eぶらあぼ 2018.1月号
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45上岡敏之(指揮) 新日本フィルハーモニー交響楽団新年の幕開けはワルツ尽くし!文:飯尾洋一 新日本フィルの1月の「トパーズ」では、音楽監督上岡敏之による一味違ったニューイヤー・プログラムが用意される。シュトラウス・ファミリーのウィンナ・ワルツやポルカを、ラヴェルの2曲のワルツ「高雅で感傷的なワルツ」と「ラ・ヴァルス」で挟んだという選曲の妙が魅力だ。 ラヴェルが「高雅で感傷的なワルツ」を着想したのは、ウィンナ・ワルツというよりはさらに遡ってシューベルトの音楽からだったというが、ここにウィーンへの追憶のニュアンスを聴きとることは可能だろう。一方、「ラ・ヴァルス」は直接的にシュトラウスのウィンナ・ワルツと結びつく作品だ。巨大なダンスホールでワルツを優雅に踊る人々を幻想的に描写しながらも、不穏な気配を漂わせ、最後は一大カタストロフが訪れるという、ウィンナ・ワルツへのオマージュあるいはパロディのような機知に富んだ傑作である。あでやかなオーケストレーションも聴きどころ。 本家シュトラウス・ファミリーからはポルカ・シュネル「狩り」、《騎士パズマン》からのチャルダッシュ、ワルツ「加速度」、新ピッツィカート・ポルカ、ワルツ「北海の絵」他が演奏される。さて、上岡節のウィンナ・ワルツとは。興味津々。第582回 定期演奏会 トパーズ〈トリフォニー・シリーズ〉1/12(金)19:00、1/13(土)14:00 すみだトリフォニーホール問 新日本フィル・チケットボックス03-5610-3815 http://www.njp.or.jp/上岡敏之 ©大窪道治紀尾井ホール室内管弦楽団によるアンサンブルコンサート②知られざるモーツァルト「教会ソナタ」の楽しみレアで上質のバースデー・ギフト文:柴田克彦1/27(土)15:00 紀尾井ホール問 紀尾井ホールチケットセンター03-3237-0061 http://www.kioi-hall.or.jp/ 1月27日はモーツァルトの誕生日。2018年のこの日、「教会ソナタ」を軸とした興味深いコンサートが、紀尾井ホールで行われる。1772年に着任したザルツブルク大司教コロレードは、大掛かりになり過ぎたミサの音楽の簡略化を図った。それに即して書かれたのが各曲3~5分の教会ソナタ。今回はモーツァルトが残した17曲のうち、オルガン&弦楽器のための14曲が全て披露される。これらはミサ用といえども、優美で軽快な耳馴染みのよい音楽ばかり。しかも「K.67」から「K.336」まで広い時期の作品が、曲想を考慮して入れ替えた形で演奏されるので、多彩かつ気軽なエッセイ感覚で愉しむことができる。 さらに今回は、珍しい「バッハの平均律クラヴィーア曲集から5つのフーガ K.405」も要注目だ。モーツァルトは1782年ウィーンで、ヴァン・スヴィーテン男爵を通してバッハやヘンデルの作品を知り、フーガの試作や編曲を集中して行った。同曲はその1つで、第2巻からのフーガの弦楽四重奏版。いわば“バッハとモーツァルトの夢のコラボ”でもある。加えて、自動オルガンのための「アンダンテ K.616」、弦楽のための「アダージョとフーガ K.546」も披露され、前者では最晩年の清澄なトーン、後者ではハ短調のシリアスな迫力を味わえる。 演奏は、著名楽団の首席奏者や敏腕奏者で構成された紀尾井ホール室内管のメンバーたち(ヴァイオリン:野口千代光、森岡聡、ヴィオラ:小峰航一、チェロ:菊地知也、コントラバス:吉田秀)。これに古楽の鍵盤楽器で活躍する大塚直哉のオルガンが加わる。定期やアンサンブル公演で継続してモーツァルトに取り組んできた室内管の実績からも期待は大。ここはぜひ皆集って、貴重な体験を満喫したい。大塚直哉 ©E.Shinohara吉田 秀菊地知也 小峰航一 森岡 聡野口千代光

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