eぶらあぼ 2018.6月号
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178CDCDSACDCDストラヴィンスキー:「春の祭典」「火の鳥」/小林研一郎&ロンドン・フィルポンセ作品集 カンシオン・メヒカーナ/福田進一聖アポリナーレ教会のレクツィオ/山内房子お菓子と娘 橋本國彦歌曲集/小川明子&山田啓明ストラヴィンスキー:バレエ音楽「春の祭典」(1947年版)、バレエ音楽「火の鳥」組曲(1919年版)小林研一郎(指揮)ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団ポンセ:6つの前奏曲(セゴビア版)、組曲イ短調、4つの小品、3つのメキシコ民謡、ソナタ第3番、しおれた心、スケルツィーノ・メヒカーノ、エストレリータ福田進一(ギター)作者不詳:第一日 第一のレクツィオ、第二日 第一のレクツィオ、第三日 第一のレクツィオ、同第三のレクツィオ/ストラデッラ:「3声のシンフォニア」より/パスクィーニ:トッカータ ハ短調山内房子(ソプラノ) 朝吹園子 吉田爽子(以上ヴァイオリン) 懸田貴嗣(チェロ) 桒形亜樹子(オルガン)橋本國彦:なやましき晩夏の日に、牡丹、芭蕉、薊の花、城ヶ島の雨、お菓子と娘、黴、斑猫、旅役者、百姓唄、親芋小芋、お六娘、舞、落葉、田植唄、母の歌、大君に、戦ふ花、アカシアの花 他小川明子(アルト)山田啓明(ピアノ)オクタヴィア・レコードOVCL-00653 ¥3800+税マイスター・ミュージックMM-4031 ¥3000+税コジマ録音ALCD-1173 ¥2800+税ナミ・レコードWWCC-7864 ¥2500+税コバケン&ロンドン・フィルのロシア音楽シリーズの最新盤。今や稀少なスタジオ録音と相まって、隅々まで丁寧に描かれた悠揚迫らぬ演奏が展開されている。「春の祭典」は、各パートの動きを明確に表出しながら、雄弁かつエネルギッシュに進行。鮮明な録音が音楽を強化し、中でも打楽器の迫力は凄まじい。「火の鳥」も緻密かつ精妙な造作が印象深く、こちらは曲調的に、細部までリアルな録音がより効果を発揮する。「子守唄」の終盤から「終曲」最初の部分にかけての弦の弱音のかつてない微細な表現など驚嘆の一語。CD録音の存在意義を再認識させられる。(柴田克彦)マヌエル・ポンセ没後70年を記念してのアルバム。作風の変遷を体感することのできる目配りに富んだプログラミングだが、演奏もまた磐石の一語。「組曲イ短調」サラバンドでの板についた歌い口、「3つのメキシコ民謡」で聴かせる細かい走句にまで正確で神経の通った奏楽、「ソナタ第3番」での明晰な造形と力強さ…。セゴビアにあやかってヘルマン・ハウザー3世が製作した祖父1世の復刻モデル「ジュビリー」(セゴビアのポンセ録音の大半は1世の楽器を用いたという)を使用というこだわりも嬉しい。かの有名な名品「エストレリータ」も収録されていますよ。 (藤原 聡)埋もれたバロック作品を蘇演するなど、独創的な演奏活動を展開する山内房子が21年前、図書館のマイクロフィルムを通じ、偶然に知った作者不詳の聖週間の「レクツィオ」。かつて17世紀末〜18世紀前半頃にローマ・聖アポリナーレ教会で演奏され、今はロンドンに2種の写譜が現存。誰にも演奏されることなく、数百年間、眠り続けてきた。「いつか音に」と抱き続けた彼女の思いが、形となったのが当録音。山内の温かな歌声は、強い思い入れも伴って、忘れられていた佳品に、新たな生命を与える。オルガンの桒形亜樹子ら共演の器楽陣も端正な快演。彼女の熱情をしっかり受け止める。(笹田和人)選曲は橋本(1904〜49)のほぼ全創作期にまたがる。それを年代順に収録したことで改めて気づくのは、語るように歌う朗唱的な様式や、当時すでに無調的書法も持ち込んで日本歌曲史上の特異点だった橋本が、その方面の代表作である〈舞〉〈黴〉〈斑猫〉などと、〈お菓子と娘〉や一連の新民謡などの明快な様式の作品とを、並行して同時期に書いていたという、その多様さ。そして、シェーンベルクとも交わった留学後に、逆に彼にその先鋭さを失わせた戦時期の時代背景にも思いをはせる。小川の歌唱は、完璧なコントロールと自在な表現に毎度ながら感服。 (宮本 明)

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