eぶらあぼ 2018.6月号
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76チョン・キョンファ(ヴァイオリン) 70th Anniversary リサイタルヴァイオリン・ソナタに聴く進化と深化文:伊熊よし子6/5(火)19:00 東京オペラシティ コンサートホール問 サンライズプロモーション東京0570-00-3337 http://sunrisetokyo.com/ チョン・キョンファがケガから復帰し、久しぶりに来日したのは2013年6月のことだった。この15年ぶりのリサイタルは絶賛され、以後定期的に来日公演を行っている。今回のデュオのパートナーは長年コンビを組んでいるケヴィン・ケナー。15年4月以来の再演で、魅力的なプログラムが組まれている。 「ヴァイオリンとピアノのデュオというのは、とても難しい。両楽器が完全にひとつの“声”にならないと良い演奏は生まれないからです。ブラームス(第1番)とフォーレ(同)そしてフランク、いずれのヴァイオリン・ソナタもふたりの音が完璧に融合しなければ、聴き手に感動を与える演奏にはなりません」 こう語るキョンファはヴァイオリン・ソナタを演奏する際、ひとつの目標がある。彼女はジュリアード音楽院でイヴァン・ガラミアンに師事しているが、ガラミアンのパリ時代の弟子で、のちにキョンファも教えを受けるロシア系アメリカ人のヴァイオリニスト、ポール・マカノウィツキーとアメリカ人のピアニスト、ノエル・リーとのデュオに心惹かれ、その演奏を夢見ているのである。彼女はケナーにも彼らの演奏を聴いてほしいと願い、古い録音を探した。もちろんケナーもその演奏に魅せられ、ふたりの目指すゴールは決まった。 3年前のケナーとのデュオは見事に息の合ったものだったが、ふたりは日々の練習の積み重ねでようやく現在の状況になったのだという。その進化と深化を味わいたい。もちろんキョンファの「シャコンヌ」も聴き逃せない。©Simon Fowler日本フィルハーモニー交響楽団 コンチェルト × コンチェルト!! Vol.1レジェンドの“醸造”をダブルで満喫文:柴田克彦6/2(土)14:00 Bunkamuraオーチャードホール問 日本フィル・サービスセンター03-5378-5911 http://www.japanphil.or.jp/ いきなり“レジェンド”の登場だ。日本フィルの新シリーズ「コンチェルト×コンチェルト!!」は、著名ソリストが奏でる協奏曲2曲をメインにした美味しい企画。6月のVol.1でスポットを浴びるのは、クラリネットのリチャード・ストルツマンである。彼は、純然たるソリストとして長年活動を続けてきた、同楽器史上稀な存在。リサイタルや協奏曲のみならず、ジャズやフュージョンでの実績も光っている。また70作を超えるディスクをリリースし、グラミー賞も2度受賞。ハリウッドボウルとカーネギーホールでクラリネット・リサイタルを行った最初のアーティストになるなど、前代未聞の業績を挙げている、その名人芸的な手腕は言わずもがな。彼は、抜群の音楽センスで聴く者を惹きつけ、とろけるような音色と絶妙なフレージングで陶酔の世界に誘う。 今回の演目は、モーツァルトとコープランドのクラリネット協奏曲。ストルツマンは、昨年9月のサントリーホール「チェンバーミュージック・ガーデン」におけるブラームスのソナタなどでも、練達の至芸を披露したばかりだ。とはいえベテランゆえ、2大名作をまとめて耳にできるのは、当然貴重な機会。管楽器協奏曲の最高峰たるモーツァルトの名品はもちろん、ベニー・グッドマンのために書かれたコープランドの協奏曲は、彼の本領発揮に相応しいだけに必聴だ。今年4月からオーケストラ・アンサンブル金沢のレジデント・コンダクターに就任するなど、近年活躍が際立つ田中祐子の指揮と、好調・日本フィルの演奏も期待大。カップリングのバーンスタイン「ウェスト・サイド・ストーリー」より「シンフォニック・ダンス」なども楽しみだ。 何はさておき、“現役のレガシー”をとくと堪能しよう。田中祐子 ©sajihideyasuリチャード・ストルツマン ©Lisa Marie Mazzuco
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