eぶらあぼ 2018.6月号
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182CDCDCDSACD風ぐるま2《鳥のカタコト 島のコトカタ》/波多野睦美&栃尾克樹&高橋悠治弦楽セレナード~弦楽のための作品集/佐渡裕&トーンキュンストラー管大地のにおい/タンブッコショパン:ピアノ協奏曲第1番、演奏会用アレグロ/江崎昌子&飯森範親&日本センチュリー響高橋悠治(詩:時里二郎):納戸の夢 あるいは 夢のもつれ(2010/16改訂)、鳥のカタコト 島のコトカタ(2016)波多野睦美(声)栃尾克樹(バリトン・サクソフォン)高橋悠治(ピアノ)チャイコフスキー:弦楽セレナード、弦楽四重奏曲第1番より第2楽章(弦楽オーケストラ版)/芥川也寸志:弦楽のためのトリプティク/レスピーギ:リュートのための古風な舞曲とアリア、弦楽オーケストラのための組曲第3番佐渡裕(指揮)トーンキュンストラー管弦楽団インファンソン:夜の訪れ/ライヒ:マレット・クァルテット/ラヴェル(R.ガヤルド編):弦楽四重奏曲より第2楽章(マリンバ四重奏版)/松尾祐孝:サウンド サウンドⅣ/コエーリョ:大地のにおいタンブッコ(パーカッション・アンサンブル) 三橋貴風(尺八) 吉村七重(二十絃箏)ショパン:ピアノ協奏曲第1番、演奏会用アレグロ江崎昌子(ピアノ)飯森範親(指揮)日本センチュリー交響楽団Pau RecordsPAU-8002 ¥2593+税エイベックス・クラシックスAVCL-25958 ¥2000+税マイスター・ミュージックMM-4032 ¥3000+税収録:2017年4月、ザ・シンフォニーホール(ライヴ) 他オクタヴィア・レコードOVCT-00135 ¥3200+税声と言葉を操る波多野の表現が深く美しい。詩人・時里が台本を書き下ろした「納戸の夢〜」の創作にあたって、波多野は高橋に「レチタティーヴォ(しゃべり)とアリア(歌)の間で、声が行き来するような曲を」と依頼したという。波多野は上演形態から「モノオペラ」と称しているが、高橋と時里は、おそらくは音と言葉の関係をオペラに対置して、「反オペラ」と呼んでいる。言葉はそれ自身の音、そして楽器の音とも自由に戯れる。その語りと歌のたゆたいをさらにつきつめたのが「鳥のカタコト〜」で、こちらは継続中の「名井島」シリーズからの6つの詩による。 (宮本 明)佐渡裕とウィーンの手兵による新録音は弦楽合奏名作集。40人ほどの編成で、悠然としたテンポを土台に、弦の艶やかさを活かした豊麗な響きを作りあげている。佐渡は自分を前面に出すよりも、オーケストラの能力と自発性に全幅の信頼をおき、虚飾なしにまとめることで、聴く者にとっても安心感ある好演に導く。チャイコフスキーとレスピーギの有名作では、シンフォニックな音響としなやかな旋律美を実現、どこかなつかしささえ覚える。一方、明快で硬質な芥川作品は、佐渡の得意曲でもあり気迫十分。ソ連のモダニズムに範をとった芥川の音楽がウィーンの情感と融合した快演だ。(林 昌英)彼らにあっては、眼前にある全てのモノが楽器だ。あらゆる素材や日用品が叩き尽くされ、新たな音の世界が切り拓かれてゆく。衝撃的なパフォーマンスで聴く者を圧倒、グラミー賞ノミネートも4度のメキシコの世界的打楽器グループ。「地球が誕生する過程を圧縮した」というタイトル曲から、深遠さを感じさせる邦楽器とのコラボ、情熱と端正さが同居するライヒ…その表情は実に多彩。極めて打楽器的な発想に基づくラヴェルの四重奏曲など、編曲に“必然”すら感じさせる。「自分たちにとっての音楽とは、常に探検」と語る彼ら。そんな旅に同行するようなワクワク感に当盤は満ちている。(寺西 肇)ショパン独奏作品全曲録音で優れた成果を残している江崎昌子がいよいよ協奏曲第1番をリリース。昨年の日本センチュリー響の定期のライヴで、会場での感動が蘇る。ソロの冒頭からリズムの切れ味が良く、響きに深みがあり、心のこもった歌がとても美しい。早いパッセージでも繊細に表情づけられる一方、飯森範親指揮のオケの豊かなトゥッティとも堂々と対峙する。明晰な解釈と凛とした佇まいが江崎の美質である。それは抒情的な緩徐楽章でも、キリリと引き締まった終楽章でも遺憾なく発揮される。もともと協奏曲用に書かれた「アレグロ」の味わい深い演奏とともに大いに楽しめるアルバムだ。(横原千史)
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