eぶらあぼ 2018.3月号
62/211

59マレイ・ペライア(ピアノ)進化と深化を遂げた至高のピアニズム文:伊熊よし子3/23(金)19:00 サントリーホール問 ジャパン・アーツぴあ03-5774-3040 http://www.japanarts.co.jp/他公演 3/21(水・祝)彩の国さいたま芸術劇場 音楽ホール(完売)    3/25(日)水戸芸術館(029-231-8000) マレイ・ペライアのリサイタルは、常に深い感動が胸に残る。こだわりのプログラムは、楽譜の裏側まで読み込み、徹底的に磨き抜いたもの。来日ごとに進化と深化を示し、終演後は聴衆が総立ちになって演奏を称える。彼はレパートリーを広げる際、自己のペースを守り、けっして無理はしない。現在の自分に合う作品を選び、完璧な形でステージに乗せる。 今回はJ.S.バッハの「フランス組曲第6番」で幕開け。ピアニストはバッハを演奏するとき古楽器の響きを強く意識する人が多いが、ペライアは現代のピアノの響きを存分に考慮し、ペダルも工夫して楽器全体を豊かにうたわせる。バッハはペライアが指の故障でピアノが弾けなかった時期に、じっくり楽譜と対峙した作品。それゆえ、深い精神性に根差した演奏を聴くことができる。 シューベルトでは、ペライアならではのリリカルな音色と豊かな歌謡性が発揮されるのではないだろうか。そしてモーツァルトにおいては、躍動感あふれるリズム表現とピュアな響きが横溢するに違いない。 リサイタルの締めくくりには、いまや巨匠と称されるようになったペライアの深遠かつドラマティックでスケールの大きなベートーヴェンをたっぷり聴くことができる。ピアノ・ソナタ第32番は、ベートーヴェンのピアノ音楽の集大成ともいえる特性を備えている次元の高い作品、ペライアの底力が示される。なんとぜいたくなプログラムだろうか。©Felix Broede/DGマーク・ウィグルスワース(指揮) 東京交響楽団英国の名匠と旬のヴァイオリニストが共演!文:山田治生第658回 定期演奏会 3/31(土)18:00 サントリーホール問 TOKYO SYMPHONY チケットセンター044-520-1511 http://tokyosymphony.jp/ マーク・ウィグルスワースが4年ぶりに東京交響楽団の定期演奏会に登場する。コンサートとオペラの両方で活躍する1964年生まれのイギリスの名匠は、今回、ブルックナーの交響曲第4番「ロマンティック」を取り上げる。注目は、第3稿といわれる、1888年稿(2004年コーストヴェット校訂版)の使用。この稿は、オスモ・ヴァンスカ&ミネソタ管のディスクなどで聴くことができるが、まだまだコンサートで取り上げられることは稀であり、通常演奏されている第2稿との構成や管弦楽法の違いを、今回東響の演奏で確かめられるのはとても興味深い。ウィグルスワースは、ディスクではBISでの一連のショスタコーヴィチの交響曲の録音が知られているが、東響とは10年にブラームスの交響曲第2番、14年にフリーハー編曲による《ニーベルングの指環》(管弦楽抜粋版)で好評を博するなど、ドイツ・ロマン派音楽でも定評がある。ジョナサン・ノットとブルックナーの名演を続けている東響だけに、ウィグルスワースとの演奏も期待される。 演奏会の前半にもイギリスから気鋭のヴァイオリニストが招かれる。ジェニファー・パイクは1989年生まれ。12歳でBBCヤング・ミュージシャン・オブ・ザ・イヤーの最年少受賞者となり、15歳でBBCプロムスやウィグモア・ホールにデビューした才媛。今回、彼女は、ディスクでもアンドルー・デイヴィス&ベルゲン・フィルとの録音を残すシベリウスのヴァイオリン協奏曲を披露する。ジェニファー・パイク ©Tom Barnesマーク・ウィグルスワース ©Ben Ealovega

元のページ  ../index.html#62

このブックを見る