eぶらあぼ 2018.3月号
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49井上道義(指揮) オーケストラ・アンサンブル金沢ファイナルもウィットに富んだ選曲で文:笹田和人第401回 定期公演 フィルハーモニー・シリーズ 3/17(土)14:00 石川県立音楽堂 コンサートホール問 石川県立音楽堂チケットボックス076-232-8632第34回 東京定期公演 3/19(月)19:00 サントリーホール 問 サントリーホールチケットセンター0570-55-0017http://www.oek.jp/ 10年間の“集大成”となる、鮮烈な響きを体感しておきたい。2007年の音楽監督就任以来、オーケストラ・アンサンブル金沢(OEK)の音楽性を磨き上げてきた名匠・井上道義が、この3月をもって退任することに。ハイドン初期の名交響曲とプーランクの佳品という、いかにも井上らしい、ひと捻り効いたプログラムを携え、地元での最後の定期と東京定期公演に臨む。 1988年の楽団創設より初代音楽監督を務めた岩城宏之から、OEKを引き継いだ井上。岩城の遺志でもあった現代作品を大切にしつつ、アンサンブル力を高めることで、古典のレパートリーもいっそう深化させた。自身の咽頭がん闘病という困難も乗り越え、OEKは見事に現代的なセンスあふれる楽団へと変貌。そんな井上が、さらなる成長を信じ、OEKのタクトを後任のマルク・ミンコフスキへ託す。 井上が“最後”に選んだのは、ハイドンの交響曲第6~8番「朝」「昼」「晩」。エステルハージ宮廷楽団の副楽長を務めていた29歳のハイドンによる標題作品は、協奏交響曲の趣で各パートの独奏箇所も多く、瑞々しい魅力に溢れる。時に楽員の自主性を引き出すかのような井上の音楽創りには、いかにも相応しい。 これに先立ち、ソリストにピアノの反田恭平を迎えて、“朝つながり”で、プーランクのピアノと18の楽器のための舞踊協奏曲「オーバード(朝の歌)」を。自在な活躍ぶりで、若くして鬼才と称される反田だけに、“新旧の鬼才”のぶつかり合いも楽しみ。きっと経験したことのない、刺激的なサウンドが生まれるはずだ。井上道義第10回 浜松国際ピアノコンクール開催記念 ガラ・コンサート覇者たちによるコンチェルトの饗宴世界へと羽ばたいた6人による協奏曲三昧の2日間文:高坂はる香9/16(日)、9/17(月・祝)各日14:00 アクトシティ浜松セット券:3/11(日) 単券:4/15(日)発売問 浜松国際ピアノコンクール事務局053-451-1148 http://www.hipic.jp/ 1991年にスタートし、今年11月の開催で第10回を迎える浜松国際ピアノコンクール。優勝者がその後飛躍を遂げるケースが多く、その実績は、話題となった恩田陸の小説『蜜蜂と遠雷』執筆のきっかけにもなったといわれるほどだ。 今回は特別な節目となる開催ということで、過去の覇者から6人のピアニストが浜松に集結。ベテラン指揮者の山下一史、コンクール本選の演奏でおなじみの東京交響楽団とともに、2日間にわたり6つのピアノ協奏曲を演奏する。 初日はまず、第5回最高位のアレクサンダー・コブリンから。ヴァン・クライバーン・コンクールの覇者でもある彼は、知的で深い音楽性が生かされるブラームスの2番を弾く。前回優勝のアレクサンダー・ガジェヴが若さとエネルギーをもって演奏するのは、ラフマニノフの3番。アレッシオ・バックス(第3回優勝)はチャイコフスキーの1番で、約20年を経て成熟した音楽を聴かせる。 2日目はアレクセイ・ゴルラッチ(第6回優勝)から。その後ダブリンやミュンヘンで優勝した彼も今年30歳。演奏するのはベートーヴェンの「皇帝」だ。イリヤ・ラシュコフスキー(第8回優勝)はブラームス1番。聴衆を圧倒したコンクール時のプロコフィエフとは別の魅力が発揮されるだろう。また、当時の中村紘子審査委員長が“20世紀後半最高の16歳”と評したアレクサンダー・ガヴリリュク(第4回優勝)は、ラフマニノフの2番で高い技巧と深い音楽性を披露する。 彼らの優勝当時を知る人にとっては、変貌ぶりを聴く絶好の機会。同コンクールでの成功が、いかに若いピアニストの背中を押しているかを知ることにもなりそうだ。反田恭平 ©Andrea Monachelloアレッシオ・バックス ©Lisa Marie Mazzuccoアレクサンダー・ガヴリリュク ©Mika Bovanアレクサンダー・コブリンアレクセイ・ゴルラッチ ©Monika Lawrenzイリヤ・ラシュコフスキーアレクサンダー・ガジェヴ
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