eぶらあぼ 2018.8月号
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154CDSACDCDCDメンデルスゾーン:劇付随音楽「夏の夜の夢」/I.フィッシャー&ブダペスト祝祭管バッハ:ゴルトベルク変奏曲(ブゾーニ編)/塚谷水無子大おおざわ澤壽ひさと人の芸術/山田和樹&日本フィル3つのオルガンで聴くバッハの世界~東京芸術劇場~/椎名雄一郎フェリックス・メンデルスゾーン:劇付随音楽「夏の夜の夢」/ファニー・メンデルスゾーン:五月の夜、遠く離れて、ゴンドラの歌イヴァン・フィッシャー(指揮) ブダペスト祝祭管弦楽団 アンナ・ルツィア・リヒター(ソプラノ) バルバラ・コゼリ(アルト) プロ・ムジカ女声合唱団ニレジハーザJ.S.バッハ(ブゾーニ編):ゴルトベルク変奏曲BWV988、「主イエス・キリストよ、われ汝に呼ばわる」BWV639、「来たれ、異教徒の救い主よ」BWV659塚谷水無子(ピアノ)大澤壽人:コントラバス協奏曲、ピアノ協奏曲第3番、交響曲第1番山田和樹(指揮)日本フィルハーモニー交響楽団佐野央子(コントラバス) 福間洸太朗(ピアノ)J.S.バッハ:「いと高きところでは神に栄光あれ」BWV711,715、「おお人よ、汝の罪の大いなるを嘆け」BWV622、パッサカリア BWV582、トッカータとフーガ ニ短調 BWV565、幻想曲とフーガ ト短調 BWV542 他椎名雄一郎(オルガン)CHANNEL CLASSICS/東京エムプラスRCCSSA37418 ¥3238+税Pooh’s HoopPCD-1712 ¥オープン収録:2017年9月、サントリーホール(ライヴ)日本コロムビアCOCQ-85424/5(2枚組) ¥3600+税収録:2016年4月、東京芸術劇場(ライヴ)コジマ録音ALCD-1175 ¥2500+税創設から30年以上続くコンビの最新盤。全体に極めてしなやかな名演だ。「夏の夜の夢」は、「序曲」の冒頭から繊細な響きに耳を奪われ、柔らかな運びに魅せられる。「斑模様の蛇よ」の歌声も快調で、バックのこまやかな動きがさらに見事。「夜想曲」はホルンの美感が際立ち、「結婚行進曲」は意外なまろやかさが新鮮だ。「葬送行進曲」はクラリネットの音色と奏法が妙味十分。「終曲」は合唱の絶妙なハーモニーが光っている。姉ファニーの歌曲も、効果的な管弦楽編曲と相まってすこぶるチャーミング。楽曲の魅力を再発見させられる、お薦めの1枚。 (柴田克彦)東京藝大楽理科卒業後オランダで学び、オルガンなどの鍵盤楽器奏者として活動する塚谷水無子。17、18世紀鍵盤音楽を専門とする彼女による、ブゾーニ編「ゴルトベルク」の録音。ブゾーニが新しい息吹を与えたゴルトベルクを弾くことで、普遍的なバッハ演奏について考えるという興味深い試み。楽器はブゾーニと縁のあるベーゼンドルファー社のピアノ。現代ピアノならではの柔らかい響き、滑らかな音のつながり、低音の力強さを生かした編曲の美点を際立たせて奏でる。オルガン風の響きを持つクオドリべット、大胆にも低音で奏されるアリアのメロディが新鮮な魅力を教えてくれる。(高坂はる香)本CDで注目すべきはこのライヴ収録時が世界初演であったコントラバス協奏曲と交響曲第1番である。前者は調号を持たない西欧前衛的な作風と—四分音すら用いられている—日本的な情緒が融合した極めて個性的な楽曲でコントラバスには高度な技巧が求められる。対する交響曲第1番はフランクを思わせるような循環形式が用いられ、オーケストラの規模はマーラーばりの大編成、展開技法とオーケストレーションも卓抜した異形の怪/快作。「大澤壽人ルネッサンス」のきっかけとなったピアノ協奏曲第3番も収録され、山田和樹らによる献身的で極上な演奏も相まって大澤ファンならずとも大必聴。(藤原 聡)「パイプオルガン」と聞いても、多くの人にとって、同じような楽器に思えるかもしれない。しかし、実は製作された年代により、構造やピッチ、音律(調律の方法)は大きく異なる。東京芸術劇場のオルガンは、筐体を回転することで、ルネサンス・バロック・モダンの使い分けが可能。知的かつ熱い血の通った演奏で、国際的に注目を集める名手・椎名雄一郎は今回、これら3種の楽器を弾き分ける形で、大バッハの作品を録音した。時代を下るごと、素朴でシンプルな響きから、次第に色彩を帯び、やがて圧倒的な響きへ。音律の違いが音楽表現そのものに与える影響の大きさも、改めて実感できよう。(寺西 肇)

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