eぶらあぼ 2018.8月号
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158CDCDCDCD芥川也寸志:交響曲第1番、交響三章/鈴木秀美&オーケストラ・ニッポニカリコーダーとチェンバロによる J.S.バッハ 6つのソナタ/根岸基夫&鈴木理賀Ein Konzert/青木尚佳ピアノ・トランスフィギュレーション/高橋アキ芥川也寸志:交響曲第1番、交響三章鈴木秀美(指揮) オーケストラ・ニッポニカJ.S.バッハ(根岸基夫編):ソナタ第1番~第6番 BWV525-530根岸基夫(リコーダー)鈴木理賀(チェンバロ)モーツァルト(クライスラー編):ロンド/クライスラー:プレリュードとアレグロ、美しきロスマリン、愛の悲しみ、愛の喜び、ウィーン風小行進曲/R.シュトラウス:ヴァイオリン・ソナタ 他青木尚佳(ヴァイオリン)中島由紀(ピアノ)尹伊桑:インタールディウムA/松平頼則:ミニ・ヴァリアシオン/松平頼暁:秋山邦晴のためのメモリアル/湯浅譲二:内触覚的宇宙Ⅱ トランスフィギュレーション/フェルドマン:ピアノ/シコルスキ:ヒムノス高橋アキ(ピアノ)収録:2012年4月、第一生命ホール(ライヴ) 他オクタヴィア・レコードOVCL-00660 ¥2500+税コジマ録音ALCD-1174 ¥2800+税収録:2017年10月、Hakuju Hall(ライヴ)フォンテックFOCD9778 ¥3000+税収録:2017年10月、豊洲シビックセンターホール(ライヴ) 他カメラータ・トウキョウCMCD-15145~6(2枚組) ¥3000+税日本人作曲家の作品を、有名無名を問わず取り上げ続けてその価値を知らしめるという、無二の独自性と意義深い活動を堅持するオーケストラ・ニッポニカ。当盤は楽団の精神的支柱である芥川也寸志の青年期の傑作2曲。近年は近現代作品でも出色の成果を挙げている鈴木秀美の統率で、ライヴならではの凝縮されたエネルギーに満ちた熱演を実現している。なにより、アマチュアによる音楽活動を重視した芥川の遺志が楽団に息づいていて、その自覚のもと各奏者が重ねた鍛錬の厳しさまで伝わる。そういった覚悟が芥川芸術の理想的な再現に結実する様は圧巻で、襟を正して拝聴したい。(林 昌英)本来、2つの上声による旋律と、通奏低音のために書かれる「トリオ・ソナタ」。バッハは40代の時、この役割をそれぞれ右手と左手、足鍵盤(ペダル)に当てはめ、オルガンのための全6曲に仕立てた。これらはアンサンブル編曲での演奏機会も多いが、当盤はリコーダーとオブリガート・チェンバロによる録音。だが、機械的に3声を1+2声に分けて移調するのではなく、2つの楽器が有機的に機能するよう、音楽全体を熟慮した再構築が成されている。闊達な表現と変幻自在な音色を併せ持つ根岸基夫のリコーダーと、理知的で洗練された鈴木理賀のチェンバロ。6つの佳品へ新たな地平を拓く。(寺西 肇)2014年ロン=ティボー=クレスパン国際コンクール第2位などの受賞歴を誇り、20代にして幅広く活躍中の若きヴァイオリンの名手、青木尚佳。R.シュトラウスのソナタを軸とし、その前後にウィーンの粋を聴かせる有名曲を並べたコンサートのライヴ録音で、魅力的かつ成熟した演奏を披露。ソナタの雄大な構えと繊細な歌心、小品それぞれの小粋な歌い回しの弾き分け、豊かなニュアンスに全体の構築も見事。音色や表現の純度が高いのも好ましく、若くして正攻法で聴く者を惹きこんでしまう。“期待の若手”どころか、これからも飛躍を続ける“未来の大家”の登場を確認できる一枚だ。(林 昌英)高橋アキの新譜は、彼女と親交のあった20世紀の巨匠作曲家たちのピアノ曲集。尹伊桑、松平頼則、松平頼暁、湯浅譲二、M.フェルドマン、そして20世紀のポーランドでカリスマ的存在であったというT.シコルスキの作品である。高橋に捧げられた作品、高橋が初演を行った作品、創作過程に高橋が深く関わった作品が並ぶ。松平頼則の3分弱の未出版作品から、30分以上を要するフェルドマンの大作まで、静的かつ精彩な演奏で、音楽的時間へと深く引き込んでくれる。初演時の作曲家の解説を引用したライナーノーツも、人と作品の関わりを伝える興味深い内容。 (飯田有抄)
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