eぶらあぼ 2018.4月号
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180CDSACDCDCDHarmonia -ハルモニア-/朴 葵姫ショパン:エチュード全集/若林 顕セレナータ イタリア歌曲ライヴ/ジョン・健・ヌッツォさくら さくら~7つのヴァリエーションで聴く~アサド:インヴィテイション、フェアウェル/押尾コータロー:ハルモニア/ディアンス:ヴァルス・デ・ザンジュ―天使のワルツ、ヴァルス・アン・スカイ/カラハン:リバー・ベッド、アンダーカレンツ/A.ヨーク:サンバースト、ララバイ/渡辺香津美:ペガサス 他朴 葵姫(ギター)ショパン:12の練習曲op.10、同op.25、3つの新練習曲若林 顕(ピアノ)ベッリーニ:フィッリデの悲しげな姿よ、美しい月よ、喜ばせてあげて/トスティ:君なんかもう、かわいい口もと、暁は光と闇を分かつ/プッチーニ:大地と海/マスカーニ:セレナータ/デンツァ:妖精の瞳 他ジョン・健・ヌッツォ(テノール)河原忠之(ピアノ)山本昭一編:さくら さくら/大塚安宏編:華 ~さくら さくら変奏曲~/ヨセフ・モルナール:さくら変奏曲/平井康三郎:幻想曲「さくら さくら」/山田耕筰編:さくら さくら 他工藤重典(フルート) 岡崎耕治(ファゴット) 吉田秀(コントラバス) ヨセフ・モルナール(ハープ) 長尾洋史 ブルース・スターク(以上ピアノ)ウィリアム・W・スピアマンⅣ(ボーイソプラノ) 大塚安宏(指揮) クローバーベルフレンズ 他日本コロムビアCOCQ-85415 ¥3000+税オクタヴィア・レコードOVCT-00144 ¥3200+税収録:2016年7月、紀尾井ホール(ライヴ)フォンテックFOCD9777 ¥2500+税3/21(水)発売マイスター・ミュージックMMKK-7045 ¥2300+税朴葵姫がまたも見事な1枚を世に出した。必ずしもクラシックというジャンルに縛られることのないコンポーザー=ギタリストであるアサド、ディアンス、ヨーク、カラハンらの作曲によるギター曲の「21世紀スタンダード」宣言とも言うべき聴き応えある1枚がこれだが、特筆すべきはそれぞれの楽曲の勘所を的確に押さえた朴葵姫の奏楽はもちろん、先述の作曲家達の作品に加えて押尾コータローと渡辺香津美が彼女のために書き下ろした作品を収録している点。ことに前者の美しいメロディとハーモニクスの使い方は見事で、アコギの魅力を完全に活かし切っていよう。(藤原 聡)ヴィルトゥオーゾ若林顕が新譜で取り上げたのは、ショパン・エチュード全曲。待望の1枚だ。緻密さの果てに獲得された自由の中で、生き生きと奏でられる「練習曲」ほど、聴いていて楽しいものはない。若林はすっきりと音を紡ぎ出しながらも、時間をかけるべきところにはたっぷりとかけ、ショパンならではのカンタービレを随所に効かせる。連作歌曲のように導き出される多彩な表情は、「別れの曲」や「蝶々」といった単独でよく演奏されるエチュードの、新たな美を感じさせてくれる。「op.25-7嬰ハ短調」のような内省的でロマンティックな曲の芸術的表現も圧巻。 (飯田有抄)ヌッツォの歌は、何と豊かな深みを湛えるに至ったことか。十数年前に出会った彼は、ただ歌好きだった米国の学生が、ひょんなことから、ウィーン国立歌劇場はじめ、国際的に活躍することになった幸運に戸惑いつつ、真摯に音楽へ対峙していたようだった。一方、天賦の歌声で無意識に作品を組み伏せてしまう感覚があった。だが、その後にもたらされた試練は、真の音楽家としての彼を覚醒させたようだ。それは、ベッリーニの歌い出し「Dolente(悲しげな)」という一言だけでも、聴いて取れる。そして、全篇に溢れる音楽への感謝と喜び。歌を知り尽くした、ピアノの河原の好サポートも光る。(寺西 肇)日本では第二の国歌といってもいいほど愛され、世界的にも知られている旋律、「さくらさくら」を7つの編曲で楽しむことができる、意欲的かつこれからの季節にぴったりの一枚。冒頭からコントラバスとピアノという組み合わせが面白く、低音楽器で奏されることで、元の旋律のもつ“はかなさ”のようなものが宗教作品を思わせる高潔さへと変換され、新たな魅力を発見できる。ハープやボーイソプラノによるバージョンにもそうした精神性が感じられ、ハンドベルによるバージョンは、この旋律がジャンルレスな魅力をもつものだということを実感させられた。 (長井進之介)

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