eぶらあぼ 2018.4月号
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66©Akira Muto舘野 泉 ピアノ・リサイタル ~ユヴァル・ゴトリボヴィチを迎えて~共演:ユヴァル・ゴトリボヴィチ(ヴィオラ)5/24(木)19:00 ヤマハホール問 ヤマハ銀座ビルインフォメーション03-3572-3171http://www.yamahaginza.com/hall/舘野 泉(ピアノ)いま、演奏活動が楽しくてしかたありません取材・文:オヤマダアツシInterview 21世紀になってから世界的に注目を集め、多くの作曲家たちが新しい作品を生み出している「左手ピアノ」の世界。その原動力となっている音楽家のひとりが、2004年から「左手のピアニスト」として活動を続けてきた舘野泉であることに疑いの余地はないだろう。左手のピアニストとして活動を始めてから14年、舘野は吉松隆や池辺晋一郎ほか多くの作曲家へ新作を委嘱。そのための資金を募る「左手の文庫」という募金も順調であり、現在までに90曲ほど仕上がり、向こう2年間で少なくとも10曲ほどが初演される予定だという。 「僕がまったく知らない作曲家からも、突然楽譜が送られてきたりします。どうやら左手だけで演奏するという制約が作曲家たちの創作意欲をかきたてるようで、両手の作品を書くよりも、既視感がないという点で今までの形にとらわれない自由さがあるという意見もありました。『サムライ』という素晴らしい曲の作曲者である光永浩一郎さんも、楽譜を送ってくれた一人です。こうして未知の作曲家を発掘できることや、かなり難易度の高い曲が書かれるようになったことなどが、左手のピアノというジャンルの可能性を証明していると思います。僕自身もいま、演奏活動が楽しくてしかたありません」 その舘野が5月24日に、銀座のヤマハホールで行うリサイタルでは、“室内楽の一員として存在感を示す左手ピアノ”に注目が集まる。17年の11月に舘野とヴィオラ奏者の今井信子が世界初演をしたゴトリボヴィチ作曲のヴィオラ・ソナタを、やはりヴィオラ奏者でもある作曲者自身と共演して再演を果たすのだ(この曲も『左手の文庫』の助成作品である)。さらには自身もピアニストとして活躍する谷川賢作が、ヴィオラと左手のピアノによるデュオを作曲(世界初演)。ほかにも池辺晋一郎と光永浩一郎の作品、そしてアイスランドの大自然を音楽に投影したというマグヌッソンの作品が演奏される。 「ゴトリボヴィチは作曲家としても非常に評判が高いことから、作品を委嘱しました。谷川賢作さんは左手のピアノのために『スケッチ・オブ・ジャズ』という曲を2作(1作目はピアノ・ソロ、2作目はヴァイオリンとピアノ)書いてくれており、ヴィオラが加わる3作目にあたる今回の新作も、彼ならではのセンスにあふれた素晴らしい曲になるはずです」 新しいジャンルとして、もっと注目・評価されていい「左手ピアノ」という世界。その最先端とでもいうべき作品に出会えるコンサートなのだ。東京オペラシティ Bビートゥーシー→C ミサ・ミード(ユーフォニアム)世界で活躍する若き名手が聴かせる新しい響き文:江藤光紀 ユーフォニアムは吹奏楽曲ではまろやかな音色でひときわ目立つ楽器だが、この楽器の世界的にも珍しい、女性ソリストとして近年注目を集めているのがミサ・ミード。熊本生まれの新鋭日本人奏者だ。 今回はバッハ「ソナタ ロ短調BWV 1030」ではじまり、ブラジルやスペインなど世界各国の作品を巡って、『B→C』シリーズの中でもとんがったプログラムになった。独奏楽器としての歴史の浅さを逆手に、様々な編成、多彩なコラボで表現の可能性を開拓していこうという姿勢が頼もしい。デッドス「ラタタ!」はスネアドラムとのコミカルなデュオ、ブライアント「ハミング4/17(火)19:00 東京オペラシティ リサイタルホール問 東京オペラシティチケットセンター03-5353-9999 http://www.operacity.jp/バード」は作曲者自身が入れた鼻歌風の多重録音とユーフォニアムがクールなチェイスを繰り広げる。実験的な作風で世界的に活躍する荒井建にはミサ・ミード自らが新作を委嘱、エレクトロニクスに映像も加わる意欲作が完成した。池辺晋一郎によるマリンバとのデュオ曲を経て、最後はヴォーン・ウィリアムズの歌曲「生命の家」より〈静かな昼〉が、彼女の現在の住まいイギリスのノーブルな気分を薫らせる。共演は清水初海(ピアノ)と大場章裕(パーカッション)。
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