eぶらあぼ 2018.4月号
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42近江の春 びわ湖クラシック音楽祭2018─沼尻竜典(びわ湖ホール芸術監督)による新生・音楽祭の聴きどころガイド─取材・文:寺西 肇 今回のテーマは「私は夢に生きたい」。グノーの歌劇《ロメオとジュリエット》第1幕の有名なアリアのタイトルから採られた。「テーマは縛りのない、緩やかなものに。毎回、オペラ・アリアから採りたい。お金の儲からないものは要らない、という風潮は辛いもの。だから今年は、『夢が失われない世の中に』との願いを込めました」と沼尻は説明する。 期間中は有料・無料を合わせて、60余りの公演を予定。聴衆は、自分で好きなステージを選んで楽しめる。「高校・大学時代に自分が実行委員長を務めていた、1980年代の桐朋学園の学園祭がモデル。(昨年まで同時期に開催していた)“ラ・フォル・ジュルネびわ湖”の後継企画ではありません」と強調。「“ここでしか聴けない”を意識し、『皆で持ち寄って、盛り上げよう』という手作りの企画。滋賀県を挙げての催しとして、広がりもできました。来場者数だけではなく“質”が成功の尺度になります」と語る。 そして、「今年はバーンスタイン(生誕100年)、ロッシーニ(没後150年)、ドビュッシー(同100年)のメモリアル・イヤーなので、プログラムにも反映。例えば、ドビュッシーが1889年のパリ万博で触れ、衝撃を受けたジャワのガムラン音楽を聴いてから、彼の音楽を楽しみ、さらに彼から影響された武満徹の作品を味わう、といった楽しみ方も可能です」とも。名曲で盛り上げるオープング&クロージングガラ 4日、大ホールでのオープニングコンサートには、びわ湖ホールのプロデュースオペラでおなじみ、沼尻指揮の京都市交響楽団が登場。バイエルン国立歌劇場の専属歌手を務めたソプラノの中村恵理が、音楽祭のテーマでもある〈私は夢に生きたい〉などを披露するほか、新たな音楽祭の誕生を祝ってのドヴォルザークの交響曲第9番「新世界より」を。沼尻&京都市響はクロージングガラにも登場。イギリスの名クラリネット奏者、マイケル・コリンズや、国際的ソプラノの森谷真理、名テノール市原多朗と共演によるガラで魅せる。 なお大ホールでは、大植英次指揮の大阪フィルハーモニー交響楽団による2公演も要注目。4日は、大植の師バーンスタインの傑作ミュージカル『ウェスト・サイド・ストーリー』から「シンフォニック・ダンス」、フィンランドのピアノの名匠アンティ・シーララを迎えてのグリーグの名協奏曲を。5日には、大植の“十八番”のひとつであるショスタコーヴィチの交響曲第5番「革命」を披露。また、京都橘高校(4日)と明浄学院高校(5日)、マーチング全国大会の常連2校も、圧巻のパフォーマンスを見せる。 穏やかな湖面に、美しき旋律が共鳴する――。「近江の春 びわ湖クラシック音楽祭2018」がGW期間中の5月3〜5日に開催される(3日は“プレ公演”)。開館20周年を迎えた滋賀県立芸術劇場びわ湖ホールを主会場としてスタートする、新たなコンセプトに基づく音楽祭。「聴衆にも、演奏家にも、良い思い出となるものに」。プロデュースする同ホール芸術監督の沼尻竜典は語る。沼尻竜典 ©RYOICHI ARATANI
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