eぶらあぼ 2018.6月号
57/199

54トランス=シベリア芸術祭 in Japan 2018 スーパー☆ヴァイオリニスト 夢の饗宴6/29(金)19:00 Bunkamuraオーチャードホール問 Bunkamuraチケットセンター03-3477-9999 http://www.bunkamura.co.jp/ザハール・ブロン(ヴァイオリン)& 服部百音(ヴァイオリン)名教師と愛弟子たちが繰り広げる豪華なステージ取材・文:林 昌英Interview 世界的ヴァイオリニスト、ワディム・レーピンが芸術監督を務める「トランス=シベリア芸術祭」が、昨年に続き日本で開催される。今回はレーピンの師匠、ザハール・ブロンが昨年70歳を迎えたことを記念し、教え子たちが師を囲んで祝う豪華なガラ・コンサートが実現する。名教師ブロンの指導を受けて飛躍し、世界で活躍中の名ヴァイオリニストは枚挙に暇がないが、本公演にはレーピン、ベルリン・フィルの第1コンサートマスター樫本大進、10代にしてすでに国際的な舞台での活躍著しい服部百音、わずか12歳の新星パロマ・ソーと、世代の異なる名手たちがそろう。この舞台への意気込みをブロンと服部が語った。 ブロン「私はソロと指揮を担当します。4世代の弟子たちが出演しますが、それぞれ本当に個性的。内容豊かな『音楽の奇跡』を感じていただけるコンサートになると思います」 服部「ブロン先生と門下4人が世代を越えて同じ場所に集い、その一員として弾かせていただくことは、本当に光栄で幸せです」 服部はブロンがその才能を高く評価する逸材で、本公演でも超絶技巧の大作、ヴィエニャフスキ「ファウスト・ファンタジー」を託された。しかし彼女は自分のこと以上に、敬愛するブロンを讃える舞台に立てる喜びを語る。 服部「私は先生の音楽、ご指導、そして芸術家としての生き方そのものにとても感銘を受けていて、同じ舞台は緊張するどころか、見守られているような安心感があります。ご指導の場では分析・理論を重視し、本当に音楽を熟知されていて圧倒されます。お手本で弾いてくださる音も大好きで、私はブロン先生の熱烈なファンでもあるのです」 本公演は4人の門下生の饗宴のみならず、ロシア伝統の奏法や表現を伝える“演奏家”ブロンを、ラヴェル「ツィガーヌ」など複数の楽曲で体験できるのも注目となっている。彼は含蓄豊かな言葉でソロとアンサンブルの違いを表現する。 ブロン「ソロでの演奏とは、いわば『音楽そのものとのアンサンブル』です。作曲家が込めたアイディア、演奏中に生じるインスピレーションなど、様々な発見が演奏過程に生まれてくるわけで、その意味ではアンサンブルと同じだと考えています。一方、重奏は共演者との音楽上のディスカッションの場であり、その中で音楽がより豊かになっていくのです」 ブロンは他にも指導論、日本人の気質など、示唆に富む話が尽きなかったが、「優劣なく全員大好き」という教え子たちへの深い愛情、そして音楽への誠実な姿勢が貫かれていた。本公演は服部たちの名技と共に、受け継がれる伝統と、その融合が生み出す“音楽の奇跡”を目の当たりにする一夜となる。渡辺健二 ピアノリサイタルリストが求めた深い精神性を描く文:高坂はる香 東京藝術大学教授として長らく後進の指導に情熱を注ぎ、また同時に卓越したリスト弾きとして演奏活動を続けてきた渡辺健二。リスト音楽院留学中、リスト・バルトーク国際コンクールに入賞したことで、ハンガリーゆかりの作曲家を積極的に取り上げてきた。 今度のリサイタルは、バルトークの「ソナチネ」と「ルーマニア民族舞曲」という親しみやすく美しい小品で幕を開ける。特に楽しみなのは、続けて演奏されるリスト。「バッハのカンタータ『泣き、嘆き、悲しみ、おののき』とロ短調ミサ曲の『十字架につけられ』の6/8(金)19:00 東京文化会館(小)問 プロアルテムジケ03-3943-6677 http://www.proarte.co.jp/通奏低音による変奏曲」や、「詩的で宗教的な調べ」第7曲「葬送」という中期の作品ばかりが並ぶ。リストが深い精神性を求めていった時代の楽曲で、円熟した音楽性を披露してくれることだろう。 一方のシューマンからは、作曲家若き日の多様な感情が詰まったピアノ・ソナタ第1番を演奏。3人の作曲家それぞれの魅力を巧みに描き分ける手腕を聴く、充実した公演となりそうだ。

元のページ  ../index.html#57

このブックを見る