eぶらあぼ 2018.2月号
71/195

68デビューCDリリース記念鈴木愛理 ヴァイオリン・リサイタル3/9(金)19:00 浜離宮朝日ホール問 アスペン03-5467-0081 http://www.aspen.jp/他公演 3/8(木)名古屋/宗次ホール(052-265-1718)CD『ベートーヴェン、ストラヴィンスキー、R.シュトラウス/鈴木愛理』オクタヴィア・レコードOVCL-00654 ¥3000+税1/24(水)発売©Satoshi Oono鈴木愛理(ヴァイオリン)ドイツで磨かれた音色がいま煌めく取材・文:飯田有抄Interview 国際コンクール上位入賞という、ある種わかりやすいタイミングでCDデビューを果たすアーティストは少なくないが、鈴木愛理は「自分が『今だ!』と思える時期に録音を出したかった」と語る。 5年に1度開かれるヴィエニャフスキ国際コンクールはヴァイオリニストにとっての登竜門。第2位に輝いたとき、鈴木はまだ高校2年生だった。 「初めて“世界”を見た気がしました。そして音楽の本場ヨーロッパで勉強を深めたいという気持ちが高まり、すぐにでも行きたい気持ちに駆られました」 桐朋学園大学に特待生として入学後、3年生の時にハノーファーへ留学。現在も活動の拠点を置いている。昨年秋からは、ハノーファー北ドイツ放送フィルハーモニー管弦楽団の副コンサートマスターとしても活動をスタート。 「音楽家としての視野を広げたいと思い、オーディションを受けました。オーケストラでの演奏は指揮者、隣のコンサートマスター、管打楽器とのアンサンブルなどに神経を行き届かせるので、すごく頭を使いますし集中力が必要です。ソロだけでは見えなかった作曲家の多面的な世界に出会えています」 そんな7年の研鑽を積み、ロイヤル・バンコク響や東京シティ・フィルとの共演(1/27・よこすか芸術劇場)(ともにメンデルスゾーンの協奏曲)など、ソリストとしても充実した活動を展開している鈴木にとって、今こそデビュー盤を出すタイミングだった。 「収録したい曲が多くありすぎて迷いましたが、大好きなドイツもののソナタはしっかり入れたいと思い、ベートーヴェンの第5番『春』と、R.シュトラウスを選曲。シュトラウスはオペラ作曲家だけに、ソナタもまるで歌うようなフレーズに満ちています。そして、あまり録音の多くない作品ですが、ストラヴィンスキーのバレエ音楽『妖精の口づけ』によるディヴェルティメントのヴァイオリン編曲版を収録しています。初の経験となるレコーディングでしたが、マイクを前に、ピアニッシモは弓の毛2本で奏でるような気持ちで、繊細に表現することに努めました」 伸びやかで力強くも、繊細に煌めく。そんな鈴木の音楽性を存分に伝える録音だが、浜離宮朝日ホールでのデビューCDリリース記念のリサイタルでは、その魅力をダイレクトに伝えてくれることだろう。公演では、録音でも共演したボリス・クスネツォフがピアノを務める。 「生演奏ではより大胆に音楽を展開できると思います。華やかなパフォーマンスを楽しんでいただけるグリーグのソナタ第3番、そしてショスタコーヴィチの小さな前奏曲も聴いていただきます」 宗次コレクションより貸与された1752年製のJ.B.グァダニーニの名器とともに、鈴木の芸術が大きく花開く瞬間を、お聴き逃しなく。2/5(月)19:00 東京文化会館(小)問 ヒラサ・オフィス03-5429-2399http://www.hirasaoffice06.com/長岡京室内アンサンブル 第9集CD発売記念奏者が互いに呼吸を感じとる唯一無二の合奏力文:江藤光紀©Tatsuo Sasaki 長岡京という日本古来の伝統の息づく地域に根差しながら、若い音楽家を結集し一流の室内楽団を作る——ヨーロッパで活躍していたヴァイオリニスト・森悠子の夢が長岡京室内アンサンブルとして結晶化したのが1997年のこと。長年の活動を通じ、現在、同団は押しも押されもせぬ室内合奏団の一つに成長した。 さて、2月3日には本拠地(京都府長岡京記念文化会館)で結成20周年公演を終えた後、東京文化会館に登場。音楽監督・森のもと高木和弘ら弦5部、13名が密度の濃いアンサンブルを聴かせてくれる。弦楽四重奏よりは厚手だが、奏者が互いに呼吸をダイレクトに感じとりながら進めていける、絶妙の合奏規模だ。曲目は古典的な4楽章制で書かれたブリテン「シンプル・シンフォニー」で始まり、生き生きとした流れの中に一抹の哀愁を湛えたドヴォルザーク「弦楽セレナード」、そしてモーツァルト「ディヴェルティメント」からいわゆる“ザルツブルク・シンフォニー”と呼ばれる「K.136~138」までの3曲。いずれも過去に録音のある、自家薬籠中のレパートリーだ。近々リリースされる同団のCD第9弾は会場で先行発売される予定。

元のページ  ../index.html#71

このブックを見る