eぶらあぼ 2018.3月号
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66タン・ドゥン(指揮) 新日本フィルハーモニー交響楽団コンサートホールが呪術的な世界に変貌!?文:江藤光紀第585回 定期演奏会 ジェイド〈サントリーホール・シリーズ〉3/17(土)14:00 サントリーホール問 新日本フィル・チケットボックス03-5610-3815 http://www.njp.or.jp/ 昨年もヴェネツィア・ビエンナーレ金獅子賞を受賞するなど、意表を突くアイディアで現代音楽界をリードし続けるタン・ドゥン。作曲のみならず、指揮でも評価が高いが、この3月には新日本フィル定期に登場、自身のタクトで代表作ともいうべきパーカッションとオーケストラの協奏曲“オーガニック3部作”を上演する。 打楽器協奏曲といっても、ここで独奏者たちが叩くのは水や紙、陶器や石器というのだから、やはり一筋縄ではいかない。シャーマニスティックな伝統の残る中国南部の村で幼少期を過ごし、文化大革命を体験したあとニューヨークで西洋音楽を学んだタン・ドゥンの作風は、ものには魂が宿るとするアジアのアニミズム的な世界観を反映している。川の水、木を加工した紙、土を焼いた陶器への働きかけを通じて人間の生の営みが大地と結びつけられる。 すでにスタンダードなレパートリーとして世界中で演奏されている「水」、「紙」の協奏曲に加え、とりわけ今回話題になっているのは、2009年に作曲された「大地の協奏曲」の日本初演だ。99個の石器、陶器とオーケストラのための協奏曲は、マーラーが李白らの詩に付曲した「大地の歌」への応答として書かれた。無数の陶石器がパルスを刻み、焼き物の管楽器が太古の歌を謡うとコンサートホールが呪術的な世界へと変貌する。 すでにタン・ドゥン作品を数多く演奏してきた3名のエキスパート、ベイベイ・ワン、藤井はるか、ジャン・モウがソロに登場する。何気ない素材から彼らが引き出すヒーリング・パワーを全身に浴びて、命の洗濯をしようではないか。タン・ドゥン ©James Salzano3/16(金)19:00 東京芸術劇場 コンサートホール問 ジャパン・アーツぴあ03-5774-3040 http://www.japanarts.co.jp/ 6人のピアニストと5台のピアノが集まるという珍しいコンサートが開催される。3月16日、東京芸術劇場で開かれる「仲道郁代 ピアノ・フェスティヴァル」では、仲道郁代を筆頭に上原彩子、小川典子、金子三勇士、清水和音、萩原麻未の豪華メンバーが一堂に会して、共演を繰り広げる。「大好きなピアノの魅力をさまざまな形で知ってもらいたい。そんな気持ちから『この指とまれ!』と言い出したところ、素敵な5人の方々が集まってくれた」(仲道)。 プログラムの第1部は「2台ピアノの祭典」。萩原麻未と仲道郁代によるラヴェルの「ラ・ヴァルス」や、上原彩子と金子三勇士によるドビュッシーの「小組曲」、小川典子と清水和音によるラフマニノフの「2台ピアノのための組曲第2番」より「ロマンス」「タランテラ」他が演奏される。それぞれのピアニストの組合せからどんな音楽が生まれるのか、大いに興味がわく。 第2部は「5台ピアノの響演」。プログラムにはシャブリエの狂詩曲「スペイン」や、ホルストの組曲「惑星」より「木星」、ワーグナーの楽劇《ニュルンベルクのマイスタージンガー》より第1幕への前奏曲他、多彩な曲目が並ぶ。5台のピアノと6人のピアニストが、ほかでは聴けないゴージャスなサウンドを生み出してくれることだろう。 また、同日にはマスタークラス(15:00 東京芸術劇場シンフォニースペース)が開催されるほか、開演前には6人によるピアニスト・トーク(18:15 ~)も行われる。ピアノがますます好きになる一日になりそうだ。仲道郁代 ピアノ・フェスティヴァルこれでピアノがますます好きになる文:飯尾洋一左より:仲道郁代 ©Kiyotaka Saito/上原彩子 ©K.Miura/小川典子 ©Akira Muto/金子三勇士 ©Ayako Yamamoto/清水和音 ©K.Miura/萩原麻未 ©Akira Muto

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