eぶらあぼ 2018.4月号
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182CDCDCDCDショスタコーヴィチ:交響曲第6番 他/パーヴォ・ヤルヴィ&エストニア祝祭管森の情景 シューマン ピアノ作品集 Ⅹ/小林五月こと葉ば/佐野優子J.S.バッハ:ブランデンブルク協奏曲(全曲)/ゲーベル&ベルリン・バロック・ゾリステンショスタコーヴィチ:交響曲第6番、シンフォニエッタ(原曲:弦楽四重奏曲第8番/アブラム・スタセヴィチ編)パーヴォ・ヤルヴィ(指揮)マディス・メトサマルト(ティンパニ)エストニア祝祭管弦楽団シューマン:森の情景、ペダルフリューゲルのための6つの練習曲、トッカータ小林五月(ピアノ)シューマン(リスト編):献呈/スティーヴン・ハフ:ピアノ・ソナタ第1番「折れた枝」/ショパン:幻想ポロネーズ/ドビュッシー:喜びの島/リスト:ラ・カンパネラ/ショパン:子犬のワルツ、幻想即興曲佐野優子(ピアノ)J.S.バッハ:ブランデンブルク協奏曲第1番~第6番、カンタータ第174番「われいと高き者を心を尽くして愛しまつる」よりシンフォニア、同第42番「されど同じ安息日の夕べに」よりシンフォニアラインハルト・ゲーベル(指揮)ベルリン・バロック・ゾリステンアルファ/マーキュリーAlpha389 ¥2900+税コジマ録音ALCD-7219 ¥2800+税収録:2017年11月、イイノホール(ライヴ)プロアルテムジケPAMP-1053 ¥2500+税ソニーミュージックSICC30471~2(2枚組) ¥3300+税パーヴォ・ヤルヴィが幼少期に毎夏のように過ごしたという、祖国エストニアのリゾート地パルヌ。思い出の地で彼が創設したエストニア祝祭管の初アルバムは、10歳の彼が同地で出会ったショスタコーヴィチの2作。謎めいた抒情と明るさをもつ傑作、交響曲第6番では、オケの清新さ、一体感、高い個人技といった特徴が活きている。終楽章の“超速”と熱狂は猛烈で、内包する「狂喜(狂気)」がスリル満点の愉悦としてあらわされる。弦楽四重奏曲第8番のティンパニ入り編曲は、強打連発に驚きを感じるが、悲劇性は際立ち、演奏者の共感が作品の複雑な背景を浮き彫りにする。 (林 昌英)今回で10作目となる小林五月のシューマンのピアノ作品集であるが、注目点は2つ、まずは「森の情景」の演奏の素晴らしさ。全体にゆったりとしたテンポを採用しつつ独自のアゴーギクをしばしば用いたその演奏は、一般的に聴かれる同曲の演奏よりも遥かに陰影と深みに富み、それは作曲者にとっての「森」の意味を考え直させる、とでも言えようか。2点目は実演はおろか、なかなか録音も行われないレアな「ペダルフリューゲルのための6つの練習曲」の収録。演奏もまた見事なもので、古典的な意匠をまとった、しかし紛れもなくシューマネスクな同曲の味わいを的確に抽出。(藤原 聡)「こと葉」というタイトルは、決して伊達ではない。なぜなら、彼女のピアノは一音一音に異なる意味を纏わせ、饒舌に聴く者へ語りかけてくるから。佐野優子は東京藝大やブダペストのリスト音楽院に学び、英国王立音楽院修士課程を首席で終えて、ロンドンを拠点に活躍する新進気鋭のピアニスト。デビュー・アルバムの核を成すのは、イギリスの名ピアニスト、スティーヴン・ハフが作曲、佐野が日本初演したソナタ「折れた枝」。16の小曲に託された、枝に付いた「葉」の辿る生涯を、色彩も豊かに語り尽くしてゆく。併録したドビュッシーとショパン、リストの傑作も、清冽な語り口で魅せる。 (笹田和人)かつてムジカ・アンティクヮ・ケルンを率い、衝撃的な快演を連発したバロックヴァイオリンの鬼才ゲーベル。近年は指揮者として大活躍の彼が、実に30年ぶりとなる「ブランデンブルク協奏曲」の録音に臨んだ。パートナーは、モダン楽器を用いてのピリオド・アプローチで、鮮烈なサウンドを紡ぐベルリン・バロック・ゾリステン。65歳となった鬼才は枯れるどころか、いっそう過激に。テンポはより加速、流れは抜群で、第2・4番の緩徐楽章など、もはやメヌエット。自筆譜にないスラーの自在な追加、予想もつかぬ対旋律の強調など、刺激的な音楽創りだが、実は繊細な表現も随所に施されている。(寺西 肇)
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