eぶらあぼ 2018.1月号
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64神奈川芸術文化財団 芸術監督プロジェクト ミュージック・クロスロード3つの協奏曲とユニークな演出が生み出す独奏的空間文:伊藤制子1/20(土)14:00 神奈川県立音楽堂問 チケットかながわ0570-015-415 http://www.kanagawa-ongakudo.com/ 1月20日、神奈川県立音楽堂でジャンルを横断した斬新なコンサート「ミュージック・クロスロード」が開催される。神奈川芸術文化財団の芸術総監督である作曲家の一柳慧とKAAT神奈川芸術劇場芸術監督で演出家の白井晃が強力なタッグを組む。 一柳がプロデュースをする演奏会を白井によるユニークな空間演出を含めて体験しようという試みだ。曲目は三世代の現代日本の作曲家の協奏曲で、一柳が未来を見据えて選出した期待の若手二人の作品と一柳の作品が取り上げられる。演奏は、杉山洋一指揮の神奈川フィル。 もっとも若い20代の新鋭、森円花の「音のアトリウムⅢ~独奏チェロとオーケストラのための~」は空間表現に趣向を凝らしており、進境著しい俊英の上野通明がソリストをつとめる。そして一柳自身の作品はピアノ協奏曲第6番「禅―Zen」。このコンチェルトでソリストは、図形楽譜で記されたソロパートの演奏順を自由に決めることができ、内部奏法を駆使するなど、前衛的な技法を披露する。ピアニストとしてもすぐれた手腕をもつ作曲家自身のソロにも期待が高まる。そして40代の山本和智の「散乱系」は、3人の奏者が箏6面を弾くという破天荒な作品。うち3面の箏には、絃に使う絹糸を結びつけて舞台から客席後方まで張り巡らせるという前代未聞の仕掛けがあり、ホール全体が独創的な響きに満たされる。 白井による空間構成にはスマートフォンを活用する意外なアイディアを思案中という。詳細は当日のお楽しみだが、まさに刺激的なコンサートになるだろう。HAKUJU 東日本大震災 チャリティコンサート音楽のチカラで被災地への支援を続ける文:林 昌英3/11(日)15:00 Hakuju Hall問 Hakuju Hallチケットセンター03-5478-8700 http://www.hakujuhall.jp/*チケットの収益および当日の募金の全額が「学校法人みどり幼稚園」に寄付される。 この3月で、あの震災から7年を迎える。当時は多くの音楽家が「音楽をする意味」について自らに問いかけ、その後数々のチャリティコンサートが行われた時期にも、音楽家は様々な想いや現実的な課題と向き合い続けたという。そういった時期を乗り越え、現在でも継続しているチャリティ公演のひとつが、Hakuju Hallのコンサート。「東北復興支援プロジェクト・被災地支援チーム」を組織し、避難施設への健康機器の貸し出し等の支援を続けている、株式会社白寿生科学研究所が主催となり、福島県相馬市の「学校法人みどり幼稚園」を支援するチャリティ公演である。日頃からチャリティロビーコンサートをはじめとして、定期的かつ積極的に震災のチャリティ公演を続ける同ホールにおいて、3月11日のステージはより特別な意義を持つ*。 想いを同じくして集まる有志は、林美智子(メゾソプラノ)、三舩優子(ピアノ)、小林美恵(ヴァイオリン)、川本嘉子(ヴィオラ)、長谷川陽子(チェロ)、大萩康司(ギター)、平野公崇、田中拓也、西本淳、本堂誠(ブルーオーロラ サクソフォン・カルテット)。我が国を代表する名演奏家たちが、さまざまな組み合わせで次々に登場して、古典から現代、映画音楽までを披露する。それだけでも貴重な時間だが、それ以上に、一人ひとりが特別な想いを胸に奏でる楽曲はさらに違った表情を見せ、会場にいる人々の胸にも迫ることだろう。この親密な会場で、出演者たちとともに、想いを馳せる。その想いを形にもできる大切な機会となる。2017年3月公演の様子 森 円花 ©Shigeto Imura山本和智 白井 晃 ©二石友希一柳 慧 ©Koh Okabe
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