eぶらあぼ 2018.1月号
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48アンナ・ヴィニツカヤ(ピアノ)リスナーを虜にする抒情性と超絶技巧文:長井進之介2/2(金)19:00 サントリーホール問 コンサートイマジン03-3235-3777 http://www.concert.co.jp/ ロシア生まれのアンナ・ヴィニツカヤは、2007年に圧倒的な評価を得てエリーザベト王妃国際音楽コンクールで優勝し、翌年にはクラシック音楽界で目覚ましい活躍をした若手音楽家に贈られる「レナード・バーンスタイン賞」を受賞したピアニストである。ドイツを拠点に世界的な演奏活動を展開しており、来日も多く、多彩なレパートリーを自在に弾きこなす技巧、スケールの大きい音楽性によって多くの人々を魅了してきた。 現在ハンブルク音楽演劇大学で教授として後進の指導にもあたるなど一層活動の幅を広げている彼女は、世界的奏者が出演しているベルリン・フィルハーモニーのカンマームジークザールにおいて、17年10月にリサイタルを開催し、「度肝を抜かれた」という評を得るほどの存在感を示した。 そんな彼女が2月にサントリーホールでリサイタルを開催する。しかもプログラムは大好評を得たベルリン・フィルハーモニーでの公演と同じもので、プロコフィエフ「ピアノ・ソナタ第4番」、ドビュッシー「前奏曲集」からの抜粋に「喜びの島」、さらにショパン「24の前奏曲」となっている。 どの曲も高度な技巧が凝らされた難曲であり、特にショパンは次々とあらゆる心情や情景を描き分ける描写力も求められる。ヴィニツカヤの圧倒的なピアニズムを余すことなく堪能できる公演になることであろう。吉野直子の室内楽 ~ハープで織り成す近現代フランス音楽の世界~名手たちが集って醸すフランス音楽の華やぎ文:林 昌英3/9(金)19:00 ヤマハホール問 ヤマハ銀座ビルインフォメーション03-3572-3171 http://www.yamahaginza.com/hall/ 名実ともに日本のハープ界を牽引してきた第一人者であり、世界的な名手や巨匠たちと共演を重ね続けている吉野直子。長きにわたり最前線で活躍し続けるハーピストが、気心の知れた日本の仲間たちとの共演で、ハープにまつわるフランスの室内楽作品を集めて贈る舞台が、3月に銀座のヤマハホールで実現する。 吉野を中心として集うのは、成田達輝、小川響子(以上ヴァイオリン)、川本嘉子(ヴィオラ)、伊東裕(チェロ)、佐久間由美子(フルート)、吉田誠(クラリネット)。ベテランと若手の代表的な名手たちがバランスよくそろった、まさに壮観な顔ぶれ。フランスに縁の深いメンバーも多く、高水準のアンサンブルで同国の薫りを楽しませてくれるに違いない。 作品も多彩で、ドビュッシーとラヴェルの名品を大枠として、その間にフォーレ、ダンディ、メサジェ、フランセ、ロパルツ、ピエルネという、近現代フランスの作曲家たちによる洒落た逸品がずらりと並ぶ。曲ごとに変わる多様な楽器の組み合わせの妙を味わいながら、最後はラヴェルの傑作「序奏とアレグロ」で全員が登場して華やかな終幕を迎える流れも楽しい。 ハープの響きを柱としながらこれだけの演目が並ぶことは珍しいうえ、吉野を軸に名演奏家たちの共演で一度に堪能できるとあれば見逃せない。しかも会場は、木材を多用した内装で響きの美しさに定評あるヤマハホール。わずか333席の贅沢な環境で過ごす、エスプリと愉悦に満ちたひとときとなる。左より:吉野直子 ©Akira Muto/成田達輝 ©Hiroki Sugiura/小川響子/川本嘉子/伊東 裕/佐久間由美子/吉田 誠 ©RamAir.LLC
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