eぶらあぼ 2018.3月号
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54狂言風オペラ 《フィガロの結婚》3/19(月)14:00 18:00、3/20(火)15:00 19:00 観世能楽堂(GINZA SIX内)問 ミュージック・マスターズ03-3560-67653/22(木)18:30 京都府立けいはんなホール 3/23(金)18:30 大阪/いずみホール問 ヴォイシング06-6451-6263藤田六ろくろびょうえ郎兵衛(能楽笛方)能舞台で繰り広げられる《フィガロの結婚》取材・文:大村 務Interview 2002年にスタートした茂山千之丞演出の「狂言風オペラ」。オペラといっても歌手は登場せず、アリアは歌われない。出演は大蔵流狂言の茂山一門。演奏は管楽合奏、いわゆるハルモニームジークが担当し、これまでにモーツァルトの四大オペラを国内外で上演してきた。 茂山千之丞亡き後も企画は引き継がれ、今年、芸術監督に観世流シテ方で人間国宝の大槻文蔵を迎え、能楽笛方藤田流宗家の藤田六郎兵衛が演出を担当する、新しい狂言風オペラ《フィガロの結婚》が誕生する。今回の上演は、史上初の能と狂言、文楽のコラボレーションという画期的な試み。殿様(伯爵)は文楽人形が演じ、三代桐竹勘十郎が操る。そして声は六代豊竹呂太夫。奥方(伯爵夫人)は観世流シテ方の赤松禎友が演じ、その他は狂言方が勤める。音楽はスイスから初来日するクラングアート アンサンブル(管楽八重奏)が担当する。脚本・演出を手がけた藤田六郎兵衛に聞いた。 「殿様がお花(スザンナ)に迫るところなど、人形だと結構ベタベタしてもいやらしくならない。また、太夫の語りは殿様のセリフだけでなく情景描写もするので、とても面白い世界になると思います。能、狂言、義太夫という三芸能の日本語を伝えるために数百年前から伝わってきた発声、言葉の扱いが、舞台で入り乱れます。さらに、三味線の鶴澤友之助さんが演奏に参加します。彼はコントラバスで音大を目指していたのに縁あって文楽三味線の世界に入った人です。西洋音楽を知っている彼には、有名なアリアも太棹で弾いてもらうつもりです」 6歳の時にすでにプロの笛方として舞台に立っていた藤田だが、一方で高校・大学と声楽を専攻し、卒業後母校で5年間オペラ研究授業の助手を務めていた。その間に体験したオペラやミュージカルの舞台経験が今回の舞台に役に立ったという。 「私は四百年以上続く笛の家に生まれ、4歳から笛の稽古を受け、5歳から舞台活動してきました。高校から受けた声楽という西洋音楽の専門教育は新たな知識の吸収でした。この時間差があったので東の音、西の音の整理が自身の中でできたのでしょう」 東京公演の会場は話題のGINZA SIX内に移築されてきた観世能楽堂。 「まず建物の中に入って、正面に屋根が載った舞台に圧倒されるでしょう。能舞台が屋外に建っていた名残りです。すべてが木造で、正面に松の書かれた鏡板、向かって左に出入りの幕が付いた廊下様な橋掛かり。その舞台を囲むように配列された客席。これが日本独自の劇場です。今回、貴族という権力者と平民との対立を、人間愛をもって平等とするという、《フィガロの結婚》の大きなテーマを、そのまま舞台で表現する、そんな脚本が書けたと思っています」東京オペラシティ Bビートゥーシー→C ウェールズ弦楽四重奏団シリーズの壮大なテーマを感じさせるプログラミング文:林 昌英 「バッハからコンテンポラリーへ」とテーマを掲げ、若き実力派日本人奏者たちがバッハから広がる無限のイメージと多彩な現代作を紹介してきた、東京オペラシティの「B→C」シリーズが、ついに200回目を迎える。その節目の出演者はウェールズ弦楽四重奏団。2006年結成、08年にはミュンヘンARD国際音楽コンクール第3位受賞。精密かつ誠実な音楽づくりで評価と人気を獲得し、いまや若手団体の代表的存在である。 前半は彼らが“弦楽四重奏の歴史の出発点の一つ”と語るハイドンの第1番「狩」から、ウェーベルン「6つのバ3/13(火)19:00 東京オペラシティ リサイタルホール問 東京オペラシティチケットセンター 03-5353-9999http://www.operacity.jp/©Satoshi Oonoガテル」の無調の世界、“雅楽に通じる美を感じる”猿谷紀郎の「アイテールの貪欲」へ。後半は“ロマン派への扉”シューベルトの第12番(断章)に、 “弦楽四重奏によって編曲なしで演奏可能な唯一のバッハ作品”「フーガの技法」より最初の4曲。最後は10年作の藤倉大の第2番「フレア」。“キャンプファイヤーを囲んで座り、炎が空に昇る様子を見ている”という楽しいイメージながら、“超”の付く難曲だ。バッハから現代の到達点まで一気に体感できるプログラムで、「B→C」の壮大なテーマを改めて噛みしめたい。©友澤綾乃
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