eぶらあぼ 2018.4月号
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69マリア・ジョアン・ピリス(ピアノ) リリット・グリゴリアン(ピアノ)デュオ・リサイタル 2018最後の日本ツアー追加公演はオール・モーツァルトで文:伊熊よし子4/24(火)19:00 川口リリア・音楽ホール4/26(木)19:00 浜離宮朝日ホール問 ミュージックプラント03-3466-2258http://www.mplant.co.jp/ 引退を発表した現代屈指のピアニスト、マリア・ジョアン・ピリスの最後の日本公演はすでに発売となっているが、待望の追加公演が行われることになった。近年、ピリスはエリーザベト王妃音楽大学で教鞭を執り、若き俊英たちを指導している。そんな若手演奏家と同じステージに立ち、自己の利益を求めるのではなく、他者との共存や分かち合いを目指すことを目的とした「パルティトゥーラ・プロジェクト」を立ち上げた。パルティトゥーラとは、楽譜や総譜を意味する。 今回の追加公演はピリスとともに同プロジェクトに関わっているアルメニア出身のピアニスト、リリット・グリゴリアンとの共演。さまざまな国際コンクールで入賞を遂げ、ヴェルビエ音楽祭をはじめとする多くの音楽祭から招かれている逸材だ。モーツァルトの「4手のためのピアノ・ソナタ」(K.19d、K.381、K.521)でピリスと息の合ったところを披露する。もちろん、ピリスのソロ(K.330)も予定され、グリゴリアンもソロを演奏する(K.576)。 ピリスの紡ぎ出す音楽は真摯で誠実で楽譜に忠実なピアニズムだが、その奥に内なる情熱が燃えたぎり、聴き手の深奥に響くのである。いずれの作品でも作曲家の意図したことに肉薄し、楽譜の裏側まで迫っていく。それゆえ、聴き終わると深い感動が胸に押し寄せ、すぐには席を立てなくなってしまう。最後の日本公演でも、あの得も言われぬ至福のときが味わえるに違いない。貴重な音の記憶──ピリスの渾身の演奏に身も心も委ねたい。アルカスSASEBO Mプロジェクト 2018佐世保で感じるフランスからの風文:笹田和人没後100年 ドビュッシーの想像の旅 4/21(土) ジル・エグロ 5/26(土) アルカス・クァルテット 7/21(土) 読売日本交響楽団 9/7(金)パスカル・ロジェ 11/25(日) チェンバー・ソロイスツ・佐世保 2019.3/24(日) 会場:アルカスSASEBO 問 アルカスSASEBO 0956-42-1111 ※Mプロジェクト 2018の詳細は右記ウェブサイトでご確認ください。 http://www.arkas.or.jp/ 年間を通じて1人の作曲家に着目し、様々なステージで同じ作曲家の作品を取り上げる中から、その音楽や人間像を掘り下げるアルカスSASEBOのオリジナル企画「Mプロジェクト」。3年目の2018年度は、没後100年となるドビュッシーを主テーマに。さらに、日仏友好160周年でもあることから、“フランスの音楽”にも拡大させてゆく。主な公演をご紹介しよう。 シリーズの幕開けは、卓越したドビュッシー弾きとして知られ、さらに文筆の世界でも活躍する、ピアノの青柳いづみこを迎えて。「亜麻色の髪の乙女」など「前奏曲集第1巻」を軸にトークを交え、想像の旅へと聴衆を誘う。 そして、今年はシャンソンの歌姫、エディット・ピアフの没後55年でもある。その伝記映画でピアフ本人の歌声も担当した名歌手、ジル・エグロが来日。「バラ色の人生」「愛の賛歌」など、歌姫の代表的なナンバーを歌う。 さらに、川崎洋介(ヴァイオリン)ら国内外の一線楽団で活躍の首席級で組織された、座付きの弦楽四重奏団「アルカス・クァルテット」の第8回定期でも、フランスの佳品を。神尾真由子がソリストで出演する、ジョセフ・バスティアン指揮読売日本交響楽団の公演では、交響詩「海」などを堪能。また、現代フランスを代表するピアノの名匠、パスカル・ロジェも登場。地元・佐世保の陶磁器「三川内焼」とのコラボレーション「ドビュッシーと光」も興味深い。 来年3月の“トリ”を飾るのは、豊嶋泰嗣(ヴァイオリン)を音楽監督に名手を集め、ホールが独自に結成した室内楽団「チェンバー・ソロイスツ・佐世保」。ハープと弦楽合奏のための「神聖な舞曲と世俗的な舞曲」ほか、ドビュッシーの清澄なサウンドを届けてくれる。リリット・グリゴリアン ©Reiner Nicklasマリア・ジョアン・ピリス ©Felix Broede左より:青柳いづみこ/ジル・エグロ/アルカス・クァルテット ©中倉壮志朗/神尾真由子 ©Shion Isaka/パスカル・ロジェ ©Nick Granito/豊嶋泰嗣 ©中倉壮志朗

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