eぶらあぼ 2018.3月号
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60シュニトケ & ショスタコーヴィチ プロジェクト2―チェンバー・オーケストラ時代に翻弄された作曲家3人の内奥を探る文:林 昌英3/25(日)17:00 トッパンホール問 トッパンホールチケットセンター03-5840-2222 http://www.toppanhall.com/ 独自の視点と問題意識をもって、意欲的な主催公演を企画し続けているトッパンホールによる、今シーズン屈指の挑戦的な公演が「シュニトケ & ショスタコーヴィチ プロジェクト」である。室内楽作品を集めた第1回に続き、第2回は室内オーケストラを中心とした協奏作品——シュニトケの代表作「コンチェルト・グロッソ第1番」と「モーツ-アルト・ア・ラ・ハイドン」、エストニア出身(当時ソヴィエト連邦体制下)のペルトの「タブラ・ラサ」、ショスタコーヴィチのピアノ協奏曲第1番を取り上げる。今はなきソ連を背景として、3人の作曲家たちの複雑な状況と精神が投影された傑作・怪作ばかりだ。 トッパンホール チェンバー・オーケストラ(コンサートマスター:アビゲイル・ヤング)を指揮するのは井上道義。近年のN響や大阪フィルとのショスタコーヴィチは凄まじい名演続きで、諧謔味や遊び心にも長けた井上こそ、ソヴィエト作品を聴きたい指揮者だ。ソリストは第1回に続きヴァイオリンの山根一仁とピアノの北村朋幹が登場。中学3年にしてショスタコーヴィチの協奏曲の壮絶な演奏で2010年日本音楽コンクールを制した山根は、今回はシュニトケとペルトの3作品のソロで、内奥のメッセージを抉り出す。古楽から現代作まで研ぎ澄まされた解釈を見せる北村は、シュニトケ「コンチェルト~」とペルト作品でプリペアード・ピアノ(前者ではチェンバロも兼任)を操り、ショスタコーヴィチの快作では井上の指揮ぶりと共に抱腹のフィナーレで会場を沸かせる。井上道義シルヴァン・カンブルラン(指揮) 読売日本交響楽団お気に入りのラモー作品と古典派の名作を披露文:飯尾洋一第206回 土曜マチネーシリーズ 4/7(土)14:00 東京芸術劇場 コンサートホール第206回 日曜マチネーシリーズ 4/8(日)14:00 東京芸術劇場 コンサートホール問 読響チケットセンター0570-00-4390 http://yomikyo.or.jp/ 読響の2018/19シーズンが4月よりスタートする。これまで数々の名演を聴かせてくれたシルヴァン・カンブルランが、常任指揮者として最後のシーズンを迎えるとあって、いっそうの注目が集まりそうだ。 そのカンブルランが「土曜/日曜マチネーシリーズ」で最初に取り上げるのは、フランス・バロックとウィーン古典派を組み合わせたプログラム。ラモーの歌劇《ダルダニュス》組曲より、モーツァルトのヴァイオリン協奏曲第5番「トルコ風」(独奏は佐藤俊介)、そしてベートーヴェンの交響曲第7番。今季は3期9年にわたる集大成として、マエストロにとって特別に大切なレパートリーが選ばれているのだろう。各国各時代を代表するような名曲が数多く並んでいる。 カンブルランと読響のラモーといえば、以前《カストールとポリュックス》組曲で愉悦にあふれた快演を披露してくれたのを思い出す。ラモーの音楽が持つ“臆面もない楽しさ”を味わいたいもの。 モーツァルトでソロを弾く佐藤俊介は、コンチェルト・ケルンおよびオランダ・バッハ協会のコンサートマスターを務める気鋭。モダン・ヴァイオリンとバロック・ヴァイオリンの両方を自在に操る新時代の才人である。カンブルランとの共演で、どんなモーツァルトを聴かせてくれるのか、興味津々。 ベートーヴェンの交響曲第7番は王道の名曲であるが、カンブルランの手にかかれば新鮮な喜びをもたらしてくれるはず。エキサイティングかつスタイリッシュなベートーヴェンを期待したい。佐藤俊介 ©Yat Ho Tsang北村朋幹 ©TAKUMI JUN山根一仁 ©K.MIURAシルヴァン・カンブルラン
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