克彦第370回 定期演奏会 9/22(土)15:00 福岡シンフォニーホール問 九響チケットサービス092-823-0101 http://kyukyo.or.jp/ 創立65周年を迎えた九州交響楽団による今年度の定期演奏会のプログラムは、実に意欲的だ。中でも音楽監督の小泉和裕が振る3公演には、すべて“九響初演”作品が含まれている。そして曲の規模と内容から文句なしに中核を成すのが、9月定期のマーラー「千人の交響曲」である。8人の独唱者、二組の混声合唱と児童合唱、5管編成にオルガンを加えた大管弦楽による本作は、特別な機会にのみ登場する記念碑的な演目。九響初演=地元プロオケの演奏で九州に鳴り渡る史上初の機会ゆえ、記念イヤーにこの上なく相応しい。 1989~96年に首席指揮者、2013年から音楽監督を務める小泉和裕は、九響の特質を知り尽くすマエストロ。現在、名古屋フィル、都響、神奈川フィルにもポストを持つ引く手数多の存在であり、円熟味を増した近年は、毎回手応えのある音楽を聴かせている。よって今回も、クオリティアップが顕著な九響と共に、充実の名演を展開してくれるに違いない。 曲は2部から成り、創造主を讃える第1部は圧倒的な大音響が続く。ここは九響と九響合唱団の底力が聴きものだ。第2部は「ファウスト」の終幕の場を描いたオペラやオラトリオのような音楽。そこで今回は、並河寿美、大隅智佳子、吉原圭子(以上ソプラノ)、加納悦子、池田香織(以上アルト)、望月哲也(テノール)、小森輝彦(バリトン)、久保和範(バス)という、全員二期会に所属し、マーラー作品での実績も抜群の豪華歌手陣が威力を発揮する。 マーラーが「宇宙が震え、鳴り響く」と記した大作の満を持しての上演。地元以外のファンもぜひ注目したい。小泉和裕 ©Ivan Malý大田区民ホール・アプリコ開館20周年記念事業 都響 × アプリコ 小林研一郎 哀愁のドヴォルザーク名匠と新鋭の共演で開館20周年を寿ぐ文:林 昌英10/6(土)15:00 大田区民ホール・アプリコ問 チケット専用電話03-3750-1555 http://www.ota-bunka.or.jp/ 蒲田駅(JR・東急)から徒歩数分という好立地にある「大田区民ホール・アプリコ」が、今年開館20周年を迎えた。大・小ホールに展示室やスタジオも併設し、大田区民にとどまらず多くの利用者がいる文化施設である。なかでも大ホールは、聴衆にも演奏者にも評価の高い豊かな音響をもち、名演奏家を招いた独自性の高い主催企画の数々も好評で、都内を代表するホールの一つとなっている。 そして10月には、アプリコ開館20周年を記念して、「都響 × アプリコ 小林研一郎 哀愁のドヴォルザーク」と題された公演が開催される。“炎の指揮者”小林研一郎が東京都交響楽団と共に、得意とするドヴォルザークの名曲2作を聴かせてくれるのだ。チェロ協奏曲では、2017年エリーザベト王妃国際音楽コンクールのチェロ部門第2位を受賞した岡本侑也をソリストに迎える。1994年生まれ、2011年には10代にして日本音楽コンクールを制したほどの逸材で、昨年のエリーザベトの活躍以来、ますます注目を集めている若き名手だ。岡本のフレッシュな感性と技巧で聴かせるドヴォルザークは楽しみだし、熱き巨匠との共演・競演で、新しい名演が実現するのでは。そしてメインの交響曲第8番は、小林の作品への愛情と都響の献身的な名技が融合した熱演となるのは間違いない。マエストロは持ち前の情熱に加えて円熟味も増し続けていて、アプリコの好環境で聴くいまの小林のドヴォルザークは、記念のコンサートという華やぎも加えて、すばらしい音楽体験になるだろう。岡本侑也 ©Shigeto Imura小林研一郎 ©山本倫子

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