eぶらあぼ 2018.6月号
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62O.F.C. 合唱舞踊劇『カルミナ・ブラーナ』“観る音楽”の代表作、ブラッシュアップされて再演!文:守山実花6/16(土)16:00 東京文化会館問 O.F.C. 事務局03-3367-2451 http://www.choraldancetheatre-ofc.com/ ダンス、歌、そして音楽を融合した新たな形の総合芸術、合唱舞踊劇を創り出し、追求し続けるカンパニー「O.F.C.」。その活動の原点となるのが、1995年『カルミナ・ブラーナ』の初演である。カール・オルフの生誕100年にあたり、作曲家自身が意図したバレエを伴った舞台形式での上演を企画、すでに抜粋版の『カルミナ・ブラーナ』を手掛けていた佐多達枝が振付・演出を担当した。オルフの想定した「歌い踊る合唱を伴った作品」を実現するために、佐多はダンサーだけでなく、合唱団にも動きを与えるという画期的な演出を行った。踊る合唱隊の誕生だ。音楽、言葉、身体で表現し、ドラマに奥行を与える彼らと、ダンサー、管弦楽が一つとなり、聖俗のはざまから生じるエネルギーで舞台を満たしたのだった。ダイナミックな本作はO.F.C.の代表作として、その時代、時代のダンサーたちによって踊り継がれてきた。 5年ぶりの上演となる今回は、酒井はな、浅田良和、三木雄馬、池田武志ら現在のバレエシーンに欠かせない個性豊かなダンサーたちが出演。管弦楽は東京シティ・フィル。澤江衣里(ソプラノ)、中嶋克彦(テノール)、加耒徹(バリトン)ら気鋭の独唱陣に合唱が加わる。指揮は昨年12月『戴冠ミサ』でO.F.C.と初共演、オーケストラピットを経験した坂入健司郎。オーケストラや合唱だけでなくダンサーたちともコンタクトしながら、どんな音楽を生成していくのだろう。作品の全体像をどうとらえ、構成していくのか、ピットから見た世界を音楽としてどう提示してくれるのか、興味のつきない公演だ。2013年公演より Photo:スタッフ・テス八王子音楽祭 2018ホールから街角のカフェまで、八王子が音楽に染まる2週間文:林 昌英5/27(日)~6/10(日)いちょうホール、オリンパスホール八王子 他問 八王子市学園都市文化ふれあい財団042-621-3005http://www.hachiojimusicfestival.com/ ユニークな文化活動を展開している八王子で行われる一大イベント「八王子音楽祭」。2008年に開始され、14年の第6回からは規模を拡大して毎年の開催となり、国内トップアーティストが登場を重ねる音楽祭として定着し、今年は第10回という節目を迎える。充実のラインナップのうち3公演をご紹介。 まず、音楽祭開幕を告げる、木嶋真優ヴァイオリンリサイタル(5/27)。10代からめざましい活躍を繰り広げ、16年には上海アイザック・スターン国際コンクール優勝など、卓越した技巧と情熱的な表現でますます好調の木嶋。名手・江口玲のピアノを得て、ブラームスのソナタ第1番「雨の歌」ほか、聴きごたえ十分のリサイタルとなる。 錦織健のテノール・リサイタル(6/3)も注目。随一の人気歌手が、魅力的な歌唱にメディア出演でもおなじみの軽妙なトークをまじえて、〈荒城の月〉〈誰も寝てはならぬ〉など日本歌曲から名オペラ・アリアまでを聴かせる、万人が楽しめるステージだ。 “炎のマエストロ”小林研一郎と東京交響楽団による公演(6/9)も楽しみ。前半は我が国の代表的な名ピアニスト・田部京子との共演で、グリーグの協奏曲を。メインのチャイコフスキー「悲愴」は小林の得意演目で、14年から毎回出演の東響とともに、燃えるような熱演を期待したい。 2週間にわたり、堅苦しくない雰囲気の中で本格的なクラシック公演を楽しめる「八王子音楽祭」は、多彩な演奏会に加えて、街中コンサート、参加型公演も用意されている。地元以外の人も足を運んで音楽祭に“参加”したい。左より:木嶋真優 ©TANKA./錦織 健 ©大八木宏武(都恋堂)/小林研一郎 ©Satoru Mitsuta/田部京子 ©Akira Muto

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