eぶらあぼ 2018.1月号
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58夜クラシック Vol.15仲道郁代(ピアノ) 成田達輝(ヴァイオリン) 上野通明(チェロ)楽しいトークと一級のアンサンブルで癒やしの時間を文:高坂はる香1/25(木)19:30 文京シビックホール問 シビックチケット03-5803-1111 http://bunkyocivichall.jp/ 文京シビックホールの「夜クラシック」。19時半という遅めの開演時間やトーク付きの親しみやすさに加え、ときには初顔合わせのアンサンブルが登場することもあって、幅広い音楽ファンから人気を集めるシリーズだ。 来る1月の公演では、ピアニストの仲道郁代が、初共演となるヴァイオリンの成田達輝、チェロの上野通明とステージに立つ。いずれも実力派として注目を集める気鋭の若手。仲道は、「成田さんには貴公子の魅力、上野さんにはナチュラルな魅力があり、ぜひご一緒してみたいと思った」という。面識はほとんどないけれどお互い名前はよく知る間柄ということで、一緒に音を出す瞬間が楽しみだと3人は口をそろえる。 テーマ曲のドビュッシー「月の光」に始まる前半は、弦の2人がそれぞれバッハの無伴奏作品を演奏するほか、ドヴォルザークの小品で仲道と共演。仲道はソロでシューマンの「ロマンス」を披露する。 後半は、ブラームスのピアノ三重奏曲第1番。仲道は「作曲家の若さ、のちに改訂した際に加わった練れた書法という両方の魅力を味わえる大曲。聴き終わってホールを出たとき、今日も充実した! と感じてもらえる演奏を目指したい」と話す。ちなみにチェロの上野は、若き日の初稿が書かれた場所の一つであるデュッセルドルフで名手ピーター・ウィスペルウェイのもと学んでいるので、最年少ながら2人をインスパイアする場面が出てくるかも。 どんな共演となるのか、演奏者たち自身にも予想がつかないとにかく新鮮な公演。当日を楽しみに待ちたい。成田達輝 ©Hiroki Sugiura東京シティ・バレエ団創立50周年記念公演『白鳥の湖』~大いなる愛の讃歌~いまよみがえる藤田嗣治の幻の『白鳥の湖』文:渡辺真弓3/3(土)~3/6(火)東京文化会館問 東京シティ・バレエ団03-5638-2720 http://www.tokyocityballet.org/ 来年3月、都民芸術フェスティバル参加公演として上演される東京シティ・バレエ団『白鳥の湖』が大反響を呼んでいる。まず注目は、エコール・ド・パリを代表する藤田嗣治(レオナール・フジタ)がデザインした幻の舞台美術が70年ぶりに蘇ること。折しも、2018年は同バレエ団創立50周年とフジタ没後50年の節目の年となる。 日本で初めてチャイコフスキーの『白鳥の湖』全幕が上演されたのは、終戦直後の1946(昭和21)年8月の帝国劇場。振付は小牧正英、出演は東京バレエ團(現在のチャイコフスキー記念東京バレエ団とは別の団体)。公演は空前の成功を収め、22回のロングランを達成。この時、舞台美術を手がけたのが藤田で、西欧的な洗練されたデザインが評判を呼んだ。しかし当時は物資が乏しく草案通りではなかった。今回は草案に基づいて復元されるのが画期的。 演奏は、我が国が世界に誇る大野和士が都響を率いてピットに入る。大野は同バレエ団芸術監督の安達悦子と小学校の同級生という縁でこれまでにも同バレエ団と共演してきたが、今回全幕バレエを指揮、スケールの大きな演奏が期待される。主役のオデット/オディールと王子も豪華。ベルリン国立バレエ団プリンシパルのヤーナ・サレンコとディヌ・タマズラカル(3/3,3/6)を客演に迎え、中森理恵とキム・セジョン(3/4)との2組の共演となる。演出・振付はバレエ団創立メンバーの石田種生で、特に第4幕の美しさは絶品。総合芸術としてのバレエに新たな光を当てることだろう。左より:大野和士 ©Rikimaru Hotta/ヤーナ・サレンコ ©Enrico Nawrath/ディヌ・タマズラカル ©Josef Fischnaller/中森理恵/キム・セジョン上野通明 ©g_jagoutz仲道郁代 ©Kiyotaka Saito
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