eぶらあぼ 2018.3月号
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186DVDBOOKCDCDCDJ.S.バッハ:無伴奏ヴァイオリン・ソナタとパルティータ BWV1004-1006/川田知子ベートーヴェン:「悲愴」「月光」「熱情」/辻井伸行東 敦子 蝶々夫人三文オペラ/ブラスアンサンブル・ゼロ&イエルーン・ベルワルツJ.S.バッハ:パルティータ第2番・第3番、ソナタ第3番川田知子(ヴァイオリン)ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第8番「悲愴」・第14番「月光」・第23番「熱情」辻井伸行(ピアノ)プッチーニ:歌劇《蝶々夫人》青山圭男(演出) アルジェオ・クワドリ(指揮) 東 敦子(ソプラノ) ルチアーノ・サルダーリ(テノール) ヴォルフガング・アンハイザー(バリトン) 二期会合唱団 東京フィルハーモニー交響楽団 他ビョーク(J.アグナス編):『ダンサー・イン・ザ・ダーク』序曲/T.ブロストレム:遠き地平線/ロータ(S.V.ヘッケ編):『道』より主題曲「ジェルソミーナ」/ヴァイル(S.ヴェルハート編):『三文オペラ』より 他イエルーン・ベルワルツ(指揮/トランペット/フリューゲルホルン)ブラスアンサンブル・ゼロ 他マイスター・ミュージックMM-4026 ¥3000+税エイベックス・クラシックスAVCL-25950 ¥3000+税収録:1973年4月16日 東京文化会館(ライヴ)NBS(日本舞台芸術振興会)UI201701 ¥3703+税問 NBSチケットセンター03-3791-8888日本アコースティックレコーズNARD-6008 ¥3000+税名演だ。国際的に活躍する名手・川田知子が、“ヴァイオリニストの聖典”に対峙した録音の完結編。この傑作が要求するのは、音が鳴り続けなくとも、ポリフォニーを“暗示”すること。そのためには、拍節感とフレージングの均衡を取り、ボウイングを司る右手の技巧に重きを置き、音楽を形創らねばならない。これが難曲たる真の所以なのだが、川田はヴィブラートやアーティキュレーションの扱いに古楽の成果を採り入れつつ、伸びの良いモダン楽器の美点も最大限に引き出して、“現代のバッハ像”を現出。出版譜からは読み取れぬ微細なニュアンス付けもなされ、自筆譜の精査がしのばれる。(寺西 肇)辻井伸行のベートーヴェンの三大ソナタ「悲愴」「月光」「熱情」のアルバムがついに生まれた。抑制を効かせたテンポ設定、立体的に浮き上がる声部ごとの音色変化、音型の輪郭をしっかりと伝える個々の音価の設定など、極めて緻密に音楽が作られていく。なおかつ流れに淀みはない。同音連打や一瞬の休符などにも詩情をもたせ、ひたひたと溜められていくエネルギーが強い。とりわけ「月光」の第1楽章は、冒頭の数音からすでに蓄積された念を感じさせ、「熱情」の第3楽章に現れるアルペジオは一瞬の閃光を放つ。ベルリンのスタジオで録音された入魂の一枚だ。 (飯田有抄)1960年代から80年代にかけて、ウィーン国立歌劇場やメトロポリタン歌劇場など超一流の舞台で蝶々さんを演じて大活躍した東敦子。その凱旋公演として企画された73年4月、東京文化会館での《蝶々夫人》の映像が44年ぶりに発見されDVD化された。指揮はイタリア・オペラを知り尽くしたアルジェオ・クワドリ、演出はMETでも活躍した青山圭男、ピンカートンにルチアーノ・サルダーリを迎えたベスト・キャスト。東は美しいベルカントの声を生かし、1幕は可愛くリリックに、2幕はドラマティックに、凛とした蝶々さんを演じていて見事。細やかな所作の美しさ、表情や演技力にも魅了される。(石戸谷結子)若き凄腕・金管奏者集団が昨年、映画音楽の世界に開眼。そのきっかけはベルギーが生んだ世界的トランペット奏者、ベルワルツとの共演だった。音楽院でジャズ・ヴォーカルも学び、多彩なコラボを展開する彼のセンスによって、どの楽曲も映像と物語の世界を音の中から浮かび上がらせている。『ダンサー・イン・ザ・ダーク』序曲のフリューゲルホルンや『道』主題曲の印象的なトランペットなど、彼のソロ演奏に耳を奪われるが、全体の迫力あるアンサンブルの妙も素晴らしい。スウェーデンの現代作曲家ブロストレム作品の世界初録音やタイトル曲も良いアクセントに。 (東端哲也)
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