eぶらあぼ 2018.6月号
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70©Martin Sigmundアンドレス・オロスコ=エストラーダ(指揮) フランクフルト放送交響楽団ダニエル・ロザコヴィッチ(ヴァイオリン)6/9(土)19:00 ミューザ川崎シンフォニーホール問 ジャパン・アーツぴあ03-5774-3040 http://www.japanarts.co.jp/※公演によりプログラムとソリストは異なります。全国公演の詳細は上記ウェブサイトでご確認 ください。アンドレス・オロスコ=エストラーダ(指揮)フランクフルト放送響は最高の技術と情熱を持っています取材協力:ジャパン・アーツ構成・文:編集部Interview アンドレス・オロスコ=エストラーダが、音楽監督を務めるフランクフルト放送交響楽団を率い、6月に日本ツアーを行う。彼は、2021/22シーズンからのウィーン交響楽団音楽監督就任も発表されており、欧州でその評価が急上昇中の話題のマエストロだ。 今回のツアーにはドヴォルザークの第9番「新世界より」とマーラーの第5番という、2つの名交響曲を中心にプログラムが組まれている。 「『新世界より』は非常に美しい曲だと思います。とても親しみやすい旋律に溢れていて、誰もがどこかで耳にしたことがあるような、懐かしさを感じることができます。また、ドヴォルザークの音楽は中央ヨーロッパと密接な関係があると感じます。彼がブラームスと頻繁に接触していたからなのですが、ドヴォルザークの作品中に、ある意味、彼独自の音楽で表現したブラームスの深い響きが感じられるのです」 では、マーラーの第5番についてはどうだろうか。 「マーラーの第5番は、『新世界より』とは非常に対照的な作品です。とはいえ、マーラー自身もボヘミア地方出身であるという点については、偶然にもドヴォルザークと関連があります。特に興味深いのは最終楽章で、とても古典的に聞こえる曲中に知的なユーモアが満載されているのです。この楽団はマーラー演奏で非常に長い伝統を持っていますので、私たちはこの作品を日本で演奏できることを大変嬉しく思っています」 フランクフルト放送響の特徴を説明する際、2つの大切な要素があるという。 「まず第一に、情熱です。団員たちは、どの演奏会でも大変な熱意を持って、精魂を込めて演奏します。そして技術面についても常に最高のレベルを目指しています。聴き手は、完璧な技術に裏付けられた極上のサウンドと、音楽の世界に引き込む情熱を併せ持つ演奏を楽しむことができます。もう一つは、柔軟性。今回、皆さんがドヴォルザークの交響曲とマーラーの交響曲を聴き比べてくだされば、それぞれが、全く違うスタイルで演奏されていることが分かるはずです。楽団のサウンドからそれぞれの曲調の違いを容易に感じ取ることができるでしょう」 前回の同響とのツアーからは2年半ぶりとなる来日。 「日本の皆さんは、本当に熱心に耳を傾け、心から音楽を鑑賞してくれます。これはとても有り難いことです。そして、一番楽しみにしているのは、訪れた土地での人々との交流です」 川崎公演では「新世界より」の前に、新星ヴァイオリニストのダニエル・ロザコヴィッチと共演。メンデルスゾーンのコンチェルトを披露する。こちらも聴き逃せない。異才たちのピアニズム――ピアノ音楽の本質を伝える才知との邂逅 イノン・バルナタン縦横無尽に広がる想像の翼文:江藤光紀 トッパンホールの「異才たちのピアニズム」は、一風変わったテイストを持つピアニストを紹介するシリーズ。最終回を飾るテルアビブ出身のイノン・バルナタンはアラン・ギルバートが惚れ込み、ニューヨーク・フィル音楽監督時代、専属ポストに迎え入れた才能だ。そのピアノは骨太で力強く、楽譜から音楽をスケール感豊かに、生き生きと立ち上げる。 バルナタンの個性は想像の翼を縦横無尽に広げていく今回の戦略的なプログラミングからも読み取れる。ド6/26(火)19:00 トッパンホール問 トッパンホールチケットセンター  03-5840-2222http://www.toppanhall.com/©Marco Borggreveビュッシー「ベルガマスク組曲」の「月の光」、アデス「ダークネス・ヴィジブル」、ラヴェル「夜のガスパール」とつなぐと夜のイメージが浮かんでくる。アデス作品はダウランドのメロディをアクセントやタッチなどで変容させているが、この流れからはアルカイズムや擬古典趣味が読み取れよう。文学的テキストと結びつきの強い前半に対し、後半のムソルグスキー「展覧会の絵」では視覚的イメージへと跳躍する。万物照応を地で行く想像力の果敢なジャンプを愉しみたい。

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