eぶらあぼ 2018.5月号
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72郡 愛子リサイタル2018 しあわせの道みち標しるべ5/13(日)14:30 よみうり大手町ホール問 グローバルアーツ03-5981-9175 http://koriaiko.com/郡 愛子(メゾソプラノ)ジャンルを超えた“しあわせ”を呼ぶこころの歌取材・文:室田尚子Interview 「温かく且つ愁いに満ちたメゾ・ソプラノの歌声」、「繊細且つ圧倒的な内面の表現力」、そして「大らかで誰からも愛される人間性」…歌い手としてのこの貴重な資質に恵まれた郡愛子による、感動と幸せに満ちたステージを実現しよう…という目的で、「郡愛子コンサートプロジェクト」は、1995年の東京芸術劇場大ホールにおける「郡愛子20周年記念リサイタル~ときめきに今!」の成功を契機に発足。それ以降、2015年に開催した「郡愛子40周年記念リサイタル~愛といのちを歌う」までの20年間は、「今を生きる人たちが心の深奥でいちばん求めているものは何か…」、「人間にとっていちばん大切なものは何か…」を常に念頭に置き、ジャンルを超えた楽曲で構成する自主リサイタルを、郡はほぼ毎年続けてきた。 昨年4月に日本オペラ協会の総監督に就任し、現在は日本オペラの振興と発展に努める郡愛子だが「自身が携わるオペラでは、一人でも多くの歌い手が出演の機会に恵まれるように、自分は出演しないつもり」でいる。だがもう一方では、郡なりの歌い手としての使命感はますます膨らみ、これまで続けてきた自主リサイタルに傾ける情熱も半端ではない。 「今が混沌とした時代だからこそ、私たち人間がともすれば忘れがちな大切なことを、歌を通して伝えていくという、歌い手としての責任も痛切に感じる」 「しあわせの道標(みちしるべ)」と題した本リサイタルの演奏編成は、郡のレギュラー・ピアニストでもある松本康子をリーダーとして、郡の40周年記念リサイタルでも共演した藤原歌劇団クアットロアリア(男声アンサンブル=4名)、そして歌い手でもある異色の尺八奏者・阿部大輔の6名から成る。 演奏楽曲は、なかにし礼作・台本のオペラ《静と義経》の初演で郡がかつて静の母・磯の禅師役で出演し歌った〈都へかえりましょう〉、美内すずえ原作の漫画に基づく『アマテラス』のアルバム収録で歌った〈新世界~ASCENSION〉、大林宣彦監督の映画『はるか、ノスタルジィ』で流れた郡による歌〈やるせないアリア〉、そして日本オペラ協会総監督として、新シリーズの第1回目に上演した《ミスター・シンデレラ》のフィナーレで歌われた〈ある朝、人生を振り返ったとき〉など、エピソードが一杯詰め込まれた作品群。歌の内容がどこかこのリサイタルのテーマと重なるものばかりだ。 「無償の愛、出会いと別れ、救済、身近なしあわせ等の様々なテーマやメッセージが込められている、ジャンルを超えた歌たちを通して、そっと“しあわせ”に触れたい」 日本オペラ協会は今年度創立60周年を迎えたが、《静と義経》がその記念公演に決まっており、郡はこのリサイタルにおいてもその公演に繋げることも忘れない。横須賀芸術劇場リサイタル・シリーズ53樫本大進(ヴァイオリン) & キリル・ゲルシュタイン(ピアノ) デュオ・リサイタル精鋭二人のエキサイティングなデュオ文:飯尾洋一 ベルリン・フィル第1コンサートマスターを務める樫本大進が、ロシア出身のピアニストのキリル・ゲルシュタインとともに、横須賀を舞台にデュオ・リサイタルを開く。曲は二人が拠点とするドイツ、そしてオーストリアの作曲家たちによる王道のプログラム。ベートーヴェンのソナタ第2番、ブラームスの第3番、モーツァルトの第34番(K.378)、そして、R.シュトラウスのソナタ。古典派から後期ロマン派4人の大作曲家たちによるヴァイオリン・ソナタの名作がずらりと並ぶのは壮観だ。 樫本にとってピアノのゲルシュタイ7/1(日)15:00 よこすか芸術劇場問 横須賀芸術劇場046-823-9999 http://www.yokosuka-arts.or.jp/キリル・ゲルシュタイン ©Marco Borggreveンは20代の頃からの旧友で、「どんな作品でも知的に独自の世界で弾きこなす」という才人。これまでに室内楽をともに演奏してきたが、デュオは今回が初めてだという。ソリストとしても目を見張る活躍を繰り広げる樫本と、ベルリン・フィルやウィーン・フィルをはじめ名だたる楽団との共演歴を誇るゲルシュタイン。まちがいなくエキサイティングな化学反応が起きるはず。樫本大進 ©Daisuke Akita

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