eぶらあぼ 2018.8月号
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26山田和樹(指揮) 日本フィルハーモニー交響楽団呼応しあうフランス作品と三善ワールド文:柴辻純子第703回東京定期演奏会9/7(金)19:00、9/8(土)14:00 サントリーホール問 日本フィル・サービスセンター03-5378-5911 http://www.japanphil.or.jp/ 日本フィルハーモニー交響楽団第703回東京定期演奏会は、2012年秋から正指揮者を務める山田和樹が登場して、フランス近現代作品と日本人作曲家を組み合わせたプログラムを披露する。管楽器が活躍する、プーランクの軽快な「シンフォニエッタ」、デュカス「魔法使いの弟子」は珍しいストコフスキー版で。アンリ・デュティユーと三善晃の作品も聴き逃せない。 三善(1933~2013)は、東京大学文学部仏文科在学中にフランス政府給費学生としてパリ国立高等音楽院に留学。「ピアノ協奏曲」は、帰国後の1962年に作曲された。多彩な打楽器を含む単一楽章の作品で、攻撃的な力強さと神秘的な中間部との対比が鮮やかだ。ピアノ独奏は、2010年ジュネーヴ国際コンクール優勝の萩原麻未。パリで学んだ、感受性豊かな萩原が、三善の鋭敏な音楽をどのように表現するのか楽しみだ。 デュティユー(1916~2013)の交響曲第2番「ル・ドゥーブル(分身)」(1957~59)は、大小二つの管弦楽群のための作品。小管弦楽が指揮者の前で、それを大管弦楽が取り囲む楽器配置。この二つは、重なり絡み合い一体化し、音色の対比、ポリリズム、多調など多様な響きが追求される。両者は互いに干渉し合い、音楽は劇的な高まりを含みながら繊細で微妙なテクスチュアの変化で形作られる。近年、在京オケの定期公演で続けて取り上げられている同曲。好調の日本フィルと若きマエストロとの挑戦に注目したい。萩原麻未 ©Marco Borggreve上岡敏之(指揮) 新日本フィルハーモニー交響楽団進化を示す、いま再びのシュトラウス文:柴田克彦#593 トパーズ〈トリフォニー・シリーズ〉9/14(金)19:00、9/15(土)14:00 すみだトリフォニーホール問 新日本フィル・チケットボックス03-5610-3815 http://www.njp.or.jp/ 上岡敏之&新日本フィルの新シーズンが、R.シュトラウスで始まる。2016年9月、上岡は同楽団の音楽監督に就任し、最初の定期演奏会でR.シュトラウスの「ツァラトゥストラはかく語りき」と「英雄の生涯」を取り上げた。それらは、お約束の大見得や大音響を排した、流麗かつ濃密な交響“詩”であり、新鮮な“音物語”だった。あれから2年、手垢のついた楽譜を一から見直して真の姿を追求する上岡のポリシーは、新日本フィルに少しずつ浸透し、回を追うごとに精緻な美感を増してきた。好例は、最近リリースされた17年秋録音のレーガー、ツェムリンスキー等のCD。繊細な音が精妙に綾なしながら劇的かつ詩情豊かな音楽が綴られていくこのディスクは、彼らの進化を如実に示している。そして来る9月定期に、再びR.シュトラウスが登場する。期待して当然だろう。 ドイツの歌劇場で叩き上げ、複数の劇場の音楽総監督を務めた上岡にとって、R.シュトラウスが十八番であるのは言うまでもない。今回の演目は、交響詩「ドン・ファン」「ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら」「死と変容」とオーボエ協奏曲(独奏は首席奏者の古部賢一。この名手のソロも要注目)。2年前の大作とは異なる短めの作品集だが、上岡は「3つのストーリーを描くプログラム。表現はこうした小型の曲の方が難しい」と話していた。むろんお決まりの音響パフォーマンスにならないのは必定。コンビ2年の進化と上岡の清新なアプローチが相まって、いかなる演奏が展開されるのか? 3年目のシーズンはスタートから目が離せない。古部賢一 ©土居政則山田和樹 ©堀田力丸上岡敏之 ©武藤 章
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