eぶらあぼ 2018.8月号
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25フライブルク・バロック・オーケストラ mit キャロリン・サンプソン(ソプラノ)バロック・コンチェルトの精髄とカンタータの愉楽文:寺西 肇10/22(月)19:00 トッパンホール問 トッパンホールチケットセンター03-5840-2222 http://www.toppanhall.com/ 音楽への迸る思いを保ち続け、昨年には創立30周年の節目を迎えたフライブルク・バロック・オーケストラ(FBO)。たとえ手垢が付いたような“名曲”も、豊かな創意と丁寧なアプローチによって、まるで初演のように瑞々しく響かせる彼らが、私たちを「バッハ家の夜の音楽会」へと招待してくれる。 宮廷楽団や教会の楽長を務め、作曲や演奏を“生業”としていたバッハ。しかし、後半生を過ごしたライプツィヒでは、中心街にあったカフェ・ツィンマーマンで、毎週末、演奏団体「コレギウム・ムジクム」を率いて自主的にコンサートを開催するなど、損得勘定を抜きにした“音楽愛好家”としての一面も持ち併せていた。 今回の来日公演で軸となるのは、イギリスの名ソプラノ、キャロリン・サンプソンを迎えての、2つのソロ・カンタータ。罪の嘆きから平安へと至る「わが心は血にまみれ」と、友人の婚礼のために書かれた“結婚カンタータ”こと「いまぞ去れ、悲しみの影よ」は、生前のバッハが何度も再演したが、優れたソプラノ歌手だった妻アンナ・マグダレーナも、きっと歌ったに違いない。 さらに、「オーボエとヴァイオリンのための協奏曲 ニ短調 BWV1060a」と、バッハの父の従兄弟の息子、すなわち“はとこ”で、アイゼナハの教会オルガニストを務めていたヨハン・ベルンハルト・バッハの「管弦楽組曲第2番」を披露。これら2曲は、バッハ自身が「コレギウム・ムジクム」のステージで、取り上げていたとされる。「奏でる喜び」に満ちた佳品の数々を、じっくり味わいたい。キャロリン・サンプソン ©Marco Borggreveマリウス・プティパ生誕200年記念 東京バレエ団〈プティパ・ガラ〉“プティパ美学”の精髄をじっくり体感する文:高橋森彦9/1(土)14:00 神奈川県民ホール問 チケットかながわ0570-015-415 http://www.kanagawa-kenminhall.com/ 本年2018年はクラシック・バレエの様式を確立させ、後世に絶大な影響を与えたマリウス・プティパの生誕200年にあたる。神奈川県民ホールで行われる東京バレエ団〈プティパ・ガラ〉は、巨匠の名作をワレリー・オブジャニコフ指揮、神奈川フィルハーモニー管弦楽団の演奏と共に贈る。 幕開けの『ジョコンダ』(音楽:ポンキエッリ)では同題オペラの舞踏会の場で繰り広げられる「時の踊り」を披露。ドリゴの音楽を用いた作品は3つあり、コンメディア・デッラルテ (イタリアの仮面即興劇)に取材した『アルレキナーダ』と天上から来た神の娘とインドの王の恋を描く『タリスマン』はガラ・コンサートの定番のパ・ド・ドゥを、ユーゴーの小説「ノートルダム・ド・パリ」を題材にした『エスメラルダ』はパ・ド・ドゥを中心に観せる。 白く短いチュチュ姿の女性群舞が幻想的な『ラ・バヤデール“影の王国”』(音楽:ミンクス) はバレエ・ブラン(白いバレエ)の極致で、『騎兵隊の休息』(音楽:アルムスゲイメル)はコミカルなタッチが楽しめる逸品だ。そしてグラズノフの珠玉の名曲と響きあう『ライモンダ』より婚礼の場のグラン・パ・ド・ドゥで華やかに幕を閉じる。 芸術監督の斎藤友佳理は、ロシア国立舞踊大学院を首席で卒業しロシア・バレエに造詣が深いだけに、プティパ美学の精髄を余すことなく伝えるだろう。上野水香、川島麻実子、沖香菜子、柄本弾、秋元康臣、宮川新大ら看板ダンサー勢揃いの豪華版なのもうれしい。『ライモンダ』より 上野水香、柄本 弾 Photo:Nobuhiko Hikijiフライブルク・バロック・オーケストラ ©Annelies van der Vegt
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