eぶらあぼ 2018.4月号
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176CDCDCDCDラ・カンパネッラ/須関裕子大河ドラマ「西郷どん」オリジナル・サウンドトラック Ⅰ/下野竜也 & N響ベートーヴェン:交響曲第2番・第5番「運命」/久石 譲 & ナガノ・チェンバー・オーケストラベートーヴェン:弦楽四重奏曲 作品18 全6曲/クァルテット・エクセルシオリスト:ラ・カンパネッラ、愛の夢第3番/シューマン(リスト編):献呈/シューマン:アラベスク/ショパン:ポロネーズ第6番「英雄」、ワルツ第7番、バラード第3番、舟歌、スケルツォ第2番須関裕子(ピアノ)富貴晴美:西郷どん ―メインテーマ―、きばれー! 城山を駆け上がる少年たち、薩摩隼人の反骨精神、敬天愛人、ぶっ放せ! 天狗鼻の大砲、篤姫、我が故郷 他下野竜也(指揮)NHK交響楽団里 アンナ、サラ・オレイン(以上歌) 他ベートーヴェン:交響曲第5番「運命」、交響曲第2番久石 譲(指揮)ナガノ・チェンバー・オーケストラベートーヴェン:弦楽四重奏曲第1番~第6番クァルテット・エクセルシオ【西野ゆか、山田百子(以上ヴァイオリン) 吉田有紀子(ヴィオラ) 大友 肇(チェロ)】マイスター・ミュージックMM-4028 ¥3000+税エイベックス・クラシックスAVCL-25957 ¥3000+税収録:2016年7月&2017年7月、長野市芸術館(ライヴ)オクタヴィア・レコードOVCL-00655 ¥3000+税ナミ・レコードWWCC7867-9(3枚組) ¥4500+税チェルニー=ステファンスカ国際ピアノコンクール第1位など輝かしい経歴を持つピアニスト、須関裕子の初のソロ・アルバム。ロマン派の作品でまとめ、彼女の洗練された技巧、音色の多彩さが存分に味わえるプログラミングとなっている。アンサンブルピアニストとしても非常に高い評価を受けている須関は、洗練されたテクニックだけではなく、豊かな歌心も持ち、それを見事にピアノ演奏に昇華させている。リスト自身の歌曲の編曲である「愛の夢」や、シューマンの歌曲を編曲した「献呈」では、彼女のピアニズムが特に魅力的に聞こえてくるはずだ。 (長井進之介)2018年NHK大河ドラマの音楽を手掛けるのは、邦画でも近年活躍めざましい富貴晴美。下野竜也&N響によるメインテーマは、日本の夜明けのために“SEGO DOOO〜NNN!”と薩摩〜江戸を奔走した西郷隆盛の生涯そのもの(途中に島唄が挿入されるのは2度も島流しの目に遭うからとか…)。激動の時代らしくスコアは全体的にエネルギッシュだが、バグパイプやアイリッシュ・フルートなどが醸し出す(文明開化らしい)異国情緒や〈篤姫〉のテーマにみられる雅な雰囲気なども絶妙。母なる桜島を背景にした子守歌〈我が故郷〉でのサラ・オレインの歌唱にも心掴まれる。続きが楽しみだ! (東端哲也)まさに「ロックのようなベートーヴェン」(久石譲)というコメント通りの精神に貫かれた演奏だ。特に第5番がすごい。馬車馬のような牽引力をもって、アップテンポで前のめりにぐんぐん進む。贅肉をそぎ落としたボクサーのようなステップを踏みながら、ティンパニをはじめとする歯切れ良い打撃を的確にヒットさせる。よくまとまったアンサンブルには弾力もある。第2番は細やかな表情付けを施しながらもう少し落ち着いて進め、ラルゲット(第2楽章)は艶のある音で歌っている。30代を中心に若い実力派を集めたナガノ・チェンバーには久石の解釈はしっくりくるのだろう。気迫を感じる一枚。(江藤光紀)1994年結成のクァルテット・エクセルシオによる、満を持してのベートーヴェン「作品18」全6曲録音は、ベテラン団体ならではの自然体な佇まいと、マンネリに陥らないフレッシュな感興が伝わるアルバムとなった。いつも通りに誠実で端正なスタンス、明るめの音色、チェロを中心とする音づくりに加えて、番号が進むほどに興が乗っていくライヴ的な趣もあり、聴きごたえ十分。とくに第4番以降では枠からはみ出んばかりの推進力や揺れるニュアンスもみせるなど、新たな表現領域も感じさせるのが頼もしいし、それが30歳目前のベートーヴェンの野心と情熱の表出にもつながっている。(林 昌英)
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