eぶらあぼ 2018.3月号
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188CDCDCDCDベートーヴェン:スプリング・ソナタ/鈴木愛理シュール・サクソフォニズム サクソフォン・クァルテット作品集/福井健太優ゆうか歌~そばにいるうた、よりそううた/幸田浩子テレマン:小室内楽曲集(6つのパルティータ)/トーマス・インデアミューレ&クラウディオ・ブリツィベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ第5番「スプリング」/ストラヴィンスキー(S.ドゥシュキン編):ディヴェルティメント/R.シュトラウス:ヴァイオリン・ソナタ鈴木愛理(ヴァイオリン)ボリス・クスネツォフ(ピアノ)平野義久:サン・ナルシソ・カプリッチオ、リベラル・ダンス/ショスタコーヴィチ(岡出莉菜編):前奏曲とフーガop.87-15/ペルト:スンマ、フラトレス/アンドリーセン:フェイシング・デス福井健太(ソプラノ・サクソフォン) 田中拓也(アルト・サクソフォン) 本堂 誠(テナー・サクソフォン) 塩塚 純(バリトン・サクソフォン)マシコタツロウ:ハナミズキ/中村正人:LOVE LOVE LOVE/さだまさし:奇跡~大きな愛のように~/谷村新司:いい日旅立ち/中島みゆき:糸/池田綾子:明日への手紙/荒井由実:翳りゆく部屋 他幸田浩子(ソプラノ) 内門卓也 藤満 健 Momo(以上ピアノ) 西江辰郎(ヴァイオリン) 脇屋冴子(ヴィオラ) 川上 徹(チェロ) 大萩康司(ギター) 他テレマン:パルティータ第1番~第6番TWV41トーマス・インデアミューレ(オーボエ)クラウディオ・ブリツィ(クラヴィオルガン)オクタヴィア・レコードOVCL-00654 ¥3000+税録音研究室(レック・ラボ)NIKU-9013 ¥2800+税日本コロムビアCOCQ-85388 ¥3000+税カメラータ・トウキョウCMCD-28355 ¥2800+税ヴァイオリニストの「デビュー盤」でこれほど唸らされたのはいつ以来だろうか? ベートーヴェンは清新な音色かつ芯の強い、筋の通った好演。ストラヴィンスキーは誠実にして妙技やエンターテインメント性も十分な快演。シュトラウスは雄大な歌いまわしにピアノの巧さも相まって、出色の華麗さと高揚感がある。技術、表現の安定感も抜群。2010年からドイツ在住、17年秋にハノーファーの北ドイツ放送フィル副コンマス就任ということで、なるほど、経験豊かな実力者による満を持しての「デビュー盤」なのかと納得。ヴァイオリンの鈴木愛理。今後その名を見る機会は増え続けるに違いない。(林 昌英)ジャズマン、スタジオ・ミュージシャンとして売れっ子の福井健太を現代音楽の世界に引き戻したのは、劇伴で数多のヒット作を持つ作曲家の平野義久。いとも易々とジャンルを越境する彼らならではの、抜群にクールでクレイジーなアルバムだ。木管の機能性と金管のパワーを併せ持つサックス四重奏の破壊力を存分に引き出した平野作品のハイテンションぶりには、またしても度肝を抜かれた。ショスタコーヴィチの風刺やアンドリーセンのグルーヴ感も、彼らの手にかかるとエキサイティングを通り越してヴァイオレンス臭すら帯びてくる。合間にさりげなく挟まれたペルト作品が一服の清涼感を生んでいる。(江藤光紀)欧州の名門歌劇場にも認められた輝かしい歌声の持ち主で、2018年も《魔笛》のパミーナをはじめ、多数の公演に出演予定の人気ソプラノが初めてJ-POPの名曲カヴァーに挑戦。「翳りゆく部屋」や「いい日旅立ち」ら懐かしの70年代から、ドラマの主題歌に起用され反響を呼んだ「明日への手紙」まで、彼女らしい気品をたたえた歌唱が曲の世界に奥行きを与えている。ギター1本から弦楽五重奏まで、どのセッションも魅力的だが3人のピアニストがそれぞれ編曲&演奏を担当したものが印象的。本企画のきっかけになった中島みゆき「糸」の後半部分にも聴き処が。 (東端哲也)「12の幻想曲」に続く、インデアミューレによるテレマン録音。世界的な名手は、フレージングや拍節感など、バロックに特有の語法をかっちり踏まえる一方、発音の明瞭さや機動力など、モダン楽器ならではの利点を存分に活かす。特に、長い音符の吹き伸ばしでの、繊細なニュアンス付けには魅了される。一方、ブリツィが駆るのは、チェンバロとオルガンの複合楽器クラヴィオルガン。2つの音色が同時に聴こえるだけでなく、多彩なレジストレーション、何より流麗なプレイが相まって、たった2人で演じているとは思えぬ立体感と奥行きを感じさせる。 (寺西 肇)

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