eぶらあぼ 2018.2月号
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66Photo:Koichi Miuraすみだ平和祈念コンサート2018 《すみだ×広島》 ジョセフ・リン(ヴァイオリン)J.S.バッハ:無伴奏ヴァイオリン・ソナタ & パルティータ全曲音楽と共に平和について考える文:オヤマダアツシ3/4(日) 第1回13:00 第2回16:30すみだトリフォニーホール問 トリフォニーホールチケットセンター03-5608-1212 http://www.triphony.com/ 1945年3月10日の東京大空襲で、多くの犠牲者を出した東京の墨田区。その魂を追悼するという思いで始まった「すみだ平和祈念コンサート」は、今年度が開館20周年シーズンとなるすみだトリフォニーホールにとって大きな意味をもつ。当初はヴェルディの「レクイエム」などが鎮魂の役目を担ったが、プログラムは徐々に拡大。2018年は戦争と関連性のある落語や映画上映なども加わり、多角的に戦争と平和について考える機会になることだろう。 その中で特に“音楽と共に考える時間”となるかもしれないのが、J.S.バッハの「無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ」(全6曲)を聴くコンサートかもしれない。3月4日(日曜日)の午後、2部にわたって全曲を演奏するのは、ソリストとしての活動と並行し、伝統あるジュリアード弦楽四重奏団のメンバーも務めているジョセフ・リン。クラシックのコンサートとしては彼の妙技による“演奏を聴く”ための時間なのだろうが、J.S.バッハの音楽を内面的な感情表現だと考え、その音に心を震わせながら静かに祈りを捧げるという時間にもなるはず。これはJ.S.バッハだからこそ可能なのかもしれない。 もちろんそうした思惑にとらわれず、ヨーヨー・マら多くの音楽家たちが絶賛する名手のJ.S.バッハを、大ホールという空間ならではの不思議な静寂を感じながら、じっくりと堪能できるコンサートでもあるのだ。明日を担う音楽家による特別演奏会海外で実力を磨いた未来のスター歌手たちが集結!文:岸 純信(オペラ研究家)2/6(火)19:00 東京オペラシティ コンサートホール問 チケットスペース03-3234-9999 http://www.ints.co.jp/ 新進オペラ歌手の全力投球ぶりを体感したければ、2月に開催の「明日を担う音楽家による特別演奏会」に足を運んでみてはいかがだろうか。筆者も毎回必ず鑑賞するコンサートであり、海外研修を終えたばかりの若手たちの、それはフレッシュな歌声にじっくり耳を傾けていると、“音楽浴”の効果で身体がほかほかしてくるのである。 この演奏会は、文化庁の新進芸術家海外研修制度の期間を終えた歌手たちの研修発表の場として設けられたもの。なにしろ、国費留学の成果が問われるだけに、彼らの緊張ぶりも半端ないが、その特別なテンションあってこそ、“歌声が放つ熱気”もより著しいものとなる。気鋭の新人勢にとっては、まさしく、“一生に一度”の晴れ舞台といっても過言でないだろう。出演は清野友香莉、今野沙知恵、種谷典子(以上、ソプラノ)、藤井麻美(メゾソプラノ)、伊藤達人、小堀勇介(以上、テノール)、原田勇雅(ゆうや)、門間信樹(以上、バリトン)の8名。バックは大勝秀也指揮の東京フィル。 今回のプログラムでまず目を引くのは選曲の多彩さである。何しろ、ロッシーニの《セビリアの理髪師》のようなベルカント・オペラから、ジョルダーノの《アンドレア・シェニエ》といった激情的なイタリア・オペラ、さらには《ラクメ》のような抒情的なフランス・オペラに加えて、この種の演奏会では珍しいワーグナーも歌われるほか、20世紀のプーランクの人気曲やストラヴィンスキーの英語のアリアまで聴けるというのだから期待大である。 オーケストラ伴奏のもと、こうした幅広い曲目で、若き歌手たちが美声と表現力を駆使する様はやはり見逃せないだろう。知っているメロディを楽しむ心と、新しい曲への好奇心も、共に満たされるに違いない。門間信樹藤井麻美清野友香莉今野沙知恵種谷典子原田勇雅 ©Flavio Gallozzi小堀勇介伊藤達人

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