eぶらあぼ 2018.8月号
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34アントニ・ヴィト(指揮) 東京都交響楽団祖国ポーランドの傑作を携えて都響初登場!文:江藤光紀第860回 定期演奏会 Bシリーズ 9/6(木)19:00 サントリーホール問 都響ガイド0570-056-057 http://www.tmso.or.jp/ 筆者がアントニ・ヴィトの名前を知ったのは、1990年代にナクソスから続々とリリースされたディスクを通じてである。シマノフスキら東欧の珍しい作品のみならず、ルトスワフスキやペンデレツキといった前衛までもカヴァー。しかも驚いたことに、どれも演奏水準が高かった。だが今にして思えば、その後の世界各地への客演も含め、実力に評価が追いついたという話にすぎない。ヴィトはポーランド国立放送響のシェフ(1983~2000)を務めた後、ワルシャワ国立フィルを率いている(2002~13)が、それはつまり共産圏が鉄のカーテンによって閉じられていた時代からずっと、この国の最高のポジションにあったということなのだ。 さて、9月にはこの名匠が都響の定期に初登場、自国にちなんだプログラムを聴かせる。ポーランド民謡のテイストが生きたワーグナー初期の序曲「ポローニア」の祝祭的な華やかさはオープニングにぴったりだ。ポーランドといえばショパンだが、今回は2015年ショパン・コンクールで第2位を獲得したシャルル・リシャール=アムランのソロでピアノ協奏曲第2番を披露。パリに移住する以前のポーランド時代に作曲され、ワルシャワで初演されている。 ポーランドは共産圏では珍しく前衛音楽が盛んな国だった。ルトスワフスキの交響曲第3番(1983)は先鋭的な書法を用いながらもドラマティックに構成され、現代ものを得意とする人気指揮者たちがこぞって取り上げている。ポーランドにとどまらず、時代を代表する作品なだけに、作曲者と同じ時代の空気を吸ってきたヴィトの解釈が楽しみだ。シャルル・リシャール=アムラン ©Elizabeth Delage高関 健(指揮) 東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団楽団員の名技が光るマルタンと抒情溢れるマーラーを文:山田治生第54回ティアラこうとう定期演奏会 7/28(土)14:00 ティアラこうとう問 東京シティ・フィル チケットサービス03-5624-4002 http://www.cityphil.jp/ 東京シティ・フィルは、江東区と芸術提携を結び、ティアラこうとう(江東公会堂)で、1年に数回、ティアラこうとう定期演奏会を開催している。以前は、名曲コンサート的な性格が強かったが、高関健が常任指揮者に就任してからは、東京オペラシティ・コンサートホールでの定期演奏会と変わらない凝ったプログラムが組まれるようになった。7月のティアラこうとう定期は、まさに上昇機運にある東京シティ・フィルの今を知るのに最適のプログラムといえよう。 前半のマルタンの「7つの管楽器とティンパニ、打楽器と弦楽のための協奏曲」では、首席奏者たちがソリストを務める。特に同楽団の管楽器は、フルートの竹山愛やトランペットの松木亜希ら、若くて優秀な首席奏者が加わり、近年著しく演奏水準を上げている。1949年に、ソリストたちの音楽性と技量の発揮を目的としてこの作品を書いたマルタンは、発音方法やメカニズムの違う7つの楽器の特徴を最大限に生かすように努めた。 後半は、マーラーの交響曲第4番。マーラーの交響曲のなかでは、比較的規模の小さい作品であるが、メルヘン的な魅力に溢れている。高関がマーラーを得意としているだけに、どのような演奏が繰り広げられるのか非常に楽しみである。また、第4楽章のソプラノ独唱を幸田浩子が務めるのにも注目。天使の歌声のような澄んだ声が必要とされるこの作品には彼女の声がぴったりである。幸田浩子アントニ・ヴィト ©J.Multarzyński高関 健

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