eぶらあぼ 2018.8月号
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38ヨーン・ストルゴーズ(指揮) 読売日本交響楽団暑さを吹き飛ばす北欧&東欧のパワー文:柴田克彦第209回 土曜マチネーシリーズ 8/25(土)第209回 日曜マチネーシリーズ 8/26(日)各日14:00 東京芸術劇場 コンサートホール問 読響チケットセンター0570-00-4390 http://yomikyo.or.jp/ 8月の読響「土曜&日曜マチネーシリーズ」は、シベリウスの「フィンランディア」とヴァイオリン協奏曲、ドヴォルザークの交響曲「新世界より」が並ぶ北欧&東欧プログラム。説明不要の名曲ばかりだが、これらは1900年前後の近い時期の作だけに、両巨匠による国民楽派の到達点を比較する楽しみもある。 指揮は、読響初登場となるヨーン・ストルゴーズ。フィンランド生まれの彼は、サロネン時代のスウェーデン放送響のコンサートマスターを経て、2008年から15年までヘルシンキ・フィルの首席指揮者を務め、現在はBBCフィルの首席客演指揮者等の任にある。シカゴ響、ボストン響、ゲヴァントハウス管ほか多数の著名楽団に客演し、シャンドスからシベリウス、ニールセンの交響曲全集をリリースするなど録音も多数。日本では、15年夏にN響を指揮し好評を博している。持ち味は、細かな動きを浮き彫りにしながら壮大に盛り上げるカタルシス充分の音楽。お国のシベリウスはむろん聴きものだし、ゴージャスでダイナミックな今の読響を振って、いかなる「新世界」を創造するのか? 大いに楽しみだ。 ヴァイオリン独奏は、シモーネ・ラムスマ。オランダ出身の彼女は、コンセルトヘボウ管、フランス国立管等の著名楽団と共演し、読響でも昨年2月にカンブルランの指揮でチャイコフスキーの協奏曲を弾いている。2年続けての登場は、まごうことなき実力の証し。本場の名匠のサポートで奏でる、ナチュラルかつ力強いシベリウスに期待したい。 残暑の午後、“爽快にしてパワフル”なプログラムと演奏に浸ろう!シモーネ・ラムスマ ©Otto van den Toornユベール・スダーン(指揮) 東京交響楽団現代における古典派演奏のスタンダードを実現文:飯尾洋一第663回 定期演奏会 9/22(土)18:00 サントリーホール川崎定期演奏会 第67回 9/23(日・祝)14:00 ミューザ川崎シンフォニーホール問 TOKYO SYMPHONYチケットセンター044-520-1511 http://tokyosymphony.jp/ 快進撃が続く東京交響楽団のもとに、この9月、前・音楽監督のユベール・スダーンが帰ってくる。現在の音楽監督ジョナサン・ノットがオーケストラにもたらしたものは限りなく大きいが、これもスダーンという前任者が礎を築いてくれたからこそ。スダーンとの名コンビは楽団のかけがえのない財産だ。 今回、スダーンが指揮するプログラムは原点回帰とでもいうべきウィーン古典派プログラム。ハイドンの交響曲第100番「軍隊」、モーツァルトのヴァイオリン協奏曲第4番(独奏は堀米ゆず子)、ベートーヴェンの交響曲第6番「田園」。3曲ともに名曲中の名曲であり、いずれも晴れやかで快活な楽想を持つ。 音楽監督時代のスダーンはウィーン古典派の作品をたびたび取り上げて、東響のアンサンブル能力を向上させた。基本的なレパートリーを身に着けることで、オーケストラの足腰を鍛え上げたといってもいいだろう。スダーンはしばしば金管楽器やティンパニにピリオド楽器を用い、歴史的な奏法にも配慮しながら、現代のオーケストラにふさわしい古典派演奏のスタイルを追求してきた。その躍動感にあふれ、精彩に富んだ演奏は、いつも大きな喜びをもたらす。 名手堀米ゆず子のソロにも注目。モーツァルトのヴァイオリン協奏曲は、シャーンドル・ヴェーグ指揮のカメラータ・ザルツブルクと全集を録音するなど、得意のレパートリー。円熟味豊かな演奏を披露してくれることだろう。堀米ゆず子 ©T.Okuraヨーン・ストルゴーズ ©Marco Borggreveユベール・スダーン
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