eぶらあぼ 2018.6月号
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208洗足学園音楽大学で長く教鞭を執り、国際的に活躍する数多くの逸材を育て上げて来た3人の名歌手が、退任を記念して、美声を披露する。音楽専攻科科長などを歴任したソプラノの田中純子は、グリーグ「君を愛す」ほか。プロデュースにも手腕を発揮したバリトンの捻金正雄はマリアーニ「花」など。やはりバリトンで社会貢献活動にも尽力した山田俊雄はシューベルト「菩提樹」ほか、とっておきの作品を用意して。30年以上在籍した名門・リヨン国立歌劇場を2011年に辞し、帰国後、ソロ活動と作曲に専念、その独創的な響きの世界が注目を浴びているチェロの津留崎直紀。今回は名手・小林道夫のピアノと共演で、シューマン「アダージョとアレグロ」「幻想小曲集」、シューベルト「アルペジオーネ・ソナタ」、ヴァイオリン作品から編曲したブラームスのソナタ第1番「雨の歌」と傑作を通じ、ドイツ・ロマン派の真髄へ迫る。その若さに似合わぬ深い音楽性と抒情性で、世界中の聴衆を驚愕させているピアニスト、アルセーニ・タラセヴィチ=ニコラーエフ。20世紀を代表する名手タチアナ・ニコラーエワの孫にあたる俊英が、遂に日本でもデビューへ。祖母の手になる「演奏会用練習曲」(抜粋)に始まり、プロコフィエフ、スクリャービンからリスト、ラフマニノフへ。まるで過去へと波紋を広げてゆくような、複層的なプログラムを展開する。作曲とピアノの高橋悠治、“声”の波多野睦美、そして、バリトンサックスの栃尾克樹。波多野の言葉によれば、「リラックス度が半端ない、まったりするトリオ」が「風ぐるま」だ。第2弾アルバム発売記念のステージ。軽やかながら多層的な言葉の世界を現出する、辻征夫の詩に高橋が曲を付けた「まつおかさんの家」など初演2作に、ヘンデルのオラトリオからのアリアやチマローザのソナタなど、自在な選曲で。月の6Adagio und Allegro ドイツロマン派の真髄津留崎直紀(チェロ) 小林道夫(ピアノ)アルセーニ・タラセヴィチ=ニコラーエフ(ピアノ) Japan Debut洗足学園音楽大学 退任記念演奏会 田中純子(ソプラノ) 捻金正雄 山田俊雄(以上バリトン)石田多紀乃(ピアノ)~デビュー25周年記念~徳永二男が案内する「楽器の謎!17 箏」徳永二男(ヴァイオリン) 片岡リサ(箏)風ぐるまコンサート「まつおかさんの家」 波多野睦美(声) 高橋悠治(ピアノ) 栃尾克樹(バリトンサックス)6/1(金)19:00 Hakuju Hall6/9(土)14:00 東京文化会館(小)6/2(土)15:00 洗足学園 前田ホール6/2(土)14:00 浜離宮朝日ホール6/16(土)14:00 たましんRISURUホール(小)6/5(火)19:00 東京オペラシティ リサイタルホール文:笹田和人津留崎直紀小林道夫©Decca Classicsデビュー25周年を迎えた、実力派ピアニストの石田多紀乃。東京藝大・同大学院に学び、真摯な姿勢と奥深い洞察力で、バッハから現代に至る多彩なレパートリーに対峙し続け、後進の指導にも力を注ぐ。節目を記念するソロ・リサイタル。ウィーン時代のモーツァルトが書いた第13番(K.333)とベートーヴェン最後の第32番、2つの名ソナタに、シューベルト晩年の「4つの即興曲」(D899)を挟み込んだ、独墺プログラムに挑む。©T.Osato捻金正雄山田俊雄田中純子波多野睦美Photo:河野俊之栃尾克樹高橋悠治画:柳生弦一郎日本を代表する名ヴァイオリニスト、徳永二男のナビゲートにより、第一線の演奏家を迎え、テーマとした楽器の歴史や魅力を掘り下げてゆく好評シリーズ「楽器の謎!」。第17 弾は「箏」をテーマに、邦楽の枠組みを超えた自在な活動を展開する、片岡リサを迎えて。「ロンドンの夜の雨」「衛兵の交替」と宮城道雄をはじめ、松村禎三「幻想曲」や平井康三郎「平城山」など名曲を通じ、西洋音楽への橋渡しも試みる。徳永二男 ©K.Miura片岡リサ

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