eぶらあぼ 2018.8月号
31/179
28©Marco Borggreve紀尾井ホール室内管弦楽団 第113回 定期演奏会9/21(金)19:00、9/22(土)14:00 紀尾井ホール ※9/22公演は予定枚数終了。問 紀尾井ホールチケットセンター03-3237-0061 http://www.kioi-hall.or.jp/今井信子(ヴィオラ)ヴィオラという楽器はヴィオラを愛していないと音楽を伝えることができません取材・文:宮本 明Interview ヴィオラの世界的トップ・リーダー今井信子が、紀尾井ホール室内管弦楽団の第113回定期演奏会(9月)に独奏者として登場する。首席指揮者でウィーン・フィル・コンサートマスターのライナー・ホーネックの弾き振りによるモーツァルトの「ヴァイオリンとヴィオラのための協奏交響曲 変ホ長調K.364」。 「ヴィオラで一番演奏機会が多いのがこの曲。オーケストラのヴィオラ・パートも2声部に分かれているので、通常の編成とは音色が全く違います。モーツァルトは自身もヴィオラを弾いていたのでこの楽器が好きだったのでしょうね」 演奏者にとって、この曲でいつも問題になるのがスコルダトゥーラ(特殊調弦)。スコアには、独奏ヴィオラは半音高く調弦して、つまり半音低い運指で弾く指定がある。 「モーツァルトは、テンションが上がれば音が飛んでいくということをよくわかっていたんですね。私も、五嶋みどりさん、エッシェンバッハさんとの録音はスコルダトゥーラで弾いています。いつもスコルダトゥーラで弾きたいのですが、実際には、普段の活動のなかでこの曲だけ半音上げて弾くとなると、楽器にも負担がかかりますし、この音はこの指という身に付いた反応も全部変えなければなりません。一番良いのは、もうひとつ他の楽器を用意する方法ですね。どうするか、まだ考えているところです」 初めて弾いたのは桐朋の学生時代。ヴァイオリンから転向してすぐの頃。 「齋藤秀雄先生に『この曲やりたいです!』と持っていきました。当時はまだみんな知らない曲で、私もレコードを聴いて勉強しました。今までに何度弾いたかわかりませんが、相手が変わるたびに全くアプローチも違うので、毎回一からの出発です。逆に、もうよく知っていると思ったら危ない。音楽がそこでストップしてしまいます」 ホーネックとは、バレンボイム夫人エレーナ・バシュキロワが主宰するエルサレム国際室内楽フェスティバルで共演して以来の旧知の間柄。 「彼はとにかくリードが上手ですし、素晴らしい音楽家。今回もいろいろ影響を受けると思います」 とその時、ホーネック本人が突如来訪。開口一番、「(調弦は)ニ長調にする?変ホ長調にする?」。やっぱり、まずそこかららしい。プログラム後半は「ハフナー・セレナーデ ニ長調K.250」というモーツァルト・プログラム。ヴィオラは、この楽器を愛していないと弾けないと言い切る今井。彼女と、ヴィオラ、モーツァルト、ホーネック。それぞれの“愛”がさまざまな方向に交錯するひとときとなるだろう。ハーモニーホール座間オペラワークショップ参加作品 歌劇《愛の妙薬》日曜の午後には“愛のオペラ・ブッファ”をどうぞ文:城間 勉 小田急線相武台前駅から歩いて約15分。豊かな自然に恵まれた絶好のロケーションにあるのが「ハーモニーホール座間」だ。“森の音楽堂”をコンセプトとして1995年に建てられた同ホールの大ホールは客席約1300、内装は主に木材を使用し、柔らかで温もりのあるトーンと1.7秒という残響が魅力的で、本格的なクラシック音楽コンサートに最適なのだ。オペラ上演も可能で、この9月には《愛の妙薬》の舞台上演が行われるのが嬉しい。同オペラは言うまでもなく、〈人知れぬ涙〉で知られるドニゼッティの名作。“媚薬”(実際はただの赤ワイン)のおかげでハッピーエンドを迎える若いカップル9/2(日)14:00 ハーモニーホール座間問 ハーモニーホール座間046-255-1100http://www.ny.airnet.ne.jp/harmony/左より:粂原裕介 ©Taira Tairadate/鈴木和音/藤牧正充/月野 進を描くコメディ。鈴木和音(アディーナ)、藤牧正充(ネモリーノ)、月野進(ベルコーレ)はじめ、個性あふれる実力派が集結、合唱にはオペラワークショップ参加者も加わる。演出には「すべてのAmore(愛)をお届けします」と熱っぽく語る古川寛泰、指揮は粂原裕介が務める。管弦楽がイタリア・オペラを得意とするテアトロ・ジーリオ・ショウワ・オーケストラというのも贅沢だ。
元のページ
../index.html#31