eぶらあぼ 2018.7月号
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160CDBDCDCDCDJ.C.バッハとW.A.モーツァルトのクラヴィーア協奏曲/小倉貴久子傘寿記念 平井丈一朗 チェロ演奏会アンダルーサ/マリア・エステル・グスマンショスタコーヴィチ:交響曲第5番/佐渡裕&トーンキュンストラー管モーツァルト:クラヴィーア協奏曲第15番K.450、同第27番 K.595/J.C.バッハ:クラヴィーア協奏曲op.13-2小倉貴久子(フォルテピアノ)ピリオド楽器による室内オーケストラヴィヴァルディ:チェロ・ソナタ第2番/ベートーヴェン:同第3番/ハイドン:チェロ協奏曲第1番/平井丈一朗:祝典序曲、「ローレライ」による幻想曲/カザルス:鳥の歌 他平井丈一朗(チェロ) 平井秀明(指揮) 平井元喜(ピアノ) 平井丈一朗 ジュビリー・オーケストラグラナドス:アンダルーサ、メランコリー/アルベニス:サンブラ・グラナディーナ、カプリチオ・パバーナ/タレガ:アラビア風奇想曲/リョベート:5つのカタルーニャ民謡/モンポウ:歌と踊り 第13番 鳥の歌 他マリア・エステル・グスマン(ギター)ショスタコーヴィチ:交響曲第5番、舞台管弦楽のための組曲(ジャズ組曲第2番)佐渡裕(指揮)トーンキュンストラー管弦楽団収録:2017年11月、第一生命ホール(ライヴ)コジマ録音ALCD-1176 ¥2800+税収録:2017年8月、東京文化会館(ライヴ)ナミ・レコードWWCC-7871-3(3枚組/BD+2CD) ¥5000+税マイスター・ミュージックMM-4034 ¥3000+税エイベックス・クラシックスAVCL-25959 ¥2000+税ピリオド楽器アンサンブルの活気、みずみずしさ、そして愛らしさ。それらがぎっしり詰まったこのアルバムは、フォルテピアノの小倉貴久子が続けるコンサートシリーズ「モーツァルトのクラヴィーアのある部屋」第30回を記念するライヴ録音。共演には桐山建志ほか、現代のピリオド楽器のスペシャリストたちが集結。モーツァルトの第15、27番のクラヴィーア協奏曲とともに、モーツァルトが敬愛の念を寄せた作曲家、ヨハン・クリスティアン・バッハ(大バッハの末っ子)の協奏曲も収録。同時代を生きた二人の音楽像がヴィヴィッドに伝えられる。 (飯田有抄)巨匠パブロ・カザルスの高弟として国際的に活躍を続け、昨年で傘寿を迎えた名チェリスト、平井丈一朗。8月28日に東京で開いた記念のステージは、前半で次男・元喜が弾くピアノ、後半では長男・秀明が指揮する特別編成のオーケストラと共演し、思い入れ深い旋律や自作の数々を紡ぎ上げた。“平和に繋がる音楽の創造”に身を捧げ、「芸術家に年齢はない」と精力的に活動を続ける名匠。滋味深く、しかし溌溂とした音色には、そんな音楽家人生への誇りと自信が滲む。録音と映像の両方で、「奏でる喜び」に満ちたステージの全容を、聴衆の息遣いと共に伝える当盤。貴重なドキュメントだ。(笹田和人)多数のコンクールで優勝、2012年にはセゴビア賞のメダルを授与され、「ギター界の女王」と称えられるグスマン。セビーリャ生まれの彼女があえて母国の名品に取り組んだアルバムは、華美にならない重めの音色、地に足がついたコードの響き、隅々まで考え抜かれた解釈で構築されている。そこにカラッとした空気感や絶妙なリズム感も妙味として絡むのは、やはりスペインの名手ならでは。スペインの光と影を感じさせる名演奏に、同国の芸術がもつ奥行きを改めて思い知らされる。全曲味わい深いが、有名な表題曲はあふれる哀愁が胸に迫り、とくに弱音の場面での寂寥の美は絶品。(林 昌英)ショスタコーヴィチの5番は佐渡と特に相性がよい曲。第1、第3楽章ではどっしり巨匠的な表現が生き、またスケルツォや終楽章ではスポーティーな運動性が前面に押し出される。特にフィナーレはオケをコンパクトにドライヴしながら進め、速度を落とした後、燻すように膨らませて輝かしいクライマックスを導く。トーンキュンストラー管は引き締まったサウンドで軽重を使い分け、佐渡のイメージを着実に音にしている。「舞台管弦楽のための組曲」は映画音楽やワルツ、ポルカを集めたもので、軽やかでユーモラスな足取りにも佐渡の面目が躍如。聴いているこちらの心もついつい弾む楽しい演奏だ。(江藤光紀)

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