eぶらあぼ 2018.5月号
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645/15(火)19:00 東京オペラシティ リサイタルホール問 東京オペラシティチケットセンター03-5353-9999 http://www.operacity.jp/東京オペラシティ Bビー→トゥーCシー 中桐 望(ピアノ) バッハを源流とし、他の作曲家に受け継がれていくものとは文:高坂はる香 若手日本人奏者が、バッハから現代作品によるプログラムを独自の感性で組み立てて披露するリサイタルシリーズ「B→C」。来る5月公演に登場するのは、中桐望。2012年マリア・カナルス国際音楽コンクールで第2位、また同年浜松国際ピアノコンクールで第2位に入賞し、その後14年からの2年間はポーランドで研鑽を積んだピアニストだ。 彼女が今回演奏するのは、バッハ、そして彼を敬愛したショパンの「舟歌」から広がるピアノの世界。中でも、ショパンのピアノ表現を継承しながらフランス音楽を発展させたドビュッシー「版画」、メシアン「4つのリズムのエチュード」、メシアンの死を悼んで書かれた武満徹「雨の樹 素描Ⅱ」という流れからどんな物語が見えるのか興味深い。また、南聡と池辺晋一郎という日本人作曲家によるバッハをテーマとした楽曲、力強く輝かしいサウンドで奏でられるバッハ=ブゾーニ「シャコンヌ」も楽しみ。中桐のピアノの、細やかでキリリとした魅力を存分味わうことができそうだ。6/24(日)14:00 東京文化会館(小)問 A&A art 03-3392-2955http://atefhalim.com/アテフ・ハリム ヴァイオリンリサイタル“平和”と“感謝”を心にこめて25年目のステージを文:笹田和人©Bernard Morales 「音楽こそ、すべての人が分かりあえる唯一の言葉。そして、平和につながる確かな希望」。往年の巨匠たちの系譜を受け継ぐ名ヴァイオリニスト、アテフ・ハリムは言う。そんな彼が、心を込めて名旋律を紡ぐリサイタル。ほとばしる熱い思いが、聴く者の心へと饒舌に語りかけてくる。 カイロ出身。5歳でヴァイオリンを始め、13歳で単身パリへ。ハイフェッツ、メニューインら20世紀の巨匠たちに師事。若くしてフランス国立管弦楽団のコンサートマスターを務め、ソリストとしてベームやバーンスタインらとも共演した。1993年にパリから東京へ移住。以後、四半世紀にわたり、日本を拠点に活動を続けている。 リサイタルは、ピアノの金子恵が共演。フランクの名ソナタやサラサーテ「ツィゴイネルワイゼン」、マスネ「タイスの瞑想曲」、ラヴェル「ハバネラ」とフランス・ベルギー作品を。さらに3人の作曲家が共作した「F.A.E.ソナタ」からブラームスによるスケルツォ、バッハの無伴奏作品から「シャコンヌ」などの名曲も、たっぷり聴かせる。5/12(土)14:00 東京文化会館(小) 問 株式会社 演 03-4405-8474 http://ykpianoforte.com/5/20(日)14:00 ア ピアチェーレin 豊田 問 090-4233-3445(吉田) http://a-piacere.jp/菊地裕介ピアノリサイタル2018・春 アリア~フォリア~そしてアリアコレルリを通じて出会う2つの傑作変奏曲文:萩谷由喜子 若葉萌える5月、菊地裕介が時空を隔てた2つの「変奏曲」で勝負する。片や、ロシア出身のラフマニノフがアメリカで書いた「コレルリの主題による変奏曲」。片や、生涯ドイツを出ることのなかったJ.S.バッハの「ゴルトベルク変奏曲」。両変奏曲の作曲年は200年近くも離れているが、前者はバッハにも影響を与えたバロックの巨匠コレルリのソナタの終楽章「ラ・フォリア」から主題をとっているので、両者には目に見えない繋がりがある。菊地は以前、「B-A-C-H」と題したCDアルバムにラフマニノフ編曲のバッハ作品を収録して、ラフマニノフによるバッハへのオマージュを明らかにしたが、今回もその視点は貫かれている。さらに、菊地自身からの両巨匠への尊崇の念が、彼の精緻な音楽の分析力と堅固な構成力、鮮やかなテクニックによって付加されるだろう。ラフマニノフでは、単純なテーマの複雑な変貌と名人芸が、バッハでは、30もの変奏の旅を終えたアリアとの再会が聴きどころとなる。

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