eぶらあぼ 2018.4月号
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45大阪フィルハーモニー交響楽団 尾高忠明音楽監督就任披露公演ゆかりの大曲で告げる新たな歴史の幕開け文:横原千史第517回定期演奏会4/7(土)、4/8(日)各日15:00 フェスティバルホール問 大阪フィル・チケットセンター06-6656-4890 http://www.osaka-phil.com/ 尾高忠明が大阪フィルハーモニー交響楽団音楽監督に就任し、4月に行われる記念すべき就任披露公演のメインに選んだのがブルックナーの交響曲第8番だ。 ブルックナーは言うまでもなく、大阪フィルの創設者朝比奈隆の重要なレパートリーであり、中でも第8番はまさに十八番(オハコ)であった。朝比奈は生涯に35回この大作を指揮し、そのうち22回が大阪フィルである。筆者も初期の1975年から数々の演奏に接したが、特に晩年の名演には圧倒的な感銘を受けた。朝比奈の後任の大植英次は2年目に初めて第8番を取り上げ、前首席指揮者の井上道義は任期の初年度に西宮公演でこの曲を演奏した。 朝比奈亡きあと、大阪フィルで同曲を振るのは尾高が3人目であり、しかも就任披露演奏会に選ぶところに、尾高の覚悟と意気込みの大きさをうかがうことができる。尾高はこれまで大阪フィルと100回以上共演しており、エルガーの3つの交響曲など記憶に残る名演も多い。ブルックナーは第9番と第7番も演奏している。尾高はこの後、5月から12月にかけてベートーヴェン交響曲全曲演奏会も控えており、これもまた大いに楽しみな企画だ。 さて、今回の就任披露演奏会のプログラム前半に置かれた三善晃「ノエシス」も見逃せない。これは尾高自身が72年に東京フィルで初演した曲で、その後、節目の演奏会で再演する(海外でも)など、お気に入りの曲である。ブルックナーとの対比も面白く、期待はいやが上にも高まるのである。尾高忠明 ©Martin Richardson小泉和裕(指揮) 九州交響楽団アニヴァーサリー・シーズン開幕公演でブルックナー5番に挑む文:奥田佳道第366回 定期演奏会4/20(金)19:00 福岡シンフォニーホール問 九響チケットサービス092-823-0101 http://www.kyukyo.or.jp/ ファンの声援も熱い九州交響楽団が創立65周年の記念シーズンを迎え、近年の充実ぶりを映し出す構えの大きな交響曲を披露することになった。音楽監督小泉和裕の剛毅なタクトに導かれ、4月の定期で奏でるのは、オーストリアの孤高のシンフォニスト、アントン・ブルックナーの交響曲第5番変ロ長調(ノヴァーク版)。パイプオルガンの響きから育まれたコラールが荘厳な金管アンサンブルとして現れ、複雑なフーガの書法が際立つ。ブルックナー好きを狂喜乱舞させる交響曲が、九響のシーズン開幕とアニヴァーサリー・イヤーを寿ぐ。 小泉和裕が音楽監督に就任したのは2013年4月。前任秋山和慶(ミュージック・アドヴァイザー/首席指揮者)のもとでR.シュトラウスやマーラー、声楽を交えた近代の大作を披露し評価を高めてきた九響は、「あなたの街のオーケストラ」として地域社会に貢献するという活動理念とともに羽ばたこうとしている。 その昇華が小泉和裕十八番のブルックナー、それもこの作曲家「こだわり」の理論に根ざした筆致と気宇壮大な楽想を併せ持つ交響曲第5番で、何と九響「初演」。これは世代交代が進み、臆せずに大曲・難曲を奏でるようになった九響にとってもチャレンジとなる。 期待は限りない。やはり小泉が腕を揮うマーラーの交響曲第8番「千人の交響曲」(9月)、さらに新星カーチュン・ウォン(5月)、アンコール出演のアンドレア・バッティストーニ(11月)も創立65周年シーズンの主役たちだ。九響に好ましい風が吹いている。小泉和裕 ©Ivan Malý

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