eぶらあぼ 2018.8月号
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30五嶋 龍 ヴァイオリン・リサイタル2018 忘却にして永遠に刻まれる時ソールドアウトの全国ツアー、東京での追加公演が決定!文:笹田和人8/9(木)19:00 サントリーホール問 イープラス0570-09-5050 http://eplus.jp/ryugoto/ 確固たる意志と奥深い音楽性を携えて、国際的な楽壇の第一線を疾走し続けるヴァイオリニスト、五嶋龍。7月末から8月初旬にかけて、全国9ヵ所を巡る3年ぶりのリサイタル・ツアー「忘却にして永遠に刻まれる時」を敢行する。シューマン、ドビュッシー、イサン・ユンのヴァイオリン・ソナタに、現在の自分を投影する先鋭的なステージは、各地でソールドアウト続出の大反響に。東京では早くも、追加公演の実施が決定した。 謎めいたツアー・タイトルには、「たとえ細部は忘れ去られようと、演奏が聴き手の人生の一部になり、何かのきっかけで音と思いが蘇れば」との思いを込めたという。銘器ストラディヴァリウス「ジュピター」を駆り、世界を股にかけての演奏活動の一方、柔道で汗を流し、ビジネスにも挑戦。「多面的に物事を『知りたい』と思い、その一つひとつが、解明されるのが楽しい」と語っていた。近年は、北朝鮮による拉致問題の早期解決を求める活動にも力を注ぐ。 ピアノの盟友マイケル・ドゥセクとのステージは、3つのソナタが核となる。まずは「正気と狂気、作曲者の内面が投影されている」と五嶋が評するシューマンの第2番を。かたや、「色彩で溢れかえっているよう」というドビュッシーは、「そのコントラストを大事にしたい」。そして、やはり世界的ヴァイオリニストの姉みどりのプロジェクトをきっかけに知り、「弾いていると、不思議な光景が浮かぶ」というユンの作品を配する。疾走する名手の“いま”を捉えたい。©Ayako Yamamoto/UMLLCアレクサンダー・ガヴリリュク ロシア3大ピアノ協奏曲圧倒的な技量をもって傑作コンチェルト3曲を一挙演奏!文:飯田有抄9/12(水)19:00 東京芸術劇場 コンサートホール問 ジャパン・アーツぴあ03-5774-3040 http://www.japanarts.co.jp/ 3大ソナタ、3大ヴァイオリン協奏曲、3B(ご存知、バッハ・ベートーヴェン・ブラームス)などなど、揺るぎなきベスト3を挙げられることは多々あるが、「ロシア3大ピアノ協奏曲」という、ありそうでなかった切り口のコンサートが開かれる。ロシア・ピアニズムという言葉が生まれるほど、豊潤なピアノ音楽文化を生んだロシアをテーマとしているだけに、非常に納得のいく、そして興味をそそられるプログラムだ。 登場する作曲家と協奏曲は、チャイコフスキー(第1番)、プロコフィエフ(第3番)、ラフマニノフ(第2番)。朗々と続くメロディー、分厚いハーモニー、超絶技巧のオンパレード! まさに「ロシア3大」としては申し分なく、ピアノ協奏曲史上としても決定版揃いだ。通常のコンサートで1曲聴くだけでも満足度の高い作品ばかりだが、これらをたった一夜ですべて弾いてしまうピアニストは、アレクサンダー・ガヴリリュク。大胆かつ繊細な音楽表現で、どんなパッセージも生き生きと紡ぎ出す彼は、すでに世界各国でのステージを熱くしている。今年34歳。音楽的には深みを増しつつ、気力・体力ともにみなぎるガヴリリュクだからこそ実現できる、夢のような企画とも言えるだろう。共演する指揮者は、2017年のショルティ国際指揮者コンクールで優勝を勝ち取ったばかりのヴァレンティン・ウリューピン。東京交響楽団と繰り広げる、エネルギッシュな演奏にも期待がかかる。©Mika Bovan
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