eぶらあぼ 2018.4月号
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172ツと、CD録音を行うキングレコード、そして楽譜出版を担う全音楽譜出版社の3社がタッグを組み、各国大使館や国内の自治体、文化団体などとも連携しながら、多方面でプロジェクトを進行させる。山田が音楽監督を務める東混、正指揮者を務める日本フィルハーモニー交響楽団と共に、各国のアンセムをその国の言語で歌うことで、世界への好奇心を拓き、文化的な側面から世界との距離を縮めることを目指す。 すでに昨年11月には、第1弾としてCD『山田和樹 アンセム・プロジェクト Road to 2020』が発売されている。今後は「アメリカ大陸」「大航海時代」など地域やテーマごとに分けて、順次CDが発売されていくという。 この壮大なプロジェクトへの想いを、山田は以下のように述べた。 「世界には大小さまざま200ヵ国ほどの国や地域がありますが、それぞれに事情があります。国民全員が国歌を愛してやまない国もあれば、国歌を変えようとする動きがある国もある。それらを一つひとつ録音していきます。私が音楽的に一番感激したのは、コモロ連合というインド洋に浮かぶ島国の国歌。また、発音が大変なのは覚悟していたのですが、意外にも一番大変だったのは英語。このプロジェクトが終わった時には、東混は世界最強の合唱団になっていると思います!」ジャパン・アーツhttp://www.japanarts.co.jp/■第20回記念 別府アルゲリッチ音楽祭  記者発表 ピアニストのマルタ・アルゲリッチを総監督、同じく伊藤京子を総合プロデューサーに迎えて、大分県別府市で開催されている「別府アルゲリッチ音楽祭」が今年で第20回を迎える。同音楽祭は「育む」「アジア」「創造と発信」を3つの目標に掲げて1998年にスタート。今年は5月6日〜6月8日の開催。 3月1日に都内で行われた会見で挨拶した伊藤は、“本当に人に恵まれてきた音楽祭”とこの20年を振り返った。 「大分には、日本人が初めて西洋音楽に触れ、大友宗麟らが初めて知る宗教や文化を寛容に受け入れたという歴史がある。アルゲリッチとともに作り上げてきたこの音楽祭も、人とともにあり、人が豊かに暮らしていくことを願って続けてきました。第20回を機に、芸術振興のあり方とはどうあるべきかを行政とともに考えながら歩を進めていきたいと思っています」 「ローマから大分への道〜音楽が結ぶもの」をテーマとした今年の音楽祭は、同県出身若手演奏家による公演(5/6)で開幕。注目は「アルゲリッチ Meets ベートーヴェン」と銘打った水戸室内管弦楽団による公演(5/25)。第1部では、ホルン奏者のラデク・バボラークの指揮によりドビュッシー、ミヨーなど。第2部では、小澤征爾(指揮)とアルゲリッチの豪華共演が実現し、ベートーヴェンのピアノ協奏曲第2番が演奏される。また、アルゲリッチが長女リダ・チェン(ヴィオラ)や竹澤恭子(ヴァイオリン)らと共演する室内楽コンサート(5/30)も。また、東京で唯一開催される公演では、チョン・ミョンフン(指揮)が、桐朋学園の現役学生と卒業生で編成したオーケストラを振り、アルゲリッチとプロコフィエフのピアノ協奏曲第3番で共演(5/16)。そのほか、子どものためのコンサートやマスタークラスなども実施される。 12月には、音楽祭初のヨーロッパ公演として、同音楽祭のアドバイザリー・コミッティを務める指揮者のアントニオ・パッパーノが、アルゲリッチやミッシャ・マイスキー(チェロ)らと共演する室内楽コンサートがイタリアのローマで行われる。1557年に日本人が初めて西洋音楽を演奏した地とされ、天正遣欧少年使節をローマに派遣した大分の歴史と、同地で誕生した音楽祭の20年の歩みがもたらした意義を改めて振り返る機会となる。別府アルゲリッチ音楽祭http://www.argerich-mf.jp/■藤倉 大 記者懇談会開催 イギリス在住の作曲家藤倉大が、芸劇ウインド・オーケストラ・アカデミーの公演で自身のテューバ協奏曲が世界初演されるのを前に一時帰国し、3月2日に東京芸術劇場内でメディア向け記者懇談会を行った。 今年秋には、藤倉関連のイベントが3つ予定されている。まず、藤倉がアーティスティック・ディレクターを務める「ボンクリ・フェス 2018」が昨年に続いて東京芸術劇場で開催される(9/24)。テーマ別に実施されるワークショップ・コンサートのほか、メシアン、エトヴェシュ、坂本龍一らの作品や藤倉のチェロ協奏曲(アンサンブル・ヴァージョン日本初演)が演奏されるスペシャル・コンサートも。アンサンブル・ノマド、東京混声合会見から 伊藤京子Photo:I.Sugimura/Tokyo MDE

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