eぶらあぼ 2018.3月号
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200 今号からこの誌面をお借りして、私たちOTTAVAのことをいろいろな面からお伝えできればと思っておりますが、単なる宣伝になっても申し訳ないので、私たちが出会ってきた、そして出会いつつある魅力的な音楽や話題をお届けすることにしました。どうぞお付き合いください。 ヒットチャートに興味をお持ちになったことはありますか?「大衆音楽に興味なし!」という方でもAKB48、乃木坂46、ジャニーズ事務所のアーティスト達などの名前はご存知でしょう。こうしたキラ星のごとき名前が並ぶヒットチャートに、ある日、貴方の大好きな「交響曲第○番」や「協奏曲第×番」が顔を出したら? 悪い気はしないと思うのです。「快挙」というコトバは「胸がすっとする行為、出来事」という意味を持っていますが、そんなクラシックファンにとって「すっとする」快挙な出来事が1992年のイギリスで起こりました。 近現代ポーランドの作曲家ヘンリク・グレツキ(1933- 2010)が作曲した大曲、交響曲第3番「悲歌のシンフォニー」が、イギリスの総合チャートで第6位を記録するという珍事が発生! ちなみにこの時、トップ10にランクインしていた他の楽曲は、マドンナ、スティング、U2、ホイットニー・ヒューストン…といった、この時代をリードしていたスターたちによるものですから、文字通りの快挙。 この快挙を産み出した仕掛け役こそ、その年の夏にロンドンで誕生した、私たちOTTAVAの“師匠”でもあるラジオ局「Classic FM」だったといわれています。イギリスにはもともと「BBC Radio3」というクラシック専門局があったのですが、後発の「Classic FM」はこ斎藤 茂 Profile北海道札幌市出身。音楽番組のプロデューサーとして東京のFM放送局勤務後、独立。現在は番組、音楽、コンサートなどの制作に携わる。2007年開局と同時にOTTAVAのミュージック・ディレクター、2014年ゼネラルマネージャに就任。の“横綱”相手に、今までどのクラシック・メディアも考えつかなかった、型破りなスタイルを武器に開局したのです。同局のポリシーは「楽曲はすべて楽章単位で選曲」「長い楽曲は抜粋(いいとこ取り)で」「曲と曲は合間をおかずにトントントンと流す」「曲紹介はするが演奏家は紹介しない」といったもの。 当時のラジオは、丁寧な解説に続き交響曲全曲が延々流れるのが普通でしたから、これには賛否両論、大騒動となりました。「Classic FM」の新しさは他にも「料理研究家、心理学者、法律家といったクラシック畑以外の人材をDJに起用」「サイモン・ラトルやアンナ・ネトレプコがゲストではなくDJとして番組を担当」「クラシックチャートのカウントダウン番組を放送」など…。こうした斬新なスタイルは瞬く間にイギリス全土で人気を博し、クラシック・ラジオ局の“新横綱”として君臨することとなったのです。 グレツキの「悲歌のシンフォニー」は、この「Classic FM」のパワープレイ(1日に何度も同じ楽曲を流すこと)により、クラシックチャートばかりか、ナショナルチャートをも駆け上がりました。参考までにこの時パワープレイされていたのは、ゲシュタポ収容所の壁に残されていた言葉をソプラノが歌うおよそ20分に及ぶこの交響曲の第2楽章を4分に編集した「ショートバージョン」。デイヴィッド・ジンマン指揮ロンドン・シンフォニエッタ、ソプラノはドーン・アップショウの演奏です。文:斎藤 茂(OTTAVA)「悲歌のシンフォニー」すべてはこの曲から始まったVol.1◎OTTAVAとは2007年に開局した24時間無料でクラシック音楽が楽しめる国内唯一のインターネット・ラジオ局。リスナーは全世界で100万人以上。パソコンやスマートフォン、タブレットで、いつでもどこでもクラシック音楽が聴ける。OTTAVA検索コンテンポラリー・クラシック・ステーションへようこそ!オッターヴァ無料でインターネットで聴ける!新連載
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