eぶらあぼ 2018.4月号
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49パヴェル・コーガンパヴェル・コーガン(指揮) 新日本フィルハーモニー交響楽団名匠のタクトで聴くロシア音楽の神髄文:山田治生第588回 定期演奏会トパーズ〈トリフォニー・シリーズ〉4/27(金)19:00、4/28(土)14:00 すみだトリフォニーホール問 新日本フィル・チケットボックス03-5610-3815 http://www.njp.or.jp/ ソ連を代表する名ヴァイオリニストであったレオニード・コーガンの息子、パヴェル・コーガンが新日本フィルの定期演奏会に登場する。 1952年生まれのパヴェルもまたヴァイオリニストとしてキャリアをスタートさせ、モスクワ音楽院で学んだ。70年のシベリウス国際ヴァイオリン・コンクールで第1位を獲得したが、その後、イリヤ・ムーシンに師事し、指揮者に転じる。ザグレブ・フィルの首席指揮者を務めた後、89年にモスクワ国立交響楽団の首席指揮者に就任。モスクワ国立響を率いて何度か来日している。母親は大ピアニスト、エミール・ギレリスの妹であるエリザヴェータ。パヴェルはロシアの音楽的伝統を色濃く受け継いでいるといえよう。 そんな彼が新日本フィルとともに披露するのはオール・ロシア音楽プログラム。まず、ボロディンの歌劇《イーゴリ公》より〈だったん人の踊り〉、グラズノフの「演奏会用ワルツ第1番」と踊り出したくなるような音楽で始まる。そして、チャイコフスキーの「スラヴ行進曲」とムソルグスキー(ラヴェル編曲)の組曲「展覧会の絵」では、オーケストラの壮大な響きが楽しめるだろう。 新日本フィルは、かつてロストロポーヴィチが「フレンド・オブ・セイジ」の称号で定期的に指揮台に立つなど、ロシア音楽にも適正を示してきた。パヴェルとどんな化学反応を起こすのだろうか。協奏曲なしの4つの管弦楽曲は、パヴェルの円熟を知るのに最適のプログラムといえよう。横浜みなとみらいホール開館20周年井上道義(指揮) 神奈川フィルハーモニー管弦楽団バーンスタイン生誕100周年記念演奏会“作曲家”バーンスタインの偉業に光を当てる文:オヤマダアツシ5/26(土)14:00 横浜みなとみらいホール問 横浜みなとみらいホールチケットセンター045-682-2000 http://www.yaf.or.jp/mmh/ 生誕100年を迎えたレナード・バーンスタインだが、作曲家としての偉業に光が当てられ、多くのコンサートで作品が聴けるのはうれしいこと。首都圏であってもあまりコンサートでは聴けない作品を“発掘”できるのは、アニバーサリー・イヤーならではの喜びだ。 昨年、大阪でバーンスタインの大作「ミサ」を指揮した井上道義が、神奈川フィルハーモニー管弦楽団を指揮し、横浜みなとみらいホールの開館20周年をも祝うという記念演奏会は、まさにバーンスタイン再発見となるプログラム。ミステリアスな雰囲気を漂わせる「ハリル」。ヴァイオリン協奏曲風の「セレナード」。そして悩める大都会の夜を描き出し、ジャズの風味も印象的なピアノ協奏曲風の交響曲「不安の時代」。どれもがバーンスタインのシリアス路線を垣間見せる名作たちであり、ベテランの工藤重典(フルート)や、若手注目アーティストの山根一仁(ヴァイオリン)、福間洸太朗(ピアノ)といったソリストたちが新しい命を吹き込む。 さらにはおなじみの『ウエスト・サイド・ストーリー』から、オーケストラのマスターピースとなりつつある「シンフォニック・ダンス」や、輝けるデュエットの名曲「トゥナイト」を。そして大作「ミサ曲」からの抜粋を加え、幅広い作品が一気に聴けるという趣向なのだ。鷲尾麻衣(ソプラノ)や古橋郷平(テノール)、大山大輔(バリトン)の出演も嬉しい。 マエストロ・ミッキー(井上道義)ならではの多角的な選曲を楽しめるのはもちろん、これだけのソリストたちが集まるチャンスも貴重。作曲家バーンスタインに興味津々の方なら、絶対に聴き逃せない。左より:井上道義 ©Orchestra Ensemble Kanazawa/福間洸太朗 ©Masaaki Hiraga/山根一仁 ©K.Miura/工藤重典 ©武藤 章/鷲尾麻衣/古橋郷平/大山大輔
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