eぶらあぼ 2018.3月号
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192SACDSACDCDCDブルックナー:交響曲第9番、武満 徹:セレモニアル/佐渡 裕&トーンキュンストラー管グラナドス:ピアノ組曲「ゴイェスカス」―恋するマホたち―/アブデル=ラーマン・エル=バシャジュピター/アレキサンダー・ホルン・アンサンブル・ジャパン愛、天才の神髄 ~モーツァルト&ベートーヴェンの管弦楽~/デムチシン&ベートーヴェン・シンフォニエッタブルックナー:交響曲第9番武満 徹:笙と管弦楽のための「セレモニアル -An Autumn Ode-」佐渡 裕(指揮)宮田まゆみ(笙)トーンキュンストラー管弦楽団グラナドス:ピアノ組曲「ゴイェスカス」―恋するマホたち―、スペイン舞曲集よりアブデル=ラーマン・エル=バシャ(ピアノ)ワーグナー:ジークフリートのラインへの旅/ホルスト:木星/モーツァルト:《フィガロの結婚》序曲/ターナー:ダブリンの幽霊/ボザ:森にて/パーキンス:4本のホルンのための協奏曲アレキサンダー・ホルン・アンサンブル・ジャパン安藤芳広(ティンパニ)モーツァルト:クラリネット協奏曲、交響曲第29番/ベートーヴェン:ヴァイオリンと管弦楽のためのロマンス第2番タラス・デムチシン(バセットクラリネット/指揮)武内麻美(ヴァイオリン)ベートーヴェン・シンフォニエッタ収録:2017年5月、ウィーン(ライヴ)エイベックス・クラシックスAVCL-25951 ¥2500+税オクタヴィア・レコードOVCT-00141 ¥3200+税マイスター・ミュージックMM-4027 ¥3000+税収録:2016年11月、なみきスクエア東市民センター(ライヴ)コジマ録音ALCD-3113 ¥2800+税「ロマンティック」に続くこのコンビのブルックナー第2弾は、見事に統率された第9番。金管が渋く目の詰まった響きを持ち、ジューシーで粘り気のある弦がそれをコーティングしている。心地よいサウンド・バランスは、収録されたムジークフェラインの響きの特性もよくつかんでいるのだろう。方向付けのはっきりした音楽運びには安定感があり、旋律を伸びやかに歌わせ、ほんのりと色づかせている。第3楽章では緊張からの解放の道のりを説得的に描き出した。未完の交響曲を天界に導くように収めて、空の彼方から降ってくるような笙の響きの「セレモニアル」へつなげたのも気の利いたアイディアだ。(江藤光紀)レバノン出身の巨匠エル=バシャの新譜はグラナドスの作品集。ピアノ組曲「ゴイェスカス―恋するマホたち―」は、ゴージャスかつ人間味に溢れた演奏。スペインの民族的なリズム表現や、グラナドスらしい込み入ったハーモニーも、エル=バシャの端正なピアニズムによって、どこか大人の恋を思わせるような上品さを失わない。グラナドスの名作「スペイン舞曲集」からは「オリエンタル」「ビリャネスカ」「アンダルーサ」の3曲を抜粋。哀愁・喜び・情熱のコントラストを感じさせる選曲だが、エル=バシャはそれぞれに渋みと深みをも纏わせている。    (飯田有抄)アレキサンダー社のホルンを愛奏する在京オーケストラ・メンバー10名(本作は11名参加)によって1999年に結成されたアンサンブルの初アルバム。2004年録音のリマスタリングによる再登場である。内容はクラシック名曲とホルン作品が半々で、10、8、5、4重奏と徐々に絞られていく構成。編曲物では、「木星」の同楽器以外の部分や《フィガロの結婚》の機動力が聴きものだが、やはりオリジナル曲の充実度が高い。特に楽器の特性を生かした委嘱作「ダブリンの幽霊」は聴き応え十分。リマスタリングで鮮度を増した豊麗かつナチュラルな響きも特筆される。(柴田克彦)九州交響楽団首席クラリネット奏者のタラス・デムチシンが、「モーツァルトにとって愛を意味する調」と語るイ長調の2名作ほかを、自身が指揮者となり2014年に創設したベートーヴェン・シンフォニエッタと共にライヴ収録した。協奏曲はバセットクラリネットによる吹き振りで丁寧な好演を実現。ソロは強音でもオケから浮かずに一体化する表現を保ち、ニュアンスは実に豊かで味わい深い。指揮者としての音づくりも繊細で、モティーフごとにバランスをとり、モーツァルトの喜びを表現していく。結成から短期間ながらデムチシンの意図は浸透しており、今後の活躍も楽しみなコンビだ。(林 昌英)

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